見出し画像

コンとローラ(ローラ編第3回(全4回)ともにする仲間

仲間のもとへ


翌朝。
アタシはウサギと村を出た。

ウサから手紙のようなものを渡された。

「=伝説の狩人どもへ コペ歴クロワ月のロールの刻
      いつもの場所で特訓するぞい= 
                                           =ヒッチュー=」

ウサにこの件で聞くと
ヒッチューというのは
狩人養成ギルドのマスターの一人で、
まあ先生みたいなもので、
伝説の狩人は
アタシ含めて4人いるらしい。

そうかライバル達なんだな。
勝てる気がしない。

アタシ
「ねえ、ウサ。
この日っていつ?」

バリー
「なに言ってるの!
今日よ!今日の昼!
急がないと遅刻よ遅刻!」

アタシ
「ええー!?
その街へ、魔法とかで、ぱぱっと行けないの?」

バリー
「もう!行くわよー!!」

ウサギは猛ダッシュしていく。

アタシ
「ちょっと待ってよー
ウサー!!」


再会


街までの道中、
運良く馬車に乗せてもらえ、
アタシは養成ギルドのある、
ここシフヤという街に着いた。

周囲を高い石壁に囲われた
城塞都市なんだ!
流石に人がいっぱいいる!

うおお!
鎧の騎士が本当に歩いている!

アタシがキョロキョロしてると、
バリーにちょっと静かにしなさいと怒られた。

アタシは実は
さっきからふてくされている。

馬車に乗る前に
ウサに地味な色のローブを着させられた。
理由を聞いても答えてくれなかった。
そのせいだ。

アタシ
「ねえウサー
これ結構暑いよー
そろそろ脱いでいいでしょ?」

ウサ
「ダメよ。
もう少しで着くから!」

ちぇー

ふと街角に目を向けると
アタシと同じような女性狩人が
4人いて立ち話をしている。
アタシは立ち止まって聞き耳を立てた。

狩人A
「ねえねえ、そろそろ大会でしょー。
レベル上げた?」

狩人B
「もちろん!
オカタ山でばっちりハントしたわ!

熊、でかかったんだから!」

狩人C
「なにいってるの!
アレあたしのサポートなきゃ危なかったじゃん!
もー」

狩人D
「まあアタシらなら
ひっくり返っても伝説にはならないし、
余裕でしょ」

アタシ
「え・・・・?」

アタシは瞬間、驚く程
聴覚が研ぎ澄まされた気がした。

歩きながら別の街角からの会話が聞こえる。
今度は男性のグループだ。

「しかしアイツラ、
なんであんなに命中率悪いのかねー」

「よくもまー
いつまでも続けてるよね」

「遊び気分で狩人されても、
俺らが困るんだよねー」


アタシはいたたまれない気分になって走った。
伝説の狩人って!
もしかして、、、、、、


街を抜けて畑や羊が放牧されている
広いスペースに来た。

数人の狩人とそこにはウサがいた。

アタシ
「ねえ!ウサ!
アタシって!」


「よく来た!
待ってたぞーい!」

ぶ厚い眼鏡をかけた老人狩人が
いきなりアタシに抱きついてきた!

アタシ
「きゃあああ!!」


「会いたかったぞい!
会いたかったぞい!ローラよ!」

アタシがポカンとしていると、
老人の背後から細い腕が伸び、
引き離してくれた。


「はいはい
感動の対面終わりだよ。
おじいちゃん!」

引き離してくれた狩人は
銀髪のショートカットの女性だった。

女性
「まったく・・・
あーしらじゃなきゃセクハラもんだって・・・
大丈夫かいローラ?」

アタシ
「あ・・・
ありがとうございます・・・」


「ハッ!なんだいかしこまってさ!
親友のあーしの顔忘れたってかい?」

アタシ
「忘れてないよ、シェキ」

シェキ

馬車に乗る前に
ウサから狩人の情報は聞いておいた。

彼女はシェキ。
勝ち気な性格が災いして弓の命中率が悪く、
依頼主たちともよく喧嘩をするらしい。

そして・・・


「ハーン!
元気そうだねマイハニー!」

このキザなナルシスト野郎はキザーラ。

キザーラ

まあ名前の通りだ。
女癖が悪く、
失敗も色んな意味で
くよくよしない男らしい。

えっと、


「ひ、ひさしぶり、なんだなローラ!」

低身長ころころ体格太眉毛のこの人は、

アタシ
「久しぶりね。ドミー。
元気だった?」

ドミー

彼は気弱で動きも遅いけど
いつも一生懸命な子らしい。

「ほっほっほっ!
みんな揃ったようじゃな!」

アタシにいきなり抱きついてきた
このおじいさんはもちろん手紙をくれたヒッチュー。

みんな良い人だと思う。

けど

けどアタシたちは・・・。


どうせ最後のパーティーゲーム


ヒッチュー
「ホッホッホッ!
さあいくぞーい!」

アタシら4人の伝説の狩人は
スタートラインに立っていた。

これから
この放牧場に
手をいれ作った
まるで子供の障害物競争のコースで
特訓のためのレースをする。

アタシは皆と久しぶりだねーと
通り一遍な挨拶をした後、
少し時間をもらって
ウサを道具倉庫に連れ出して詰問した。


「確かにキミ達は
まだ正式な狩人ではない。
ランクも最下位だ。
でもヒッチューはいつもこうして
キミ達を集め
励ましてくれているんだ」

ウサはそう珍しく真面目な口調で言った。[p]

