ワインバーがある家具ショップ
こんにちは、コーイチです。
アメリカの高級家具の製造・販売を手がける RH(Restoration Hardware)(リストレーション・ハードウェア)という会社をご存知でしょうか。
高級家具でありながら、レストラン、ホテル、住宅なども行い、急成長しているこの会社を見ていき、日本の家具メーカーもこのような業態で成功することが出来るのか考えていきたいと思います。
1.RH (Restoration Hardware)とは
(出典:IT'S ELLE youtubeより)
RHは、旧社名「Restoration = 復元」+ 「Hardware = 金物」が示す通り、ハードウェア・ストア(金物屋)として1979年カリフォルニア州ユーレカに設立されました。
創設者ステファン・ゴードン氏は、アンティークのビクトリア調建築の家をリストアした際に、家を修理・修繕する部品の入手が困難となって来ていることに気がつき、復元のための金物や備品を扱う店舗を作ったのが始まりということです。
1980年に「Restoration Hardware」を設立しました。2001年には、現在のCEO兼会長であるゲイリー・フリードマン氏によって、一流家具ブランドに転向し、2017年に名称を「RH」に変更しました。
1998年に上場し、当時ゴードンと彼の会社は47店舗を運営していました。
このチェーンは急速に拡大し、その年の終わりには総店舗数が65に達し、その後も拡大を続け、2001年には31州で100店舗を展開しました。
2010年9月、RHは "高級化 "を目的とした大きな転換を行いました。「Pottery Barn」のような競合他社との差別化を図るために、より高い価格帯の家具ギャラリーアイテムに注力し始めたのです。
当時、サンフランシスコ・クロニクル紙は、RHが他の小売業者とは異なる重要な戦略のひとつとして、「商品の選択する目」と「すべてを自社でデザインすることを主とする競合他社とは全く異なるモデルを構築している」と報じました。
実際、RHのインハウスデザイナーは1名のみで、自分たちが好きな特定のアーティストを見つけ、彼らの作品をキュレーションし販売しています。
またRH社は、アマゾンやコストコのようにメンバーシップ制をビジネスに組みこんでおり、年会費100USDのメンバーシップに参加すると、日本円で約30万円するクイーンベッドが25%ほど割安で購入できるようになります。
メンバーシップ制により、消費者の囲いこみと安定したサブスクリプション収益を確保できる仕組みにしています。
2. ブランドライン展開
(出典:Restoration Hardware youtubeより)
RHは、リッツカールトン、ハイアット、フォーシーズンズやラルフローレンなどをはじめとする高級ブランドや、ラグジュアリーな空間スペースを演出する高級家具ブランドで、時代を超越した独自の視点とイメージを高品質なデザインで提供しています。
RHの取り扱い商品は、ラグジュアリーライフスタイルの家具、照明、テキスタイル、ラグ、バスウェア、インテリア、アウトドア、ベビー、キッズ、ティーン向けまでと幅広く、各コレクションはシーズンごとに世界で最も有名なデザイナーによって生み出されています。
そして、ターゲットに合わせいくつかのブランドラインを展開しています。
①RH MODERN
通常のRHの製品よりもモダンなデザインを数多く展開するラインで、よりモダンで洗練された空間を演出する製品を揃えています。
②RH TEEN
ティーン向けの製品を展開するラインとなります。しかし、ティーンだけでなく幅広い世代や空間に使用できる製品が非常に多く、大人ごころをくすぐる製品が溢れています。
③RH BABY & CHILD
ベビーやキッズ達向けの製品を展開するラインで、どの製品デザインも洗練されており、子どもたちが使用している空間を創造するだけで、優しい気持ちになってしまう製品を数多く展開しています。
その展開する製品数は非常に多く、インテリアや家具好きな方には非常に魅力溢れる製品ばかりだと思います。
残念ながらRHは、日本国内での展開はなく、アメリカ・カナダ以外への直接発送は行なっていないのが現状です。
国内では、輸入建材を行っている株式会社レージェンシーを経由して、RHの製品の日本への発送が可能となっています。
3.Boston Flagship
(出典:Restoration Hardware youtubeより)
2013年に2年間の計画と大規模な改装を経て、「RH」として新たに生まれ変わったボストンの旗艦店が、1864年に建てられた歴史的建造物の中にオープンしました。
20年以上前、ボストンのバックベイ地区を散歩していたゲイリー・フリードマン氏はバークレーストリートの公園のような一画に建つ、赤レンガとブラウンストーンのネオクラシカルな建物に魅了されました。
2001年にCEOとして入社したRHの名誉会長に就任したフリードマンは、ボストンの新しい旗艦店の場所を探していたとき、この建物が利用可能であることを知り、すぐに購入したとのことです。
