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今までもこれからも、私は形を変えて貧困問題と関わり続けたい|女子大生100人インタビュー#2

ー大学を1年間休学してフィリピンへ行って、私の価値観が大きく揺らいだ。

自分の経験とか知識不足、国際問題の複雑さを痛感して、世界の仕組みをもっと知りたいって、やっぱり私はこれが学びたいと思ってるんだって。他の人より2年間も学生でいる時間を長くして大学院に進学したとしても、いい就職ができるとは限らない。だけど、自分がやりたい領域に対してアプローチするためには大学院に行って勉強してやっとそのラインに立てるんじゃないか、って思うの。


Hatachi Communityが運営する女子大生100人インタビュー第2弾は小学生の時の体験をきっかけに貧困問題に寄り添う女子大生にインタビューしました。国際協力に関心のある方、「今のまま本当に就活してもいいのかな?」と悩んでいる大学生に是非読んでほしい記事になっています。

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|田口慈江さん
明治学院大学法学部政治学科3年
*1998年生まれ/岩手県出身
*好きなもの:映画を観ること。2年生からフラダンスを始めました。
*よく見るFBページ:VOGUE JAPANの動画が好き!
*大切にしたいことや価値観:自分の好奇心に素直になること


ー小学生の時に出会った「貧困」という新しい世界

小学生の時に、校外学習で日本ユニセフ協会の事務所に行ったことがありました。
その時に見た紛争で戦う子ども達の写真に衝撃を受けました。今では、それが今の私の関心を作るきっかけの一つとなっています。

小学校はカトリックの学校だったので、講演会でも紛争の現場で活躍するシスターの方がお話をしてくださる機会があり、自分と同い年の子どもや私よりも小さい子どもたちが紛争下に置かれているということを、実際に現場で活躍する人の話を聞いて改めて実感しました。私が校外学習でみた子どもたちの写真がリアルにあることを自分の中で感じる機会になったからです。そして、「どうしてこういう問題が起きてしまってるんだろう」と当時幼いながらに思い、この衝撃を忘れられない自分がいました。この体験は将来の夢にも影響し、中学校・高校の課外授業で自分の関心のある仕事について考えた時は、国連職員・ユニセフ・外交官の職業を調べていました。大学受験の際には、国際協力や外交の分野で活躍している人たちの経歴を調べていくうちに、自分が将来就きたいフィールドで活躍する人たちのバックグラウンドには国際政治学を学んでいることが多かったため、大学では政治学を勉強しよう、と決めました。


ー大学での政治学の現実と違和感

推薦で受験を考えていましたが、挑戦したい思いが強く一般受験で念願の政治学科に合格。入学できたものの、1年次は必修科目が多かったためどこか現実を見たという感じがありました。今、目の前で学んでいることから現場で実際に活躍するためにはどうすればいいんだろうと、自分の憧れのキャリアにたどり着くまでに自分の現在地からどのような道を辿ればいいのか、ギャップを感じてしまったからです。
そんな中、小学校の時の衝撃的な体験から国際協力を追いかけてきたけれど「私現地に行ったことないじゃん」と思い、大学のプログラムを利用して1年生の夏にタイへ足を運ぶことにしました。

ータイで出会った孤児院の子どもたちとその背景

今まで調べたりとか人伝てでしか知ることのなかった世界、私がタイで目の当たりにした、その光景に衝撃を受けました。

タイの孤児院で出会った、
元ストリートチルドレンの子どもたち
まだ小さいのに虫歯で歯が真っ黒な子ども
人間の基盤になっている生活ができていない子どもたちの存在を目の当たりにしました。

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Alternative Leadership Program in Indonesia(日本財団主催)で現地学生と貧困地帯の子どもたちにアクティビティを企画。

今まで見たり聞いたりした「貧困」は本当に一部分だったこと、この問題の周りには環境や独特な空気感が存在しているのを自分の肌で感じました。これは小学校の時に見た一枚の写真の想像を超えるものでした。現地の子どもたちの現状や街の様子をみて受けた衝撃は大きかったけれど、自分が何かしなきゃいけない、同じ世界に生きてるのにこういう現状に対して何かしなくちゃ、ということしか考えられなくなりました。このタイでの体験から国際協力に対しての関心がさらに上がることになりました。

一方で日本に帰ってきてからは、自分のダメな癖でこの問題へ取り組むことを後回しにしてしまいました。それでも何か大学でできないかな、と思った時に、後に企画リーダーまで任されることになった海外プログラム事業部と出会いました。
「ここだったら自分の興味分野を深められるし、自分と同じ関心のある子が集まってる、1人じゃなくてみんなとなら何かできるかも」と思いここで活動をしていくことを決めました。

ー国際ガールズ・デーで知った”国際協力”の多様性

国際ガールズ・デーは国連が定める国際デーの一つで、「女の子の権利」や「女の子のエンパワーメント」の促進を広く国際社会に呼びかける日(10月11日)。

国際ガールズ・デーに合わせてイベントを実施するにあたり、その企画リーダーを務めることになりました。「女の子の権利」の促進を世界に発信するこの日を学内の学生にまずは知ってもらうことを目的としながら、その上で学生が気軽にボランティアや国際協力をできるきっかけ作りをしたいと考えていました。実際に、学内のカフェでピンクレモネード販売を行い、その売上金の一部を寄付するという企画を行いました。(実際に朝日新聞に掲載された記事

