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コンとローラ(ローラ編第1回(全4回)プロローグ

プロローグ

アタシはドアを開けて部屋に入った。

玄関にはダンボール箱がある。
ああ、確か先週田舎から届いたんだっけなー。
アタシは仕事でクタクタの服を洗濯機に投げ込みお風呂した。
コンビニで買ったものをテーブルに置く。
野菜ジュース、弁当、スナック菓子。
スマホをいじりながらそれらを口に運んでいく。

さて、荷物開けなきゃ。
母さんから電話で催促されてたんだ。
早く開けろって。

アタシは母の雑な梱包の荷を開けた。
中にはいつもの野菜果物米、いつもの手紙。

・・・ん?なんだろ?
この袋は?
開けてみる。
CDよね?これ?

母からの手紙によると
田舎のアタシの机の上にあったから
ついでに入れといたとのことだった。
ムサシ兄ちゃん(親戚)と
よくゲームしてたじゃない?
とか余計な記憶をつついてくる

え?
じゃあこれってゲームソフトのCDなの?
会社で最近はあまり見なくなったけどCDRよね?これ。

表面には「MOIプレゼン用」とあった。
ガセドンは知っている。
今もあるゲームメーカーよね。

アタシはスマホでできる限りの検索をかけたが
詳細は分からなかった。

ふとマニアックなゲームなら秋葉原!
って安易に浮かんで
「秋葉原 MOI 」でワード検索をしてみた。
「家電のケンちゃん」という店舗が出てきた。

んーゲームとか最近全然やってないけど、
まあちょっと行って聞いてみようかな?
どうせ明日休みだし、これといって予定もないし。

久しぶりに観たCDケースを弄びながら
アタシは決意した。

秋葉原へ!


秋葉原の電気街口に来た。
久しぶり!めっちゃ久しぶりだ!
昔友人にコラボカフェに
付き合って以来の秋葉だった。

「チュンチュンカフェいかがですかぁ~?」

着物を来た若い女性が声をかけてきた。

アタシは
「はは、犬派なんでー」
と奇妙な返信をし、
それを遮断して歩きはじめた。
こ、これが今の秋葉原なのね!
おそろしやー。

「家電のケンちゃん」のある建物は
ガード沿いもあってすぐ見つかった。

「ジャンク屋」って言うんでしょ?
勿論アタシは入ったことがない。

まるでお化け屋敷を進むがごとくゆっくり歩いた。
違うのはつまむ友人の袖がないことだ。
ひいい。

通路を進むと、
なんかよく分からない機械が
色々と置いてあったコーナーがあった。

ゲームソフトも沢山陳列されている。
左側にはガラクタ寄せ集め?なコーナーもある。
白いビニールテープの上からマジックで
「ジャンク品(動作未確認)」と書いてある。

再び視線を右に移すと隅に人が座っていた。
風貌は細身の中年男性。
ヒゲに長髪をくくって
いかにもジャンク屋店員という感じだ。

ずっと机にある小さい機械をいじっている。

アタシは思い切って声をかけた。

アタシ
「あ、あのう・・・」

店員
「んん?なんだい?」

あ、良かった!思ったより怖くない。

アタシ
「あのですね、
これができるゲームってあるかなーって、思って・・・」

アタシはバッグから昨日のCDを取り出して店員に見せた。[p]

店員はCDRを受け取り、
ケースから取り出し裏面まで丁寧に見ている。
なんで裏まで見るのかな?