南北戦争中に建てられたこの建物を最新の状態にし、RHの新しい店舗ビジョンに適合させることは、15ヶ月間の改修工事を必要とする記念碑的な事業となりました。
外観は、本当の意味での歴史的な修復となり、内部はほぼ完全に解体し、可能な限りオリジナルの内装に近づけました。
美術館のようなスケールの部屋は、ドラマチックな舞台である一方で、家庭用家具を展示するには難しい問題がありましたが、約1年かけて芸術的なヴィネット*をデザインし、店舗として完成させました。
*ヴィネット:小型の立体模型。ジオラマの小規模のもの。
40,000平方フィートのこの「RH Design Gallery」は、拡大を続けるRHの最大の拠点で、中国製磁器の食器やベルギー製のリネンなどのテーブルトップ製品、RHが「好奇心の対象」と呼ぶ製品(建築物の破片、鹿の角のオブジェ、iPod対応の再生Victrolas)などの商品カテゴリーを追加してきました。
また、地下1階から地上4階までのフロアには、東海岸では初となるフラワーショップと、ベビー&チャイルドコレクションの専用エリアが設けられており、小さなサイズの革製のチェスターフィールドやアームチェアが置かれています。
RH社が家庭用品メーカーから本格的なライフスタイルブランドへと進化したことを示すのが、本館の最上階にあるワインバーと4つのクラブルームの存在です。
ビリヤード台が設置されたビリヤードラウンジ、テレビでクラシック映画を上映するシネマルーム、ビンテージ小説やデザイン本が並ぶ魅力的なライブラリー、モータウンやロックンロールの記念品に囲まれた100年前のバーでクラフトビールを提供するパブなどになります。
クラブルームは、パリをテーマにした「コンサバトリー&パーク」と同じフロアにあり、屋外用の家具がオリーブの人工木や高さ24フィートのエッフェル塔のスチール製レプリカの間に設置されています。
RHの次世代デザインギャラリーは、ショッピング体験を再定義、再考しており、住宅と小売、屋内と屋外、物理とデジタルの境界線を曖昧にして、店舗よりも家庭的な空間の雰囲気を作り、新しい生き方を提供しているギャラリーになっています。
4.住宅からホテル開発まで
(出典:Restoration Hardware youtubeより)
RHの2021年第2四半期決算は、最終利益が過去最高を更新しました。
RHはこれまでに、広大な「ギャラリーストア」を続々とオープンさせたり、 ホテルや住宅事業に進出したりするなど、“ラグジュアリー帝国”の構築に向けた野心的な計画を進めています。
また、高級小売店にふさわしい営業利益率を追求しており、2017年の7%、2019年の14.3%に続き、2020年は48.8%と過去最高を達成しました。
フリードマンはインタビューで、自社の最近の成長は「コロナとは関係がない」と述べ、パンデミック中の消費動向は成長の一つの背景にすぎないと強調しています。また、会社は「大きな、組織的な変化を起こそうとしている」と言っています。
フリードマンが業績向上の理由として挙げるのは、正規価格の家具販売を増やし、アウトレットでの大幅な値引き品の販売を減らすといった、長期的な対策やサプライチェーンの変更にも取り組んでおり、複数のメーカーと直接関係を作っているといいます。
「ギャラリーストア」は、2020年6月にノースカロライナ州シャーロット、7月にサンフランシスコと、引き続き出店を続けています。2021年は初めて米国外にも進出し、その後、パリやロンドン、英イングランドの郊外などでの出店も計画しています。
また、マンハッタンの「ゲストハウス」の開業予定時期はコロナ禍の影響により遅れているようです。
5.最後に
店舗にEコマースでは実現できない消費体験を与え続けていることがRHの最大の強みなのではないかと思います。
またメンバーシップ制で富裕層を囲いこみ、サブスクリプションで安定した収益を確保するビジネスモデルも強みかと思います。
ボストンコンサルティンググループの調べによると、世界の富裕層(金融資産100万ドル以上)の2/3はアメリカに住んでいます。
そしてアメリカの成人人口の5.9%が富裕層という調査結果からも、
アメリカには富裕層向けの商品・サービスを余裕をもって消費できるマーケットがあると考えられます。
一方、日本の富裕層は成人人口の約2.9%程で、アメリカの半分以下となりますが、RHのような会社が出来てもおかしくはないマーケットではないかと思います。
昔の大塚家具が高級路線、会員制という点で、少しだけ似ているのかもしれませんが、旧態依然の経営や長いデフレにより、淘汰されてきました。
また、無印良品がレストランやホテル、住宅なども手掛けており、ターゲットは全く違いますが、比較的似ているのかと思います。
今後、日本の景気が上昇していけば、このようなラグジュアリーな業態も出てくるのかと思いますが、現時点では、カジュアル路線で消費体験が出来る業態は出来てくるかなと思います。
今回も最後まで見ていただき、ありがとうございました。 よろしければスキ、フォロー、サポートのほどよろしくお願いいたします。