コンとローラ(コン編:第4回(全4回)闇騎士との戦い)
都市にて
俺
「ひどいな・・・」
到着した都市はかなり破壊されていた。
あちらこちらに
まだ煙が上がっている。
俺「おい!なんで昨日のうちにここに来なかった!?」
ダンディー
「それはコン、キミが大切な希望だからだ。
キミを失う訳にはいかない」
俺
「何を言ってるんだ!?
もっと早く来ていれば!!」
ダンディー
「ワタシは昨日キミが回収してくれた
ポンティアムCPUの力で
この都市を全てスキャンした」
俺
「なんだって・・・?」
ダンディー
「人類の反応はなかった。
未確認を含む
アンドロイドの反応しかなかった」
俺
「無人の都市ってことか・・・」
?
:そのとおりだ:
突然謎の声が空間に響いた。
周囲に紫のオーラが漂った。
俺
「誰だ?!」
?
:よく来た人類の戦士よ:
俺
「誰だっつってんだろ?!」
俺は少しキレ気味に叫んだ。
?
:わが名は闇騎士。
戦士よ、
来るが良い
わが元へ:
そう言い終わると
足元に黄色く光る矢印が現れた。
俺
「は!イベントってか!
いこうぜ!」
コン
「待て!コン!
罠の可能性もある!
ここは冷静になれ!」
俺
「お断りだね!
闇騎士かなんか知らないけど
コイツでぶっ飛ばしてやる!」
俺は指でひょいとダンディーをつまむと
矢印の誘導に従って歩きだした。
都市の中央にある
一番高さのある建物の前に来た。
エントランスの天井も高い。
このまま入れそうだ。
ダンディー
「待て!コン!
嫌な予感がする!」
コン
「ゲームが俺に指図をするな!」
俺は建物に入った、
と、思った。
そこは円形の石造りの闘技場ような場所だった。
俺はつまんでいたダンディーを離した。
眼前には2メートルくらいの
黒い鎧騎士が赤いマントをはおって立っていた。
俺は構えた。
最後のステージだろ?
暴れさせてもらうぜ!
闇騎士
「よく来た人類の戦士よ」
俺
「お前が
このゲームのボスってことでいいんだよな?」
闇騎士
「ボス?ふふ・・・」
俺
「ああ、アンドロイドだったな!
人間ぶりやがって!」
闇騎士
「倒せるかな?
キミに、この私を?」
俺
「あったりまえさ!!」
俺はロボでありとあらゆる攻撃を闇騎士にくりだした。
しかし、闇騎士は攻撃が当たる瞬間消えるように瞬間移動をし、
すべての攻撃を避けられてしまっていた。
俺
「くそっ!
埒が明かないな・・・」
俺はロボットを降りた。
緊急時の
融合の解除方法を
ダンディーに事前に教えてもらっていた。
俺
「やっぱりゲームとはいえ、
直接ブン殴らないと気が済まないや!」
ダンディー
「ま!待つんだ!コン!
すぐにロボットに入れ!」
俺
「え?」
闇騎士
「感謝するよ
愚かな戦士よ!」
闇騎士が手を広げ
前方に突き出した瞬間!
緑のオーラが発生した!
突風が吹き荒れた!
俺は腕で顔を覆い耐えた。
俺
「こ!これは?」
闇騎士
「これでキミを倒すことができる」
背後のロボットが
ひざまつくようなポーズで地面に沈んだ
と思ったら光を放ち爆散するように消失した!![
俺
「な!?
ダ!ダンディー!?」
ダンディーの姿はなかった。
闇騎士
「彼ならここだよ」
俺は再び闇騎士を見た。
ヤツの胸の鎧に
ダンディーが小さな姿で張り付いていた!
俺
「なにをしやがった?」
闇騎士
「支配させてもらったのだ。
キミ以外を。」
俺
「なんだと!?」
闇騎士
「私が皇帝より
授かったこの力は
AIを含む機械をすべて支配できるのだ」
俺
「くぅ!・・・」
小さい嵐は激しく
俺は身動きが取れなかった。
闇騎士
「キミを始末するのには
ロボットが邪魔だったのだ。
血の気が多くて手間が省けたよ」
俺
「てめえ・・・
ダンディーをどうするつもりだ?」
闇騎士
「ああ、彼か?
