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コンとローラ(コン編:第2回(全4回)たたかい)

荒野を歩く


倉庫みたいな空間を抜けると
そこはいかにもゲーム世界でありそうな荒野だった。
遠くには漫画でよくある
砕けた高層ビルみたいな建物も見える。

ふと俺は自身を確認した。
ダンディーによると俺はコンというキャラクターらしい。

しかしなんだなんだこの雑な設定は。
コンの名前通り、
キツネの人型キャラで額に鉢巻、
身体には変なアーマーに靴はバスケのバッシュぽいのを履いている。



まあ仕方ない。夢だしなあ。

俺はしばらく
先をふわふわと飛ぶAIダンディーに着いていった。

ダンディー
「近い。
この近くにハドウのギアがある、
あるいは、それを持つものがいる!」


「しかし、
なんかオープンワールドにしちゃ
殺風景な地形が続くもんだな。
まあ当時のタサーンじゃ
頑張ってる方かなー」

ダンディー
「??
コン!
タサーンとはなんだ?」


「ああ、
それは話すと・・・」

エンカウント!


突如!
前方少し先のレンガの壁が
大きな音と振動をたてて砕け、
そこから高さ5メートルくらいのロボットが現れた!

濃い緑のボディに
頭部らしき部位から赤い光球らしき目のようなもの。


「なんだコイツ!敵か!?」

ダンディー
「気をつけろ!
コイツは帝国軍の機動メカ「クザ」だ!
小型だが強力な敵だ!」


「そうなのか?!
こっちはなにか武器はないのか?」

ダンディー
「武器か?
武器ならあるさ!
ワタシとキミとの勇気が最強の武器さ!!」


「いや、
そういうのより
銃とか楽なの!」

ダンディー
「む?
あの建物の中に
こちらが使えるメカがある!」


「よし!
行こう!」

俺はダンディーの示した建物に走った。

建物の中には
外で遭遇したロボットに似たロボットが
数体しゃがむように置いてあった。

AIはそのうちの一体に近づくと
しばらく動きを止めた。

ダンディー
「よし!いけるぞ!
コン!乗り込んでくれ!」


「ええ?
どうやって?」

ダンディー
「背面のハッチから乗り込むだけでいい。
あとは私がサポートしよう!」


「マジか!」

俺はロボットの背面に周りこみ中に飛び込んだ。

バタン!
ハッチが閉まる。
中は真っ暗だった。


「おい!
ダン、ディー!
どうなって・・・」

ミョミョミョミョ・・・と
音とともに振動がなる。

気づくと俺はしゃがんでいた。
しゃがんだロボットと一体化していた。

ムジ

ダンディー
「どうだ?
コン?
うまくリンクできたか?」

眼下にさらに小さくなったAIがいた。


「あ、ああ、
これで戦うのか?」

ダンディー
「そうとも!」


「ええー」
俺はこのロボットがある建物内を見渡した。
武器になりそうなものがない。

ダンディー
「いこう!コン!」


「勝てるかなー?」

都合よく建物の入口の反対側は
大きく開放されていた。

俺はほぼ一体化したロボットで外に出た。


「そういえばさっきの緑のロボット、
追ってこなかったなあ」

ダンディー
「ああ、だがヤツにも
私同様に
戦術AIが組み込まれているのは間違いない」


「俺みたいに人みたいなのも乗っているのか?」

ダンディー
「それはありえない。
ヤツは無人タイプだ!」


「ああ、そう・・・」

俺(ロボ)建物の前まで来た。
10メートル先に緑のロボットがいる。

緑のロボットは少し顔を上げ、
こちらを視認すると眼を光らせた。

俺はとっさに上腕部を前に出し
ガードの姿勢を取った。


「向こうも丸腰か!」

緑のロボット
「おお!!
遂に会えたぞ!わが宿敵よ!!」


「・・・は?」

緑のロボット
「長かった・・・実に長かった!
お前に出会えるまで!」


「何を言ってるんだ?」

ダンディー
「むぅ・・・
どうもこのクザは
帝国軍を離れた機体らしいな」


「なんでそんなのがここに?」

ダンディー
「ウム・・・
しかしヤツの機体からハドウのギアの反応がある!」


「やるしかないってことか!」

俺はガードを解く、
右足を後ろに引き、構えぽくポーズを取った。


「戦うのか?」

緑のロボット
「当然だ!
われらは生まれた時より死ぬときまで戦う宿命!」

緑のロボットも武闘家のように構えを取った。

なんか昔遊んでいた格闘ゲームキャラのセリフみたいだな。

よし、適当に合わせよう。


「俺が勝ったらお前の持つ、
ハドウのギアをもらうぜ!」