この機会は私にとって、一個の問題を解決するためには、多くの人が関心を持って行動を起こしていくことで解消に繋がることを実感した瞬間でした。
この経験から、知ることの大切さと若い人たちに共感ベースで伝えていくことをやりたいと思いました。そう思えるようになったのも、学科の友達とのコミュニケーションがあったおかげです。このガールズウィーク期間中、思った以上に友達が協力してくれた際、「少しは関心あったけど一歩この問題に踏み込むのが怖かった。大きすぎて学生の自分がどこから踏み込んでいいのかわからなかった」と話してくれて、自分とは全く違う考え方もあってそこから踏み出してくれる人がいればいいなと思いました。私自身、このきっかけを作ることができた実感があり、それと同時に国際協力への関わり方の幅が広がりました。

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国際ガールズ・ウィークで一緒に活動した学生団体メンバーとの写真。手に持っているのが実際に販売したレモネードでロゴも0から手作りしました。

でもやっぱり現地で自分ができることって何があるんだろうって、国際協力に関して知ってるようで知らない自分がいて。それでモヤっとしていた時に1年間のフィリピン留学の話を知人から教えてもらいました。

留学は半年間は法務省のインターン、残りの半年は現地の大学で勉強できるプログラムで、その合間にインターンやボランティアを自由にできるというものでした。行きたいと思ったものの、その留学プログラムは大学の認定ではないため、休学が必要。だけど自分の中で「休学か、1学年繰り下がるのか。でも大丈夫なんとかなる」と全く迷わずに1年間の休学もすぐに決断し、応募を決めました。
2019年1月に合格通知が来て、3月にフィリピンへ。

ー休学して見ることができたフィリピンでの景色

実際に最初の半年間は、法務省の保護観察局でインターンをしました。聞きなれないかもしれませんが、犯罪を犯して刑務所から出てきて保護観察下にある人(18歳以上)を更生させるためにプログラムを提供しているところです。プログラムの一環でセラピックコミュニティや家庭訪問に取り組みながら、気づいたことがありました。法学部といいながら、全く踏み込んでいなかった領域で取り組みを手伝ってみて、犯罪と貧困問題の繋がりがあることです。大学を休学してここに来たからには与えられたプログラム通りにやるのではなく、それを生かして自分が知りたいこと、やってみたいことを何かやらなきゃという気持ちがありました。そこで、プログラム受講者にアンケートを実施したい、と提案し、学歴や家族構成、両親の職業などを調査した結果、犯罪と貧困、格差問題の関係性が統計からも明らかになることになり、自分の中での仮説が腑に落ちた瞬間でした。

さらに子どもたちとも関わりたいとお願いし、少年院に実際に行って子ども達と触れ合う時間を作ることができました。しかし、両親が刑務所にいる子どもや現地で蔓延っている負のサイクルをすごくひしひしと感じる瞬間であり、私が取り組みたい貧困問題の複雑さ、深刻さを痛感した瞬間でもありました。

その後、プログラムを経て実際に更生している人にインタビューをする機会がありました。そのインタビューを通じて、法務省のスタッフがどれほどこのプログラムに尽力しているのかが分かり、地道なことが目の前の人のように更生できることに繋がるんだ、と実感しました。私の中で、人と人との繋がりや関わりで見えてきたものがありました。


ー自分の理想と現実とのギャップといかに向き合うのか

ここまでの話を聞いていると、かなり好奇心旺盛というかチャレンジしたい気持ちの強い人なんだろうなぁ、と思われるかもしれないんですけど、この好奇心が時には自分の自己肯定感を下げる厄介なもので。
きっとこのチャレンジ精神は長所なんだけど、あれもこれもやってみて自分でコントロールできない時期もあって、周りの人にも迷惑かけた時もありました。そういう時に、自分自身で作り出す”私”への理想とこの目の前にある現実とのギャップがすごくて、自己肯定感も下がったりしました。だから今は少しずつだけど自分のネガティブな感情と向き合うために「やりたい」と思うことがたくさんあったとしても、今までのその経験からじっくりと考えたり、悩みながら新しいことに手を出してみるようにしています。

私の性格上、人と話すことで自分のモヤモヤが消化されることが多くてフィリピン留学中に通っていた大学で本当にいろんな人と出会って、その出会いのおかげで前よりは今の自分に自信を持てるようになった気がします。


ー 人との繋がりによる自分の可能性/私のターニングポイント

フィリピンに来てから、「これも知りたい、やりたい。この1年間を120パーセントで駆け抜けてやる」ってすごくハングリー精神が強くて、だけどそれに実際に答えてくれる、自分のやりたいの道を作ってくれる人たちが有難いことに自分の周りにいました。だから、今自分の周りにいる人たちの力を少しずつ借りて、ここでなら自分のやりたいことが実現できるんじゃないかって。