今はここにあるが」
ヤツが左胸に手を当てて少し押し込んだ。
俺
「な!?」
闇騎士
「邪魔なAIは融合する。
もちろん支配するのは私だ。」
嵐が止んだ。
俺は本能的に構えた。
もちろん丸腰だ。
生身の格闘でなんとかするしかない。
闇騎士は光る剣を手に
少し近づいてきた。
闇騎士
「さあ終わりにしようか。
キミが消えれば
帝国の勝利もさらに近づくというものだ」
黒騎士が剣をさっとふるうと
光の波が剣身から発生し
真っ直ぐ俺に発射された。
俺はとっさに避けた!
が!
鈍い感電に似た痛覚とともに
右手が切られた!
俺
「ぐっ!!
・・・・え?」
程なく無くなった腕部に光が発生し
俺の右手は復元した。
闇騎士
「ふふ。
どこまで持つかな?」
反撃!
それから俺は
とにかく闇騎士からの遠距離斬撃を
かわす一方だった。
何度か攻撃をくらい
手足が切られたが、
その度復元しなんとか動いていた。
ショックを受けて
血の気が引いて焦ったが、
予想以上に黒騎士の攻撃が
単調なことに気づき
冷静さを取り戻しつつあった。
俺
(おかしい・・・
ヤツは何故
直接剣で切ろうとしてこない?
まさか近接攻撃ができないのか?)
闇騎士は叫んだ。
「オマエも
今までの戦士たちのように
恐怖で支配されるがよい!」
(恐怖で支配?)
俺は動きを止めた。
闇騎士
「終わりだ!!」
斬撃が飛んでくる。
俺は最小限の動きでそれを避けた。
闇騎士
「なんだと?!」
俺
「そうか!
そういうゲームか!」
闇騎士が剣を振り上げ突進してきた!
俺
「なんだ!
あるじゃん近接!」
闇騎士が大きく剣を振りきった。
俺は黒騎士の側面に回り込むと同時に
ヤツの身体にキックを叩き込んだ!
闇騎士は
想像より大きく吹っ飛んだ。
俺
「クザに比べりゃ
モーションがでかいなオマエ」
それから俺は
思い切った戦法をとった。
左腕でヤツの剣を受けると
左腕とヤツの光の剣が消えた。
痛みをこらえ、
その隙に右腕でヤツにパンチを食らわせた。
そんなダメージありきの戦法は功を奏したみたいで
ヤツはどんどん動作が遅くなり、
ついに
こちらは回避だけで攻撃が通るようになった。
闇騎士
「ヒイイイイ!
何故だ!ナゼ支配サレナイ?
ナゼダ!」
闇騎士の光の剣は二刀流になっていた。
しかしその攻撃を
俺はもう難なく完全に避けていた。
俺
「アスレチックの動くキューブの方が速かったぜ!
騎士さんよ!」
脇腹にキックを叩き込み
闇騎士がまた派手に吹っ飛ぶ。
闇騎士
「ワタシハ
カンゼンナルソンザイ!
オマエヲ!
オマエヲ!
タオス!」
闇騎士は大きく両手を広げ、
背面にも頭にも無数の光の剣が発生した。
そのポーズがえらく大げさに
俺には見えた。
俺はそのポーズ中に接近し、
闇騎士にハートブレイクパンチ(心臓打ち)を見舞った。
まぁ
心臓なんてないとは思ったけど。
俺
「おい、クソAI!
寝てんじゃねーぞ!!」
その攻撃は闇騎士の鎧を砕き
なんと拳が体の中に入ってしまった!
俺は慌てて拳を引き抜き、
ヤツとの間合いを取った。
右の拳が熱い・・・
いや、なんか握っている。
コン・・・コン・・・
俺
「まさか・・・」
俺は手を開いた。
そこにはサイコロくらいの
大きさのダンディーがいた。
俺
「ダンディー!」
闇騎士
「グググ・・・!」
闇騎士が分解するように崩れていく。
その中身がえらく不格好な巨体に
沢山の機械パーツが張り付いていた。
俺
「大丈夫か?」
ダンディー
「ワタシを
強く握ってくれ!」
俺
「あ?!ああ!」
俺は拳を握った。
小さいダンディーから
身体に暖かさが注ぎ込まれる。
ダンディー
「黒騎士の真の正体があれだ。
姿を変え人間を挑発し
機械と離して
恐怖を与え始末してきたんだ。
ワタシはまだヤツに
支配される前だったので
助かったんだ」
俺
「どうすればいい?」
ダンディー
「やつはキミと機械が一緒にいると
キミを倒せない」
俺
「そうみたいだな」
ダンディー
「ワタシはキミと融合する」
俺
「はっ!