緑のロボット
「よかろう!」


「・・・ええと、
お前が勝ったら・・・?」

緑のロボット
「さあ!ゆくぞ!」


「え?」

緑のロボットはこちらに接近し、
パンチを繰り出してきた。

俺は一発目をかわし、
二発目は肘のガードで受けたが
腕が少ししびれた。

少し距離を取った。
俺は深くため息をついた。


「おいダン!
これマジで武器ないんだな!
格闘だけなんだな?!」

ダン
「そうとも!
その機体は格闘に特化された・・・」


「わかった!わかった!」

俺は緑のロボットに少し左に回り込んで
フックを見舞った。

緑のロボットの反応は遅れたが、
両腕でガードをしてきた。

しかし手応えがあった。

ヤツのガードが開いた。
俺はヤツの顎にアッパーを食らわした!

派手に宙に浮く緑のロボット。
後方に大きくふっとばした。


「やった・・・のか?」

ダン
「ダメージ値はかなり高かったはずだ。
これなら・・・」

シュウゥゥゥ・・・
と倒れた緑のロボットの身体から
蒸気のようなものが放たれている。

俺がふぅと息をつくと、
そのロボットは
ちゃっと起き上がって
また構えを取った。

緑のロボット
「やるではないか、ともよ・・・」


「俺の勝ちだよな?」

緑のロボット
「まだ始まったばかりだ!!」

ヤツはさっきとは全く違う速度で突っ込んできた。


「ラウンド制かよ!くそ!」

緑のロボットは
その巨体から考えれない
身軽さでドロップキックを繰り出し、
俺はそれをもろにくらって
今度は俺が大きく吹っ飛ばされた。

あたた・・。
俺の機体からも蒸気が出た。
これが一本取られたエフェクトなのか。

あれ?
でもそんなにすげえ痛いって訳じゃない。
俺は起き上がり前方に構えるヤツを見た。


「イーブンか・・・」

どうする?

2本先取が条件なら、あとがない。

どうする?

少し考えていた瞬間に、
またヤツが突っ込んできた!

ヤツのハイキックを
俺はなんとかかわした、

が、次の瞬間膝蹴りを食らった!

俺の機体は
またしても大きく後方にふっ飛ばされ蒸気を放った。

負けを確信した。


「ああー負けたかー」

俺はゆっくり起き上がった。


「え?」

前方にまた緑のロボットが構えている。


「3本以上取るのか!
めんどくせー試作ゲームだな!」

果てなきバトルロード


俺は久しぶりに感情を少し出して緑のロボットに向かっていった。

ふっ飛ばし

ふっ飛ばされる

ゲーム終了のフラグが立たない。

ふっ飛ばし

ふっ飛ばされる

ふっ飛ばし

ふっ飛ばされる

ふっ飛ばし

ふっ飛ばし

ふっ飛ばし

おおい!
もう勝ち越しだろ?

ふっ飛ばし

ふっ飛ばし

ふっ飛ばし

ふっ飛ばされる

ふっ飛ばされる

ふっ飛ばし

ふっ飛ばし

ふっ飛ばされる

ふっ飛ばされる


たたかいの果てに


クザ
「まだだ!
来い!コン!」


「いくぜ!クザ!」

もうずっと戦っていた。
これが格闘ゲーだと理解してからは
気が楽になった。

殴り合い、蹴り合い、投げたり投げられたり、
どれくらいの時が流れたのだろう。
気づくとステージ背景も夕暮れになっていた。


俺のジャンプキックがクザに決まった。
ふっ飛ばされダウンするクザ。


「っしゃ!!」

クザ
「見事だ、コン」
クザはゆっくり起き上がった。


「え?お、おう。サンキュな。
でも次は・・」

さっきから脚を少しぴょんぴょんしている自分がいた。

クザ
「今日はわれの負けを認めよう、ともよ」

クザからの意外な言葉に俺は少し驚いた。


「俺の勝ちか・・・?」

クザ
「ああ。今日はな。」

そう言うとクザはどこにあったのか
歯車のようなものを俺に差し出した。

ダン
「ハドウのギアだ!」

ダンはそれに光線を当て
内部に取り込んだみたいだった。


「オマエはどうなるんだ?」

俺は急に弱気になって聞いてしまった。

クザ
「われはもちろん帰る。」


「帝国にか?」

クザ
「そうではない。
われを待つ、者のもとへだ」


「え?・・・・」

クザはそう云うと背中を向け
夕陽に向かって
ゆっくりガシンガシンと歩き出した。


「クザ!」

クザは左手を上げた。

クザ
「コン、
久しぶりに熱い戦いをさせてもらった。
感謝する。」


「お、俺だって・・・」

クザ
「また戦おう、この地で」


「あ・・・ああ!」

クザの姿が夕陽に溶けていった。

(つづく)

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