第4話 百十九円のケーキ
久しぶりの友人二人組に出くわす。その日は私の誕生日だったので、奢ってもらうことになった。
ケーキ屋さんに行って百十九円のケーキを買う。カウンターにイチゴクリームのクラッカーが置いてあったので勝手に食べる。よく見ると値札が貼ってありクラッカーは百二十円だった。
席に座って持参して来たご飯を食べていると店員に怒られた。店の奥から店長が急いで出て来て、先ほどのクラッカーはサービス品だということを店員と揉めている。どうやら怒られたのはご飯を食べていたことではなく、クラッカーを試食したことだったらしい。
「さっきのはサービス品だ。」
店長は私の所に来てお金を返すと言ってくれた。
「すみません、あめいろのものはないですか?」
私の前に座っていた芸能人風の男が唐突に聞いてきた。
「あなたは作詞のし過ぎだ。」
私はその男にそう言った。彼は中村という名前で、以前に武蔵美に来て、多面体(立方体)の作品を見たらしい。私がそこの学生だということを言うと、
「あなた大学生っぽい。」
と言って帰っていった。
彼は三人兄弟の長男で、テレビで見るよりも大したことのない人であった。
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