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現地の大学で出会ったクラスメイトとの写真

実際に現地の大学で出会ったクラスメイトは年齢や国籍、バックグラウンドも様々で、いろんな生き方があるんだな、って自分の中でどこか腑に落ちた瞬間がありました。自分の中で届かない理想があることが悪いことじゃないし、それを目標とするのもいいけど理想は理想だし今の自分もちゃんと認めてあげる、というか。自分をこれまで縛っていたものから逃げる方法を知ったんだと思います。大学に入学するまでも、将来の目標のために今何をするべきかを全部逆算して考えていて、逆算して計画を立てるのは好きなんだけれど、それだけに一生懸命になっている自分がいました。だけど、「今の自分に素直になって今ここで自分がやりたいことをまずはやってみよう」って現地の大学で出会った人たちとのコミュニケーションを通じて思えるようになりました。

ー「世界の仕組みをもっと知りたい」日本で私がやりたいこと

フィリピンでの1年間は、決まっているプログラムに+αで自分で探したインターンをしてみたり、自分が何をしても根本的な解決になってないっていう挫折もあったけれど、今できることをまずは第一に考える。それが大事だとこの1年間を振り返って思っています。一方で自分の経験とか知識不足、国際問題の複雑さを痛感した1年間でもありました。大学はあと2年間ありますが、この経験から卒業後は世界の仕組みをもっと知るために大学院へ行きたいと今は強く思っています。
大学院に行ったって、私が憧れているキャリアになれる保証はない。だけど、自分がやりたい領域に対してアプローチするためには大学院に行って勉強してやっとそのラインに立てるんじゃないか、そう思うので私は卒業後の2年間でさらに学びを深めたいと思います。

「大学院に行くのはお金もかかるし、他の友達よりも2年間社会に出ることが遅くなる。私の場合は休学しているから3年。」そうやってまた私が迷ってしまった時には、フィリピンで出会った人を思い出して、自分のやりたいことができる環境が許されているのであれば、やってみようと、そう自分が言えるのも休学を選択していなかったら出会えなかった景色や人のおかげです。

社会にいる”自分”が「就活就活」って言ってる気がするけど、気持ちが揺らがないうちに決断したいと思って、自分の学びたい思いがあるのに決まったレールに乗って「とりあえず就活」はしたくない。


ーこれからも、私は形を変えて貧困問題と関わり続けたい

フィリピンで見てきた課題に一生関わり続けるのか、と思った時に「私にその覚悟あるのか」ってなった時がありました。だけど、国際協力って言った時に色んな関わり方があるのも大学2年間で見てきました。大学の中でレモネードを販売して、売上金の一部を寄付するのも、募金だってその一つ。

そう考えた時に、大学院へ行って「私がやりたいこと違うな」って思って変わってもそれでもいいと思っています。それは貧困問題への関わり方が変わるだけであって、それでもいいんじゃないって。私はそういうスタンスでいこうと思います。

私は、世界で「貧困」という状態が存在する限り、その人たちにとって寄り添い続け、常にその一員としてありたい。形や関わり方が変わり続けても、私は行きついた場で動き続けるんだろうな、と今は感じています。目の前のことに対してやらないではいられない性格なので(笑)

ー私が10年後ありたい姿

私の名前の由来は、慈しみの心を持って世の中をよくする女性になってほしいという意味でつけられました。誰かのためになりたい、と思いこれまで取り組みをしてきましたが、ボランティアや国際協力は自分1人じゃなくて誰かがいたから私もできたこと。それで私の物語は成り立っているし、私のおかれた環境がどこなのかが私にとってはすごく重要です。

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10年後もやっぱり自分のやりたいことに素直でありたいと思っています。
そして、他者から頼られる存在で居られると嬉しいな、と。

|この記事を運営するHatachi Community について

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「私たちの言葉をもって話そう。私たちのこと。」 

20歳を生きる全ての女の子へ、
人には様々な物語があり、その中にはたくさんの選択や決断があります。
特に20歳前後の私たちにとっては選択肢がたくさんあり、それを広げる事業もたくさんあることが当たり前のようになってきています。

一方で、選択肢がたくさんあったとしても
その先には絶対に自分が選ばなくてはいけない時がきます。

その時に必要になるのが、「様々な選択肢の中から自分の納得する選択を選ぶ力」だと考えています。選ぶ力を身につけるためには自分自身と向き合う時間が必要です。自分が納得する選択肢は何か、もしかしたら今の選択肢の中にはないのかもしれない。

私は何がしたいのか、どうありたいのか、それに対して不安なことや悩んでいること、たくさんあるのではないでしょうか。その時にこのインタビュー記事がその一助になるのではないかと考えています。

このインタビューでは”女の子”と一括りにせず
1人ひとりがありたい姿を素直に言葉にできるように、
私たちの言葉をもって伝える場を提供していきます。

Hatachi Communityは女子大生の多様性やグラデーションを発信していく
みなさんのためのプラットフォームです。
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そしてこの記事が一つの”贈り物”として、
女の子の今日の一歩を後押しできますように。

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Hatachi Community 代表
かなつな ななみ

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