【効果的な訪問リハビリ】ネガティブな利用者さんの行動を促す会話術
訪問リハビリの利用者さんの多くは、病気による障害が発生し、身体的な不自由や生活困難感などのストレスフルな状況となっています。
すると、障害に挑戦する自信や意欲が少なくなり、自ら行動することが難しくなり、現状に対してネガティブに考えてしまう方が多い印象です。
そのため、訪問利リハビリのセラピストは、このネガティブな利用者さんとの会話を通して行動を促す必要があります。
みなさんは、どのように関わりますか?
昔の私は、ネガティブな利用者さんをただただ励ましていましたが、ほとんど効果がなかったです。
そこで今回は、私が色々と試して最も効果的だった「メモリーバイアス」を考慮した会話術にて、ネガティブな利用者さんの行動を促す方法について紹介します!!
メモリーバイアスとネガティブな利用者さんの関係
「メモリーバイアス」とは、過去の記憶を思い出そうとすると最高だった出来事、もしくは最悪だった出来事のように両極端な記憶を思い出してしまう傾向になります。
例えば、常時歩行が不安定な利用者さんに対して、「今週は転びそうなことはありませんでしたか?」とネガティブな質問したとします。
すると、この利用者さんは今週で一番転びそうになった時の記憶=最悪の出来事が思い出されてしまい、「今週は、転びそうになることが多かったです」のように悲観的に答える可能性が高いです。
また、毎日自主トレーニングを行っている利用者さんに対して、「今週は、散歩でどれくらい歩けましたか?」とポジティブな質問をしたとします。
すると、この利用者さんは今週で一番長く歩けた時の記憶=最高の出来事が思い出されてしまい、「今週は、結構たくさん歩けました。大体2000歩くらいは歩いたと思います。」のように楽観的に答える可能性が高いです。
つまり、質問によって「メモリーバイアス」の影響を受けてしまい、客観的な事実を思い出すことが難しくなっています。
人間の記憶は、あまり当てにならんのです(泣)。
また、人間の脳は、は最高の出来事よりも最悪な出来事の方を記憶に残しやすいため、ふと頭をよぎるのは悪い出来事=トラウマであることがほとんどです。
そのため、「腰の具合はどうですか?」、「体調はどうですか?」のような抽象的な質問をしてしまうと、ネガティブな利用者さんであれば常に「調子が悪い」と答えてしまう傾向があります。
つまり、ネガティブな利用者さんの特徴は、常に最悪な出来事が脳裏によぎってしまうことになります。
最悪なことが脳裏によぎってしまうと、未来に対して悲観的に考えてしまいやすいため、行動が制限されてしまい、リハビリに対してもネガティブな態度を取りやすくなっています。
訪問リハビリのセラピストは、利用者さんとの何気ない会話から体調や生活状況の聴取を行いますが、「メモリーバイアス」を考慮した会話をしなければ、知らず知らずのうちに行動意欲を低下させてしまう可能性があります。
それでは、「メモリーバイアス」を考慮した会話とはどのようにするのでしょうか?
以下で詳しく解説します!!!
メモリーバイアスを考慮した会話術
ネガティブな利用者さんに対して、体調や生活状況などのアセスメントを会話で行う場合には、2つのポイントがあります。
①近い過去の出来事から聞いていく。
②ネガティブなことは3つ思い出してもらう。
それぞれについて紹介します。
①近い過去の出来事から聞いていく
この会話術は、主に体調や生活状況などの抽象的な質問をする時に活用します。
例えば、「今週は、食欲はありますか?」と質問するのではなく、「今日は朝ご飯を食べましたか?」のように具体的に質問していき、会話を掘り下げていきます。
セラピスト「今日は、朝ご飯を食べましたか?」
利用者さん「朝は少し食べました。」
セラピスト「そうですか。朝ご飯は食べたんですね。1日3食召し上がっていますか?」
利用者さん「そうですね。3食は我慢して食べてます。」
セラピスト「三食、食べているなら食欲は問題なしですね!便秘もないですか?」
上記のように会話を進めることで、食欲がある=良いことであるとしっかりと利用者さんに伝えることができ、ネガティブじゃない面に注意を向けやすいようにします。
②ネガティブなことは3つ思い出してもらう。
体調や生活状況についての会話が進んでくると、セラピストが心配していること=ネガティブな出来事についても聞くタイミングがやってきます。
その時には、3つ思い出してもらいます。
例えば、常時歩行が不安定な利用者さんに対して、転倒の有無や転倒しそうになった体験を質問する時には以下のようになります。
「今週に入って、転びそうだな感じた時を3つ思い出して教えてもらいたいです。例えば、夜のトイレに行く前にベッドから立った瞬間とか、リビングで振り返ろうとした時とか、何でもいいので3つありますか?」
3つもネガティブな出来事を思い出してもらうなんて、余計ネガティブな考えになってしまうと思うかもしれませんが、違うのです。
実は、抽象的な質問をして、最悪の出来事=最もネガティブな出来事を思い出す場合に比べて、3つのネガティブな出来事を思い出す場合の方が、最悪な出来事への注目度が低下することで、「メモリーバイアス」の悪影響が軽減されるからだと言われています(ハーバード大学の心理実験)。
つまり、未来に対して楽観的に考えやすくなるため、行動を起こしやすくなります。
まとめ
今回は、ネガティブな利用者さんの行動を促す会話術について紹介しました。
ネガティブな利用者さんは、「メモリーバイアス」の影響により常に最悪な出来事が脳裏によぎってしまう傾向があります。
そのため、未来に対して悲観的に考えやすく行動が制限されてしまうことで、リハビリに対してもネガティブな態度を取りやすくなっています。
ネガティブな利用者さんに対して、体調や生活状況などのアセスメントを会話で行う場合には、以下の2つのポイントを考慮し、最悪な出来事への注目度を下げるように進めていくことをおススメします。
【ポイント】
①近い過去の出来事から聞いていく。
②ネガティブなことは3つ思い出してもらう。
ネガティブな利用者さんとの会話を通して、未来に対して楽観的に考えやすくなるように関わることも、効果的なリハビリになると考えます!!!
是非、試してみてください!!
ネガティブな利用者さんとの効果的なコミュニケーションについては以下の記事も読んでみてほしいです!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。