「ヒロインレース・デストラクション」第二話
【場所:学校】
時間:休み時間
メイが机に座って、けだるげにスマホを見る。
スマホにはアプリ「HEROS」が表示され、全員の好感度が映っている。
ランキング一位 草場メイ(-) 好感度110 レベル5
ランキング二位 女淵鳴美(↑)好感度55 レベル3
ランキング三位 柳ヶ瀬島虎(↓)好感度50レベル3
ランキング四位 古河ねるり(-)好感度32 レベル2
ランキング五位 雷鳥沢らいち(新)好感度9 レベル1
メイ(昨日のあいつ、らいちとか言ったな。あれでこんなに好感度あがってんのかよ。やっぱり属性盛ってる分、初見の印象が
強いのか? それとも、ああいうのがタイプってことも――)
ねるり「なに唸ってるの」
メイ「唸ってねーし」
ねるり「ふーん」
メイ「あっ、人のスマホ見んなよ!」
ねるり「一位のくせに焦ってるねぇ」
メイ「うっさい……」
ねるり「身体張ったりはしないのかな」
メイ「……そういうこと言うタイプなんだ」
ねるり「私はやらないけど、メイはどうなのかなって」
メイ「エロは慎重に扱わないと逆効果。例えば勢いで胸を触らせ
るとして、そのあとどう好感度アップに持ち込むかが大事よ」
メイが悠に胸を触らせるイメージ。
このイメージにメイは指摘する。
メイ「これだと、ただ気まずくなるだけだし、あいつは得したって
思うだけ。それじゃ効果としては大きくない」
ねるり「おー……そうかも?」
メイ「何よりそういう枠だと認識されたらまずい。エロ要員っての
は勝ち目が薄くなる。エロで釣ればいいでしょってのは、浅はか
な考えよ」
ねるり「よく考えてる。さすがチャンプ」
メイ「チャンプはやめて。
にしても、アドバイスなんて随分余裕だね」
ねるり「私は……消極的参加だから」
メイ「またそれか」
ねるり「信じてよー」
ねっとりメイにくっつこうとするねるり。
メイ「暑苦しいからくっつこうとしないで」
【場所:学校】
時間:放課後
授業が終わり皆が帰りはじめる。
悠は本を読んで居残って遅くなる。
それをらいちが影から覗いていた。
らいち(んふふ……先輩もあんな草食べてそうな顔してるけど、
男なんだからえっちの塊に違いない。つまりヤレば落とせる。
ちょうど他のやつはみんな帰って、先輩は一人。お誂え向きな
状況! 今日でこのレースは終わりにしてあげますよ)
こっそり彼の背後に近寄ると、背中から抱きつくらいち。
らいち「せーんぱい♡」
悠「えっ! あ、キミはたしか雷鳥沢さん」
らいち「らいちちゃんって呼んでください♡」
悠「雷鳥沢さん」
らいち「あっはい」
らいち(こっちがエロムード作ってんのに、なんだこの対応。
まあいいや、攻めあるのみよ)
制服のボタンを外し始めるらいち。
らいち「先輩って、童貞ッスか?」
悠「え? ど、ど、なにをいきなり」
らいち「その反応だと童貞っぽいッスね。じゃあ今日で卒業させ
てあげますよ♡」
悠「は……?」
困惑する悠。
それを教室のドア影からこっそりとメイが見ている。
メイ(やけに遅いと思ったら、らいちが仕掛けてたのか――)
シャツを脱ぎ、上の下着を外し始めるらいち。
だが、そのとき全方向から凄まじい光の筋が放たれる。
らいち「!?」
悠「うっ……西日かな、めちゃくちゃ眩しい」
らいち「ちょっと、ちゃんと見てください!」
悠「そ、そう言われても目を開けるのが難しいくらい眩しくて」
らいち(なによこの光……カーテンを……って)
らいちが教室の窓を見ると、そこにはカーテンを閉めるメイの姿
があった。
メイ「ざーんねん。カーテンを閉めても無駄。そもそも、反対側か
らも光ってるしね」
メイ(そもそも乳首を本屋に見せるには、好感度レベル
が5上がるごとに配られる券が必要。
性行為なんて以ての外、このレースに最短の道なんてない)
らいち「草場メイ――!」
悠「えっ、草場さんがいるの? これは違うんだ!」
メイ「わかってるよ。本屋はそういうやつじゃないって」
メイは悠の頭上を見る。彼の好感度があがったことを示す光と
共に音が鳴る。
メイ(このリアクションが正解。悠は自分を理解してる私に好感を
抱く。突発的だけど、状況を利用させてもらったわ、らいち)
らいち(やられた――! 私を引き立て役にして、信頼関係を
アピールしやがった!)
らいち「うぐ……ぐぐ……うわああん」
メイ「えっ――!?」
突然泣き始めるらいち。
メイ(何のつもり? 敗北を悟ったから? 意図がわからない)
らいち「先輩のことが好きだから、こういうことしなきゃ誰かに取
られると思っちゃったんですうー!」
メイ(!)
らいち「先輩、私のこと嫌いにならないでください……」
悠「そんな、嫌いになるなんて……慕ってくれる気持ちは嬉しい
けど、僕はまだ君のこと良く知らないしさ」
らいち「だったら、これから私のこともっと知ってくれますか?」
悠「うん。友達で良ければ」
らいち「ありがとうッス。先輩大好きっ」
悠の頭上で好感度が上昇したことを示す光。それも普段よりも
大きい光が現れる。
メイ(こいつ――! この劣勢で、逆にそれを認めたことでしおら
しさをアピールしやがった!
好きアピールは、好きが飽和して最後で押し負けるリスクが
あるから回避していた。だけど、決して弱い属性ではない。
雷鳥沢らいち、ダークホースになりうる――)
ランキング一位 草場メイ(-) 好感度120 レベル5
ランキング二位 女淵鳴美(-) 好感度65 レベル3
ランキング三位 柳ヶ瀬島虎(↓)好感度60 レベル3
ランキング四位 雷鳥沢らいち(↑)好感度36 レベル2
ランキング五位 古河ねるり(↓)好感度35 レベル2