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料理人の世界とパワハラ

料理人の世界は職人気質な方が多い故に
昔からいわゆるパワハラが付き物だった。
勤務時間もそうだけど、ブラックな職場になりがち。
今はそこまでじゃ無いと思う。
でも自分が就職した10何年前は当たり前に蹴る殴るはあった気がする。

蹴る殴るは優しい方
生のかぼちゃを顔面投げつけられ、かぼちゃが割れ顔が腫れて膨れあがったとか、
熱々出来たてパスタをこれまた顔面に投げつけられたとか、周りからもそんな話を聞いた。

自分も体重100キロを超える金髪モヒカンヘアーのいかついシェフに挨拶がわりに殺すと
言われて殴られてた気がする。

厨房は真剣勝負の戦場のような場、
たしかにそんな場で、やらかすやつを怒りたくなるのは分かる。
だから怒られないよう必死だった。
気が入りすぎたせいか
営業開始の最初のオーダー入った瞬間
鼻血が出て止まらなくなった。
シェフになにしてんねん!
って呆れられた。

一回本気で怒られて、体重100キロ超えの
シェフが真っ赤な顔で殺すと言いながら向かって来たので、厨房から逃げた。

1回店の外へ出て考えた。
戻ってくるとシェフは笑っていた。
『逃げたのはあかんけど、自分を出したのはええことやで。よく戻ってきたな』

いろいろあったけど、それが初めてシェフが褒めてくれた時だった気がする。

10年ぐらい経って、僕は違う職場で働いていて、シェフが新たに始めた店に久しぶりに顔を出した。
シェフは奥さんと二人で切り盛りしていて忙しそうだった。
誰か雇わないんですか。
僕は聞いた。
シェフは
『雇ってもな。今の若いやつは一回蹴ったらすぐ逃げんねん。お前みたいに戻ってけえへん』
と笑っていた。
シェフのことは尊敬してる。
だけどこの業界意外にも言えるけど昔の根性論。スポコンのノリは今の人たちには通用しないだろうし、ただでさえ人手不足な時代。
休みがない。きつい。
給料安い。どんどん悪循環に陥ってる
気がする。ましてやこのコロナ禍の世の中だ。

料理人って仕事は
人を食事って言う人生に欠かせないものを通して幸せにする仕事。なんて素晴らしい仕事なんだろうって思ってた。
でももし自分が幸せではない状況下、明日が不安で仕方ない状況で本当に人を幸せにできるだろうか。
いろいろ考えさせらた。


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