アンタ
「なによ!なんなのよ!
ゲームの中まで来てバカにされたくないわ!

もういや!アタシ帰る!」
大声を上げた。

バタン!

入口で大きな音がした。
アタシが戸を開けると
外にはドミーが尻もちをついていた。

ドミー
「し、師匠がそろそろ始めるって・・・ごめんね」

彼はえへへと笑って言った。

彼の穏やかな表情に
アタシは少し自分が悲しくなった。
身体動かして休んで
もうこのゲームをリセットしよう。
そう思った。

アタシ
「うん。わかった。すぐ行くわ。
驚かせてごめんね」

ドミー
「うん!待ってる!」

ドミーは決して速くない速度で駆けていった。

アタシはウサの方を観ないで言った。

アタシ
「これ終わったら、
もうゲームしないから!」

ウサ
「ローラ・・・」

アタシは仲間の元へ走っていった。

仲間?
仲間って?
ゲームのキャラでしょ?

ゲームなんだから、
イケメン多く出すとか、楽させてくれるとか
そういうのでいいのよアタシは!
アタシのゲームは!


スタートラインに立った。
なんか見たところ
運動会場は3つのエリアに分かれていた。

最初はなにやら怪しく路面が光ってる
2つ目は弓道場みたいに
奥に4つ的があるから
あそこで弓をやるんだろうな。

最後は障害物みたいな小山が転々とある。
その先がゴールだ。

隣でシェキが身体をほぐしている。

シェキ
「さあ今回は負けないからねローラ!
あーしだって沢山練習したんや!」

アタシ
「え・・・」

シェキ
「アンタって
ここぞって時いつもめっちゃ強いのに
普段損して勿体ないよな。
あ、あーしもそうか!」

彼女はケラケラ笑った。

アタシが言うのもなんだけど
確かに彼女は狩人に向いていないと思った。

男性二人を見る。

ドミーも何度も拳を握っている。
表情は真剣そのものだ。

キザーラと目が合った

キザーラ
「うん?ハニー?手加減はしないよ?」

アタシ
「アタシも」

ポコン!
となにか軽い爆発音がした。

3人が走り出したので
慌ててアタシも走り出した。

はいはい最後のゲーム!
終わったら帰るからねー。



なかまとのたたかい


アタシが最初のエリアに入った頃には
3人ともその手に光輝くカードみたいなものを数枚持っていた。
とっさに地面を見るとそのカードが数枚落ちている。

これで何するんだろう?
アタシも習ってカードを数枚拾った。

・・・・ん?なんだこりゃ?
カードにはうっすらと動物ぽい絵と読めない文字が書いてあった。


シェキ
「さあ!いくで!あーしはコイツや!」
彼女はそう言うとカードを一枚(?)天に掲げた。
瞬間!彼女の前に大きな剣を背負った白い豹が出現した!!


キザーラ
「オゥ!シェキらしいモンスターね!
ならワタシはこれでイキマース!」
彼もシェキと同じようにカードを掲げると、
今度は両手が2本ずつある刀みたいなものを持った
怖そうな女性が現れた!

ドミー
「ボ!ボクはまず、こいつだー!」
そう言って彼は大きな亀のような動物を出した!


シェキ
「さあ、ローラ!アンタの番やで!!はよしな!!」

アタシ
「え、ええと・・・」
アタシは慌てて再び手にしたカードを見たが、
何を選べばいいのか?さっぱりわからない。

アタシ
「待って!待って!」

シェキ
「いんや、待たん。ほら!攻撃や!」
彼女がそう言うと、彼女の出した白い豹がアタシに飛びかかってきた!

ばちん!

アタシ
「ひぅ!」

軽い衝撃を受けた、ような気がした。

そうか、
これはこのカードで動物とかキャラクターを出して戦わせるんだな。
アタシはやっと理解した。

アタシ
「やったわね!なら!
アタシは!これだああああ!!」

なんとなく熱いと感じたカードを天に掲げた!

瞬時に周囲が暗くなった。

アタシ
「・・・・・・え?」

シェキ
「ローラあんた、まさかまた?」

また?

