行方克己『知音』を読んで

 行方克己は慶応大学文学部時代に富安風生、清崎敏郎に師事。1973年より慶應義塾中等部で30年以上にわたり教鞭をとる。1987年、句集『知音』で第11回俳人協会新人賞を受賞。1996年、同門の西村和子と俳句結社「知音」を創刊、共同で代表を務める。
 『俳人協会新人賞作品集第二集』に『知音』が収録されていたため読むことができた。

十五句抄
とどまりて霧の匂ひの濃きところ
水仙の葉の切先に風あそぶ
鴨の陣するする抜けて行きし鴨
冬木道すぐに引き返して来たる
虫の夜の知音知音と鳴けるかな
 →表題句。結社名の由来にもなった。知音は故事に由来し、親友という意味。和子と共同で結社を立ち上げたことにも通ずる。
かなぶんがふところに飛び込んで来し
猫ごゑの少年とゐて椎拾ふ
秋風やごとりと自動販売機
春雪の反乱めける水の上
春寒く榾焚けばひとなつかしく
船腹の絶壁なせり夏帽子
おでん煮ゆ男ばかりのたのしくて
ガラス戸に描かれてメリークリスマス
しやぼん玉吹きつつ風を連れありく
罐蹴りの子に春愁のなきにしも

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