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大岡越前と落語にみる裁きの妙

今週、元SMAPの中居正広氏が引退を発表しました。それまでの報道も踏まえて「示談」とは何だったのか、法律を超越し、世論が審判を下さす世の中になったこと、そんなことを考える中で、落語に登場する「裁き」というテーマが浮かびました。その中でも、知名度の高い「大岡越前」を軸に、落語に描かれる裁きの妙について見ていきたいと思います。

大岡越前とは何者か

大岡越前こと大岡忠相(おおおかただすけ、1677年-1752年)は、江戸時代中期の幕臣であり、江戸町奉行として名を馳せました。彼は、公正かつ柔軟な裁きで庶民からの信頼を集め、「名奉行」として後世に語り継がれています。

忠相は、徳川吉宗の側近として、享保の改革にも関与し、火付盗賊改の制度改革や、町火消(いろは四十八組)の創設に尽力しました。町奉行としての職務においては、裁判を単なる法律の適用ではなく、民衆の生活を考慮しながら判断する姿勢が特徴的でした。

その名裁きの数々は、のちに講談や時代劇で語り継がれ、さらには落語の題材としても取り上げられています。

落語における大岡裁き

落語の世界では、「大岡裁き」として知られる裁判エピソードがいくつかあります。その中でも最も有名な話のひとつが「三方一両損」です。

三方一両損(さんぽういちりょうぞん)

この話は、善意の行き違いが生む問題を大岡越前が見事に解決する噺です。

ある日、ある町人が一両を拾います。彼は「これは自分のお金ではない」と思い、落とし主を探し出して返そうとします。しかし、落とし主は「一度拾われたお金はもう自分のものではない」と受け取りを拒否します。双方が互いに譲らず困っているところに、大岡越前が登場します。

大岡は、「では、この一両を私が預かる。そして、お前たち二人とも一両損したことにしよう。私も仲裁の手間で損をしたから、三方一両損だ」と、誰も得をせず、誰も損をしない形で解決します。

この裁きは、法的な厳密さよりも、関係者全員の納得感を優先する大岡越前らしい柔軟な判断として語り継がれています。

ビジネスに応用できる「大岡裁き」の考え方

現代のビジネスの世界でも、対立やトラブルは避けられません。その際、大岡裁きのような「関係者全員が納得できる解決策」を模索することが重要になります。

例えば、

  • 利害が対立する交渉: 一方が100%勝ち、一方が100%負ける交渉ではなく、「Win-Win」や「三方良し」の視点で解決策を探る。

  • 部下のトラブル対応: 部下同士の意見対立では、どちらかの肩を持つのではなく、互いに納得できる落としどころを見つける。

  • クレーム対応: 法的な対応だけでなく、顧客の感情や企業の信頼関係を重視した解決策を考える。

このように、現代のマネジメントにも通じる大岡裁きの考え方は、今なお学ぶべき価値があります。

まとめ

大岡越前の裁きは、単なる法の適用にとどまらず、人情や状況に応じた柔軟な判断を重視する点に特徴があります。その精神は、現代のビジネスシーンにも通じるものであり、交渉やトラブル対応において参考にすべき考え方といえるでしょう。

落語を通じて学ぶことで、難しい問題をユーモアと知恵で解決する視点を養うことができます。今後も、落語に描かれる知恵や工夫をビジネスの視点から考察していきたいと思います。

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