キザーラ
「オー相変わらず、デンジャラスな初手でー」

デンジャラス?

ドミー
「うわー!防御しないと!」

防御?

アタシは空を見上げた。
いつの間にか暗雲がモクモクとなって、
そこから巨大な金色のドラゴン?が
ゆっくりとこちらに降りてきた。

アタシ
「これが・・・アタシの出した・・・ドラゴン?」

ドラゴンはアタシの眼前には来ず、
上空で静止し、大きく口を開けて鳴いた!

ギャオオオオオオオオオオオ!!

その直後、周囲に無数の稲妻みたいなものが走り、
アタシもみんなも、
みんなの出したキャラクターも電撃を浴びた!

いたあああああ!!
アイタターー!!
オウーー!!
ぐえーー!!


彼らの出したキャラはみな消えてしまった。
アタシもさっきと違ってめちゃくちゃ痺れた!

シェキにめちゃくちゃ怒られた。

「なんでいつも破滅のドラゴンを最初に出すんや!!」

は・・・破滅・・・。
そんなの知らなかったんだもん・・・。


そこからはほぼ消耗戦だったが、
慣れてくると攻防は一進一退になりやすく、
これはこれでドキドキした。

アタシはキザーラと一対一の戦いをしていた。
互いに呼び出したキャラクターは1体ずつで睨みあっていた。


キザーラ
「フフ~ン
そろそろ先に行かせてもらうよ、ハニー!」
キザーラが手札を切った。
キャラクターの呼び出しではない。
魔法をつかうようだった。


アタシ
「ま!負けるもんですか!」
アタシも続いて魔法カードを切った。

キザの方向から炎が向かってくる!
アタシのキャラクターの眼前に来る直前に
大きい光の盾が出現した!

炎はその盾に跳ね返り、キザとキザのキャラクターに当たり爆発した!

キザーラ
「うあああああああああああああああああああああ!」

彼は大きく吹っ飛ばされた。

アタシはめちゃくちゃ喜んだ。

アタシ
「ふふん!どんなもんですか!」

キザーラ
「さすがはハニー、しかし、ワタシはラッキー」

アタシ
「え?」

キザは立ち上がった。
彼の吹っ飛ばされたところはこのステージの出口だった。

彼は透明の光を放つドアを開けると次のステージに進んでしまった。

アタシ
「ちょっと!ずるい!」

アタシも急いで出口に向かおうをしたが、
がっくりと膝をつき、身体を震わせた。

ああ、そうだった。
破滅のドラゴン呼ぶのにすごい魔力?使って、
その後もけっこう沢山カード使ったから身体が動かない。
じっとしてれば回復するってさっきドミーに教えてもらった。

アタシ
「く・・・・くやしい!!」

第2ステージは対戦ではなく射的だった。
動くマトに矢を当てればクリアみたいだ。
シャキは楽しそうに沢山弓を射っていた。

なんとかマグレ当たりで先に進んだ。
ビリだけどw

第3ステージは2メートルくらいの小山がたくさんあって、
登っては滑ったり、落とし穴があって落ちたり、水たまりにはまったり、
一緒に落とし穴に落ちたドミーと協力して地上に戻ったりもした。

全身汗だく、クタクタ。
でもなんか笑いが止まらなかった。

アタシはけっきょく最後にゴールした。



たたかいおわって


アタシは3人の狩人らと
しゃがんではあはあと息を整えていた。

ドミーは腹ばいでひっくり返っている。
キザはちょこんと座っているが
息は整っていなかった。

ああ!なんかすっごく楽しかった!!


途中なんか色々叫んでいたなあアタシ。

なんだろうこの感じ。
すっごく久しぶりにこんな遊んだわ。

汗だらだら。
陽も暮れてきたし
早くお風呂入りたい。

シェキと顔を合わせた
彼女の笑顔がまぶしい。

シェキ
「はあはあ・・・順位関係ないね。
ローラ、
やっぱアンタすごいわ」

ローラ
「シェキ・・・ううん。
アナタの方がずっとすごいわ」

シェキ
「そうかな?」

ローラ
「ねえ、
なんでアタシら「おちこぼれ」なの?」

シェキ
「ローラはやっぱ、バカにされるの嫌かい?」

ローラ
「え?」

シェキは膝を両手で抱えた。
表情はなんというか、少し寂しそうだった。

シェキ
「あーしはバカにされても、
好きやな、この使命・・・」

ローラ
「え・・・使命って・・・?」

シェキ
「ふふ、やっぱ
アンタが一番すごいわ」

アタシは何か
大きな勘違いをしている衝動に駆られた。


真実


ギルド直営の館に入り、
アタシ達はお風呂に入り食事を摂った。
皆疲れ果てているのか
ほとんど話さなかった。


しばらく個室にいる間
頭の中を整理しようとしたが
できなかった。


かなり遅い時間に招集がかかった。


ガタン・・・


扉を開けるとそこは豪華な聖堂だった。


聖堂

祭壇の中央にヒッチュー先生
3人もいる。


ん?
あれ?
なんかさっきと雰囲気ちがくない・・・?

