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2021/08/05 夏の夜風に吹かれて散歩
この日も東京都心の最高気温の予報は35度。こうも暑いと出勤以外は外出が億劫になってしまう。休みの日に買い物に出掛けるのも、最近は夕方になってから。さすがに日が落ちると、幾分過ごしやすくなってくる。
夏は苦手だけれど、夏の夕は好きだ。鮮明さが薄暮の中で急速に色褪せていく感じがいいなと思った。幼いころは散歩に行く父に「待って!私も行く!」と言ってはよくついて行った。
子どもにとって夜道は心細いけれど、ちょっとのぞいてみたいもの。ちょうど、『鶴の恩返し』の機織り部屋のように。父と一緒なら安心して歩けた。
夕闇が迫る中、集合住宅の前を通りかかると、窓越しに家々の居間やダイニングが見えた。住宅密集地からは、煮込んだタマネギや焼き魚のにおいが漂ってきた。「うちのごはんは何だろうね?」と話しながら、とそぞろ歩きをしながら家路を急いだ。
夏はどこか開放的になる。夜景は雪景色と同じで、違うものに変えてしまう魔術がある。行きは何てことのない景色だったのに、帰りに通りかかると、橋の欄干の照明が点灯されるだけで、ロマンチックな雰囲気になる。他人との距離に細心の注意を払いながら、夏の夜、散歩を楽しんでいる。