店員
「へえー
こりゃ懐かしいわ。
MOIかー」

アタシ
「ご存知ですか?」

店員
「うん。まあ、ね。
これ社内プレゼン、企画会議みたいなもんで作られたヤツだよ」

アタシ
「遊べちゃったりします?」

店員
「普通のポレステじゃ動かないよ社内ロム、
試作品だったもん」

アタシ
「ポレステ・・・
ポレイステーションのゲームだったんですね!」

店員
「そうそう。
結構企画は良かったんだけどなー
惜しいんだよ、これ」

アタシ
「そうなんですね・・・」

しばしの沈黙

店員
「遊んでみたいでしょ?」

店員の意外な言葉にアタシは驚いた。

アタシ
「え!そりゃあできたらですね・・・」

店員
「そうだよねー!
せっかくここまで来てくれたんだしね!」

店員のテンションが明らかにさっきより上がっている。

アタシ
「ポレステのゲームあれば遊べますか?」

店員
「普通の本体じゃ動かないよ。
俺、動くヤツ持ってるから貸してあげるよ」

アタシ
「本当ですか!?」

ゲームの世界へ

アタシは自室の机を片付け、
最近は朝の天気のチェックくらいにしか
見ることのないテレビと
ポレイステーションの接続をした。

秋葉の店員さんの名前は
ハラダさんと自己紹介をしてくれた。

そのハラダさんから
非売品ゲームが動くポレイステーションをお借りしたのだ。

あー
ゲーム機を袋に下げて持ち帰るの久しぶりだなー
確かにムサシ兄ちゃんを思い出す。
兄ちゃんが結婚した時、
アタシにゲーム一式くれたんだよね。
あれまだ実家にあるはずだ。

そんな久しぶりのノスタルジーも手伝って
わくわくしてきた。

入力良しっと。
古い地デジのTVで良かった。
ハラダさんはよく持ってたね、
と褒めてくれた。

ポレイステーションの電源ボタンを押した。

どぅーん!にゃらりーん!
みたいな起動音と
画面にはロゴが表示された。


アタシは真っ白い世界にいた。
いや、夢を観ているのかな?
借りてきたゲームを起動してたような・・・。


「ああ!ローラ!
やっと戻ってきてくれたのね!
おそいおそい!」

アタシ
「ええ?!」

呼びかける声に気づくと
周りが明るくなった。
そこはゲームによくある神殿みたいな場所だった。
奥に輝く重そうな鎖でつながれた
見たことのないような大きさの鳥がいた。

アタシに声をかけたソレは
その大きな鳥の足元でぴょんぴょんと飛んでいた。

ウサギかな?

ウサギだな!

アタシ
「アナタは?」


「そこなんで忘れるのー!
バリーとってもショック!」

アタシ
「バリーー?」

アタシは思わすぷっと笑ってしまった。

某遊園地でキャラクターに話しかけている気分のようだった。

アタシは改めて周囲を見渡した。

ああ、ゲームの世界。
でも夢なんだね。

バーチャルなんとかのゲームとかってやったことないけど
たぶん、こんな感じなのかな?

でも面白い夢、
アタシはこの奇妙な夢の続きを楽しむことにした。

バリー
「バカバカバカバカ!
今まで何やってたのよー」

アタシ
「あはは、ごめんて。
今、どうすればいいの?」

アタシはゲーム状況を探ることにした。

バリー
「アナタがいない間大変だったのよ!!
魔女をやっつけるために勇者様が来るっていうのに、
魔女の城まで勇者様を運ぶこのオオワシが呪いをかけられて
鎖で動けなくなってしまったのよ!!」

なるほどなるほど

アタシ
「ふぅん・・・
じゃあこの鎖を解かないとだね!」

ちょっとノッてきた。

バリー
「そうなのよ!」

アタシ
「どうすれば開放できるのかしら?」

バリー
「あたいの仲間に調べさせたんだけど、
鎖を解く鍵は3つあって、
この世界に散らばっちゃったみたいなの!」

アタシ
「あらら、どうしましょ?」

バリー
「ん!もー!そんなのんきに!
このポルステラ地方に3つあるみたいだから大丈夫よ!」

アタシ
「ホントに?」

確かこれテストで作ったゲームよね?
不安だわ。

バリー
「ばかばか!いきなりいなくなって!
帰ってきてものんびりなんだから!
これだから、ローラは!」

アタシはこの世界ではローラというのはなんとなく分かった。
確かに格好を見ると女性狩人みたいなコスチュームだ。

ローラ

バリー
「さあ!分かったわね!
いきますわよ!」

アタシ
「待って待って!
モンスターとか大丈夫かしら?」

バリー
「はん!何言ってるの!
アンタそれでも弓矢の名手でしょ!
行くわよ!」

現実世界では学生時代はバレー部だったんだが。

アタシはウサギの後をついて行った。

(つづく)


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