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刃物専門編集者の憂鬱 その11「え、オレが選ぶんすか!? 2023 - 3(JKGナイフショー)」
こんにちは。「編集者&ライターときどき作家」の服部夏生と申します。
肩書きそのままに、いろいろな仕事をさせていただいているのですが、ちょっと珍しい「刃物専門編集者」としての日々を、あれこれ書いていこうと思います。
■表彰式、見てきたよ。
式に参加する方も多くて、とても和やかで、いい雰囲気だった。
終わった後に、受賞した主な皆さんからコメントを頂いたので、ご紹介したい。
なお、ナイフの写真はJKGの「特設サイト」からお借りした。
受賞作をはじめ、応募作品についての詳細も紹介されているので、ご興味のある方はチェックすることをお勧めする。
改めて書かせていただくと、受賞作のみならず、2023年の応募作は、どれも素晴らしい作品ばかりだった。
だから、審査会も、マジで、ものすごく盛り上がっていた。
受賞した皆さん、本当におめでとうございました。
■JKG大賞
CRYSTAL PALACE EXHIBITION KNIFE レプリカ
伊藤飛翔
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大賞をいただいて最初に思ったことは「ああ、これで倉本俊文さんに恩返しが少しでもできたかな」ということでした。フォールダーを作り出してしばらくして、大渕 勲さんや松﨑 猛さんといった、九州の方々がお声がけくださったんです。やりとりさせていただいているうちに、倉本さんともお話しすることになって(編注:ここで名前の出た御三方は、倉本さんを筆頭に英シェフィールドスタイルのマルチブレードで世界的に高い評価を受けている作家。いずれも九州在住)。
倉本さんがすごい実績を持っている方ってことは知っていたので、失礼があっちゃいけないと必死に資料を揃えて、お電話したんです。恐る恐る(笑)。そうしたら、作りかけていたクリスタルパレスのパーツがあるから、それを君に託すよって図面と一緒に送ってきてくださったんです。そのパーツと図面をもとに、海外の書籍や他の方々からのアドバイスも踏まえながら制作したのが、今回の作品です。想像よりもずっと手間がかかって、時間もかかってしまいましたが、どうにか完成して、しかもこのような結果になって、嬉しい限りです。今度は、これを倉本さんにお見せしたいなと思っています。たぶん、その時が、僕にとって本当にこの作品が「完成」する瞬間なんだと考えています。
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松﨑 猛さんもいたのですが、お声がけする前に遠慮されてフレームアウト。背後にはベストフォールダーの南さんもいますね。皆から声をかけられている姿に、注目度の高さと、そのお人柄を感じさせられました。
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刃物専門編集者から(こっそり)ひとこと
これはもう、大賞しかないだろう、と見た瞬間に感じました。僕の数少ない人生の自慢として本物のクリスタルパレスを岡安一男さんのご好意で拝見したというものがありますが、ディテールは置いといて、まとう空気はモノホンと比べても遜色ないっす。
■優秀シースナイフ賞
ストレートハンター
大城将宏
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コンテストには10回連続で応募してきました。その記念の意味もこめて、出品させていただきました。あと、コンテストは「お祭り」の側面もあると思います。私自身が魅力を感じてのめり込んでいる「カスタムナイフ」の世界を少しでも盛り上げられるんだったら、という思いもあります。まあ、ただのお祭り好きなんですけれどね。正直にいうと「今年も参加するぞ!」と決めたのが遅かったこともあって、今回の応募作はコンテスト用に制作したものではないんです(笑)。もちろん力を込めて作ったものなので、受賞は嬉しかったです。
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刃物専門編集者から(こっそり)ひとこと
昨年も鈴木眞メモリアルを受賞するなど、そのクオリティの高さは概知の大城さんの作品。今回は、装飾もシンプルなラブレススタイルのシースナイフにもかかわらず、遠くから見ても大城さんの作品だとわかる「個性」にやられました。すげー粋で格好いい。
■優秀フォールディングナイフ賞
八枚切(やまいぎり)
南陽介
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とても嬉しいです。少しは自信を持っていいのかな、と。ナイフ作りには前から興味があったのですが、制作歴は浅いんです。7年ほど前にガンになった時に「人間いつ死ぬかわからない。やりたいことをやろう」と決心して始めました。今回の作品は「これでいいのか」と悩みながら作り進めていた時に、根本朋之さんはじめ多くの方々に後押ししていただいたおかげで完成しました。7年前に始めたものの中には『ディアゴスティーニ』もあるんですが、こちらは一つも完成に至っていない(笑)。でも、ナイフ作りは、これからも続けていきます!
