21+1の希望
NIPTという出生前診断の検査を受けてから、ドクターに産む意思を伝え
私たち夫婦は息子が持って生まれてくる染色体について調べ始めた。
細かなことは割愛するが、染色体が一本多いことで起こる弊害(と言っていいのだろうか)、障害、寿命の問題、身体的なリスク、成長、ことば、
新生児期のケアや食事、排せつの問題エトセトラ。
ダウン症の兄弟の話を扱った映画「弟は僕のヒーロー」の中で、主人公の弟(ダウン症がある)の両親が「作業療法に理学療法、音楽療法、グルテンアレルギーに各種検査、療育、病院…あれもこれもやらなくちゃ!」というようなことを言って頭を抱えるシーンがあるが(正確なセリフは思い出せないが、そんなような内容だったと思う)、まさにそんな感じだ。
とにかくいろいろと調べていく中で、さまざまな問題が待ち受けているであろうことは理解できた。
けれどその中で、思ったことがある。
それは
息子は私たちが揉まれてきた人生の「競争」というもので競い合わなくてもいい、ということ。
それはそれで何かしらある、競争意識は生まれるんじゃないか…?
実際は、そうかもしれない。
でもその時の私たちは、正直にそう思った。
もちろんその分、やらなくてはならないことは山のようにあり、
息子と私たち家族の道もいばらの道であることを数年かけて知ることになるのだが、間違いなく、息子はスタート地点ではすでにその「競争」からは戦線を離脱している。
21番目の染色体が1本多いという事実が
息子にとってハンデではなく生きづらい世の中の
「希望」
になるかもしれない。
すべてが手探りの中、私たちにはそう思えた。
そしてその希望はいまも持ち続けている。