ヒッチュー
「ホッホッホ。みな揃ったか!」

アタシは3人と同じく並んだ。
あれ?
なんだ?
3人とも背筋ピーンなこの感じは。


バタン!
キュイーン!

と音をたて聖堂のドアが閉じた。


キザーラ
「先生、扉のロックできました。
盗聴の気配もありません。」

え?

ヒッチュー
「うむ」

少しして先生が話し始めた。


ヒッチュー
「いつも同じことから言わせてもらうが、
本当にすまぬ。
お前達にばかり負担をかけさせてしまって。
オオワシと勇者が封印された今、
鍵の探索は隠密行動をせねばならぬことを」


ええ?


キザーラ
「いえいえ先生、
私はむしろ感謝しておりますよ。
身軽故、多くの女性に声をかけられ
沢山お話ができて」


この男は・・・

ヒッチュー
「ほほほ・・・で?」

キザーラ
「はい。
ここから南の神樹のある森に
魔女の手先が進行中と、情報が確定しました。」

キザーラがかなり険しい表情で話した。

ヒッチュー
「ほほほ。そうかのー。」

シェキ
「あーしはギガンテスとアイスゴーレムを討ったわ。
あと魔女の使い魔も。
こっちに探り入れてたやつは片っ端から片付けたわ」


えええ?


アタシは多分今変顔で彼女を見ているに違いない。
シェキがアタシの視線に気づき、ニカっと笑った。

シェキ
「あーしは数討ちゃがとりえだかんね!
倒すまで射るんや!」


彼女はウインクして言った。

ヒッチュー
「ほほほ。流石じゃシェキ。
砦の隊長もかなり感謝しておったぞい」

シェキ
「へへ!
味方に当てないように頑張ったんやで!」

ヒッチュー
「ほほほ。さて、ローラ」


あ、アタシだ!おわた。

アタシ
「ええと・・・」

ヒッチュー
「一番辛い任務をさせてしまったな」

アタシ
「え・・・?」

ヒッチュー
「報告は既にバリーから聞いておる。
人々に希望を配るその役、
並大抵の苦労ではない」

アタシ
「そ!そんな!」

キザーラ
「しかも道中に鍵も手に入れてくるとは、
流石は勇者に選ばれし狩人ですよ。」

シェキ
「ホントホント!
バトル馬鹿のあーしじゃ
ぜってえ神獣様に認められんて、
へへ!」


まってまって!!
アタシは困惑した。

ヒッチュー
「ふふ、してドリー」

ドリー
「はい。
人に取り憑きし魔神の成敗は
いささか苦労しましたが。」


ドリーは手に赤い革に包まれた
何かを持っていた。
帽子を取った彼は
さっきまでと格段に雰囲気が違っていた。


彼はアタシの前に来ると、
膝を落とし革に包まれたものを差し出してきた。

ドミー
「ローラ、
やっぱりキミはボクにとって一番の勇者だ」

アタシ
「ドミー・・・」

革をめくると
それは二つの鍵だった。

あれ?
これ一本
アタシが神獣様から受け取った鍵だ。

ドミー
「さっきバリーから預かったんだ。
ちょっと待ってて、まとめてあげる」

彼はそう言うと
人差し指を立てた。

指先から小さい炎のような光が放たれ、
鍵は光り消えた。

次の瞬間
アタシの右腕に金のリングが現れた。

アタシ
「これって・・・」

ドミーはふふと笑った。

ドミー
「リングに意思を込めれば鍵はすぐ出てくるよ」

アタシ
「あ・・・ありがとう・・・」

ヒッチュー
「ほっほっほ!
皆ご苦労じゃった!
さあて、もう一息だぞい!」

3人
「ハッ!」

アタシ
「・・・・・」

ヒッチュー
「今日のレースは楽しんでくれたかのう?」

シェキ
「ああ!
久しぶりに人様と遊べて最高だったぜ!」

キザーラ
「やはりこのメンバーだと落ち着きますね」

ドミー
「・・・楽しい」

アタシ
「・・・・・・」


ヒッチュー
「ホッホッホ。
ワシも、
お前達の顔を久しぶりに見れて嬉しかったぞい。

弓も人生も集中する点では共通しておるなあ。
じゃが、
ワシは人生はそれだけではなあ、
と思っとる。

笑われてもいい、
お前達には笑って生きてほしいんじゃ」

アタシはどっと泣いた。
わんわん泣いた。
いろんな感情が溢れ出した。


(つづく)


いいなと思ったら応援しよう!