【訪問リハビリ会話術】困難になった生活動作への挑戦を促すポイント2選!
訪問リハビリの利用者さんは、身体障害により今までスムーズに行えていた生活動作が困難になっています。
訪問リハビリでは、利用者さんが1人でも生活動作ができるようになるために、様々な運動や生活動作練習などを行っていきます。
しかし、困難になった生活動作とは、利用者さんにとって先延ばしにしてきた課題であり、諦めや不安を感じやすいため、挑戦に躊躇してしまう利用者さんが多い印象があります。
リハビリの運動は頑張れるけど、「実際に屋外歩行することは拒否」、「リハビリでできるようになった生活動作を実生活でやらない」、そんな利用者さんはいませんか?
そこで今回は、訪問リハビリの利用者さんが困難になった生活動作への挑戦を促すための会話術を紹介します。
挑戦を促すための会話術
訪問リハビリの利用者さんに挑戦を促すための会話術では、以下の2つのポイントがあります。
①成功までの過程のイメージ作り
②挑戦日の約束
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
成功までの過程のイメージ作り
困難になった生活動作は、利用者さん自身が対処することを先送りにした課題、つまり、「挑戦しても成功することが難しい」と考えてしまい、挑戦できていない可能性があります。
そのため、利用者さんが1人でできるようになる=成功までの過程をイメージできません。
そこで、会話術の1つ目のポイントでは、困難になった生活動作ができるようになるまでにクリアしていく小さな目標について事前に設定し、その都度、リハビリメニューの意義を説明ながらリハビリを進めていきましょう。
「えっ!?リハビリの短期目標と長期目標を立案し、説明するのは当たり前じゃん。」と思ったセラピストの方もいるのではないでしょうか?
ちょっと続きを聞いてほしいです。
多くの場合、利用者さんのニーズを聞いて、身体・認知機能を評価した結果を基に、セラピストが立案した目標=リハビリ成果だけでを伝えていないでしょうか?
例えば、「1か月後には手すりなしで立てるようになって、3か月には歩行器で歩けるようになります。一緒にリハビリを頑張りましょう!!!」
これでは、成功までの過程をイメージするためには不十分になります。
利用者さんが成功までの過程をイメージするためには、セラピストの評価結果、行うべき運動とその効果、運動による身体機能の向上に伴う動作中の身体変化(知覚)の順に説明し、利用者さんが将来にするであろう体験について共有しておくことが大事になります!!!
例えば、腰痛があり歩行が不安定で、閉じこもりがちになってしまった利用者さんがいたとします。
この利用者さんに対して、屋外歩行に挑戦してもらいたいとセラピストは考えました。
その時に、私は下記のように説明し、成功の過程についてイメージ作りします。
「腰痛と歩くとふらつく原因の一つは、お尻の横の筋肉の硬さにより、力が入りにくくなっていることだと考えます。」
「リハビリで、お尻の横の筋肉を柔らかくしてから、自然と力が入るように立って運動をします。すると、太ももに力を入れなくても立ってられるようになってきます。」
「徐々に、お尻の横の筋肉の力がついてくると、足に強く体重をかけても踏ん張りがきくようになるため、歩いてもふらつきが減ってくると思います。」
「そして、歩く運動を再開することで、不安な気持ちも減り、歩くスピードが少しずつ速くなることで、さらにふらつかなくなりますよ。」
時系列に起こり得る身体変化=未来について、説明することが大事になると考えます!
挑戦日の約束
利用者さんが積極的にリハビリを行い、順調にリハビリ成果が出てくると、「そろそろ外歩きができそうになったから、やってみませんか?」のように、セラピストから急にお誘いすることが多いと思います。
この方法でも悪くないのですが、1度断られてしまうと、ドンドン挑戦までの道のりが遠くなってしまいます。
また、私自身は急なお誘いを断られることが多かったです(泣)。
そのため、困難になった生活動作を挑戦する日は、事前に約束しておくことがおススメになります。
その理由について、解説します。
人間の心理には、近い未来の課題に対しては価値を高いと感じ、遠い未来の課題に対しては価値を低く感じるというものがあります。
つまり、目の前の報酬には手が伸びてしまうが、すぐ手に入らない報酬は比較的我慢できるというものになります。
例えば、夏までにダイエットしてスリムな体になりたいと考えた場合。
これは遠い未来の課題と捉えられてしまうため、冬から筋トレや食事管理を始める事に価値を感じられず、冬の間はついつい暴飲暴食をしてしまいます。
結局春くらいから焦って痩せようと頑張っても夏には思ったほどの成果が得られずに落ち込んでしまいます。
その結果、ダイエットに対して苦手意識を持ってしまい、ダイエットへの再挑戦が難しくなります。
しかし、この人間の心理は、リハビリに応用できます。
先程の例のように、未来に対して約束をしておくと、約束の時期が近づくことで挑戦を始めることができるのです。
そのため、困難になった生活動作に挑戦する日は、リハビリでの成功の過程をイメージしてもらうための説明をしている時に、約束しておくことをおススメします!
まとめ
今回は、訪問リハビリの利用者さんが困難になった生活動作への挑戦を促すための会話術を紹介しました。
この会話術でのポイントは、2つになります。
①
困難になった動作ができるようになることが難しすぎると考えているため、成功までの過程をイメージ作りできるように、リハビリをすることで起こり得る身体変化=未来について、時系列に説明する。
②
困難になった生活動作は不安が強いために、いざ挑戦できる準備が整っても心の準備ができておらず、急にお誘いしても断られやすい。人間は、未来の約束には価値を低く見積もり、簡単に承諾しやすいため、挑戦日を事前に約束しておく。
挑戦から得られた失敗は学び、成功は報酬になります。
セラピストは、リハビリを通して様々な挑戦を利用者さんに促していければ素敵だと思います。
最後まで、読んでいただき、ありがとうございました。
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