物語が行き交う場所
「断片的なものの社会学」
社会学者の岸政彦さんの著書を読んでいる。ワタシが本を手に取るときは一目惚れが多い。この著書に関しては「断片的なもの」という言葉に惹かれて読みはじめた。社会学を正しく理解している訳ではないが、あたたかな学問なんだろうなと思っている。
この著書は社会学を語るというよりエッセイに近いけれど、とにかく脳みそに刺さってくる言葉が多くてワタシはたくさんメモを残している。そのうちの一つがこれ↓
私のなかに時間が流れる、ということは、私が何かを感じ続けるということだ。
・・・
今日、ワタシが勤める薬局に来たお客さんが
「歳はとりたくないねぇ」
と、10人中7人ぐらいはつい口にする定形文をこぼした。
「そんなこと言わないでくださいよー」
という薄っぺらい返しで誤魔化すことも多いのだが、今日は例のフレーズが頭に残っていたからなのか、
「歳を重ねていくには苦痛が伴いますからね」
と言葉にした。そうしたら、
「人生には切符があるっていうからね、切符が有効なうちは生きてられるんだよ」
あぁ。こちらが御礼を言いたい良い言葉が返って来た。この場合の切符は青春18きっぷみたいな自由に使えるものをいうんだと思う。切符という表現は娘さんが励ましてくれるときのフレーズなんだとか。
良くも悪くも家族の縮図みたいなものが垣間見えることが多い仕事だけれども、ワタシは今の仕事を気に入っている。いろんな物語を携えた人たちが行き交う場に身を置いて、傍観したり、励ましたり、共に喜んだり悲しんだり。ワタシの役目は薬学の知識を身につけて物語に寄り添うことなんだろうと思う。たとえ、知識すら意味のない場面に遭遇することがあったとしても。