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刃物専門編集者から(こっそり)ひとこと
丹後雄一郎さんと市川志郎さんの作品をはじめフォールダーは良作が多くて悩みました。この作品は、刃物以外の領域から来たことを感じさせ、しかもやりたいことと技術が高いレベルで融合している。ナイフそのものの「可能性」を切り拓いたと思いました。
■鈴木眞メモリアル賞
Milky way
毛利沙羅
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ナイフを作り始めて、6~7年、鍛造を始めて3年ほどです。まだ経験も浅い中で、このような賞をいただけてありがたい限りです。特定の師はいません。友人にナイフ制作の基礎を教えてもらったり、ダマスカス(今回の作品は、炭素鋼と15n20の積層ダマスカス)に関しては、海外の鍛造ナイフ作家の動画を見たりして、身につけていきました。目指しているのはアートと実用が融合したものづくり。実用の道具という基本を外すことなく鑑賞も楽しんでもらえるようなナイフをつくり出せるよう、これからも制作を続けていきます。コンテストも挑戦していこうと思っています。
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刃物専門編集者から(こっそり)ひとこと
僕はこの賞の選考には関わっていませんが、実は圷正史さんと一緒に設けている「レポーター&エディター賞」の候補でもあったんです(笑)。自作のダマスカスも素晴らしいのですが、破綻なく理にかなったシルエットに和洋や新旧の「融合」を感じました。
■藤本保広メモリアル賞
Navaja(ナバハ)
伊藤 亮
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スペインの伝統的なフォールダーをモチーフにした作品です。動画で当地の作り手の制作方法を見ながら、伝統的な製法を踏まえつつ、自分流にアレンジを加えて完成させました。(昨年ベストフォールダーを受賞した)スティレットもそうなのですが、自分がつくりたいと思うかどうかが制作の大きなモチベーションです。ナイフの魅力は「格好よさ」にあると思うんです。ちょっと怖くもあるような(笑)。そんな僕自身が感じている良さを追求したナイフをこれからもつくり続けていきたいと思っています。受賞、嬉しいです!!
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刃物専門編集者から(こっそり)ひとこと
この賞も僕は選考に関わっていませんが、何らかの賞を受賞する作品だったのは間違いないです。伝統を踏襲しているけど、幅広でありながらシャープなラインで構成されたブレードをはじめ作り手の「美意識」がしっかり反映されている。見事だと思いました。
■『ナイフカタログ』ってイカした本があるらしいよ。
ちなみに僕はホビージャパンという出版社から出ている、刃物に関する本の編集などを担当させていただいている。
今回のコンテストの受賞作の一部は、2023年11月15日発売予定の『ナイフカタログ』で紹介させていただく予定だ(リンク先は昨年の『ナイフカタログ』です)
そして、さらに詳しい内容は、来春発売予定の『日本のカスタムナイフ2024(仮題)』で紹介させていただきたいな、と考えている。
(リンク先は昨年の『日本のカスタムナイフ』です)
ぜひ、お手に取って読んでいただきたい。本の詳細は改めてご紹介していければと思う。
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![hattori, natsuo](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/94183024/profile_4eb15e3a068237f4ffa8ae960405c46d.png?width=600&crop=1:1,smart)