そういうのはもっと早くしてくれよ!
AIさん!」
ダンディー
「前に言っただろう!
ワタシとキミとの勇気が
最強の武器だと!」
俺
「そうだったな!」
俺の身体がロボットと融合するように変化していく。
さっきまで搭乗していたロボットと違うのは
等身がほぼそのままだった。
力がみなぎる。
側にダンディーが居てくれる、
不思議な感覚。
闇騎士だったものは醜い巨体を起こした。
闇騎士
「オノレ・・・オノレ・・・」
俺は静かに身構えた。
闇騎士
「ワタシハ!
テイコク!
サイキョウノぉー!!」
ヤツは背面にあった無数の光の剣を
こちらに飛ばしてきた。
俺は拳を硬め、
構わず突進した。
俺
「うおおぉぉぉぉぉぉ!!」
俺の、
俺たちの拳が
ヤツの身体を突き抜けた。
俺達の身体は
ヤツの巨体を真っ直ぐ
貫きさった。
程なくヤツは光に包まれ
爆散し消失した。
気づくと
俺は元の姿、
コンに戻っていた。
隣にはもちろんダンディーが浮いている。
俺はその場にへたり込んだ。
闘技場は立体映像だった。
今は天井の高いホールで
少し先にエレベーターがある。
ダンディー
「コン!
見事だったと言いたいところだが、
あと一回攻撃をくらっていたら、ダメだったぞ!
判定はCだ!」
俺
「うっせえ!クソAI!」
そう言ったあと
俺はバカみたいに、
大きな声で笑った。
タワー上層階へ
笑った後
しばらくダンディーのありがたい話を聞いた。
闇騎士に取り込まれ融合される前に
ダンディーは
ヤツの身体から情報を収集していた。
この都市には7体の施設管理アンドロイドと
多くの作業用アンドロイドと
数名の人類がいたが、
ヤツの手によって
機械は破壊されAIを吸収され
人類は消されていた。
施設管理アンドロイドも
6体が破壊され、
このエレベーターの最上階にある
コントロールルームに
最後の一体がいるとのことだった。
ヤツは俺たちを始末した後
そのアンドロイドを破壊し
この都市を完全に征服するつもりだったらしい。
俺
「しかし、
まあなんとかなったけど、
ふー
今回は流石に焦ったよ」
ダンディー
「いや仕方のないことだった。
あの紫のオーラには人類に対して
興奮作用を起こす効果もあったようだ」
俺
「なら仕方ないな?」
ダンディー
「いや、キミが軽率だったことには
間違いはない」
俺
「んだと?!」
しばらくして
俺たちはエレベーターに乗った。
ゴウン
ゴウン
サー
と高速運転になり
エレベーターは上昇していった。
最上階に着いた。
コントロールルームに
女性型のアンドロイドがいた。
アンドロイド
「ハジメマシテ、
アタラシイマスター。
ワタシハ
クミ
トモウシマス」
俺はクミに近づいた。
俺
「ええと…
クミさん。
Xメモリを渡してくれないか?」
クミ
「カシコマリマシタ、
マスター」
クミはそう言うと
髪をかき上げ
額からクリアな小さい板を取り出し
俺に差し出した。」
俺は驚いた。
俺
「え!?クミさん、
それで
キミは大丈夫なの?」
クミ
「ハイ。
モンダイアリマセン、
マスター
ドウゾ」
俺はそのメモリを受け取った。
俺
「おい!ダンディーI!
この子、
本当にこれ抜いて大丈夫なんだろうな?」
ダンディー
「大丈夫な訳があるものか、
しばらくすれば
彼女のAIは初期化される。」
俺
「なんだって!?
本当に、
本当にこれが必要なのか?」
ダンディー
「もちろんだ。
さあ渡したまえ」
俺
「ちょっと待てよ!!」
クミが不思議そうな表情で
俺の顔を覗き込む。
クミ
「ドウサレタノデスカ、
マスター?」
俺
「本当に!
本当にこれしか手がないのか!?」
ダンディー
「そうだ。
それがあれば
私はまた戦える」
俺
「すぐにデータをダンカムに移して
彼女にセットすれば大丈夫じゃないのか?」
ダンディー
「そうだ」
俺はしばらく目を閉じ
唇を噛み締め黙った。
そして目を開け、
受け取ったメモリをダンディーに渡した。
ダンディーはメモリを宙に浮かせたまま
光を当て始めた。
俺はクミの肩をぐっと掴んだ。
クミ
「マスター・・・?」
俺
「早く!
なるべく早く戻ってくる!
だから!きみも!」
ダンディー
「コン、終わったぞ」
俺
「そうか・・・・って
え!?」
ダンディーから呆気なくXメモリが返却された。
俺
「え?・・・
え?・・・」
俺は困惑した表情で
ダンディーを見つめた。
ダンディー
「なんだコン?
恥ずかしくなってきたぞ」
俺
「そうじゃなくて!
メモリは?!
必要なパーツなんだろ?」
ダンディー
「確かに。
だが、今回必要なのはデータだけだ
コピーしたのでもう返してよいよ」
俺
「はーーー!
もう!」
俺はクミの方を向き
Xメモリを差し出した。
クミはきょとんとしている。
俺
「だってよクミ!
これは返すよ!」
クミ
「マスター・・・?」
クミはそれを受け取り、
再び額に挿入した。
少しの間の後、
クミは口を開いた。
クミ
「マスター。
コレカラワタシハ
ナニヲスレバ
ヨイノデショウカ?」
俺
「そうだな・・・」
俺は窓から外ををざっと見渡した。
俺
「この都市を、
復興するってのは、どうかな?」
クミ
「フッコウ、
スル?」
俺
「ああ。
きみの仲間達を、
もう壊されたくはないだろ?」
クミ
「ハイ・・・
ナカマガ
コワサレルノハ
トテモ
カナシイデス・・・。」
俺
「なら、決まりだな!
おいダンディー!」
ダンディー
「ああ、
先程、
ちょうど君が闇騎士を倒した後、
軍本部に通信した。
支配権を獲得したので
こちらにも支援部隊が派遣されるだろう」
俺
「オマエは本当に使えるのかなんなのか・・・
まあ、いっか」
俺はクミに向き合った。
俺
「いいかいクミ?
ここを守ってくれ。
いつかまた人と機械が助け合える、
そんな場所にしてくれ。
帝国軍は
俺たちがやっつけてやるから!」
クミ
「マスター・・・
ショウチシマシタ!
ワタシハ
コノバショヲ
マモリマス!」
気の所為か
クミの表情が少し明るくなった気がした。
別れ
俺たちはダンカムのある空間に戻った。
ダンディーは
ダンカムの身体の中央部まで
浮かび上がると
内部に入った。
腹部のハッチが閉じると
ダンカムが目を光らせ
ゆっくりと立ち上がった。
周囲は白い光に包まれた空間になっていた。
ダンディー
「ありがとうコン!
これで帝国軍中枢に向かえる!」
俺
「ホントに俺がいなくて大丈夫なのかよ?」
ダンディー
「ああ!
問題ない!
パワーアップも十分だ!」
俺
「今度は撃墜されんなよ、
優秀なAIさんよ!」
ダンディー
「ありがとう!
さらばですコン!
キミが来てくれて本当に良かった!」
俺
「楽しかったぜ!
またな!
ダンディー!」
ダンディー
「了解です!
またです!」
エピローグ
日曜の昼。
俺は再び秋葉原にいた。
両手に大きな丈夫な紙袋を下げて。
ラジオデパートに入った。
ハラダさんがいた。
ハラダさんは俺に気づくと
作業を止め通路に出てきた。
ハラダ
「やあ、キミか」
ハラダさんに紙袋を渡し礼を伝えた。
ハラダ
「で、どうだった?
楽しめたかい?」
俺
「神ゲーでしたよ」
俺は素直に笑ってそう言った。
ハラダ
「な、良作だったろヽ(´ー`)ノ」
(そうなのか、
仲間内で評判良かったんで
もらったんだけど遊んでなかったんですわな、
今度やってみるかな・・・)
俺
「また来ても良いですか?」
ハラダ
「もちろん!
通販もやってるよ!」
俺は建物を出て電車に乗り
自宅に帰った。
またゲームが遊びたくなった
ベッドにもたれて、
スマホを手に取った。
長く連絡してない友人に通話をした。
俺
「おお!久しぶり!
悪い悪い!急にさー」
俺は
昨日より
すっかり顔が柔らかくなっていた。
俺
「来週さ、
久しぶりにゲームやろうぜ、
ゲーム!」
コン編おわり