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スニーカーを再販する店舗
こんにちは、コーイチです。
「ファッション」という言葉には、常に「新しい」ものが連想されます。
しかし今日、「新しい」が意味するものの定義は変化しています。
中古品やヴィンテージファッション、リセールマーケットは長い間人気を博してきました。
今回は、スニーカーの再販を専門とする小売業者で、スニーカーのリセールストア、そしてマーケットプレイスである「Stadium Goods(スタジアム・グッズ)」を見ていき、このようなスニーカー再販ビジネスが今後も増加していくのか考えたいと思います。
1. Stadium Goodsとは
(出典:HYPEBEAST youtubeより)
高級スニーカーの再販のリーディングカンパニーになることを目指し、「Stadium Goods」は2015年にジョン・マクフィーターズとジェド・スティラーによって共同設立し、ForerunnerVenturesとCherninGroupから460万ドルのベンチャー資金を調達しました。
「Stadium Goods」を設立する前、マクフィーターズは、ボストン大学の広告学科を卒業し、2009年にフォーダム大学でMBAを取得した後、
「Flight Club」のビジネス開発およびeコマース担当副社長を務め、「Team Epiphany」デジタルディレクターとして勤務しながら、「Nike」のソーシャルメディアを担当した経験もありました。
一方、スティラーは、1997年から2001年までウェスリアン大学に在籍し、その後ニューヨークのナイトクラブやレストランを経営しつつ、人材調達会社CMEGを通じて、フォーチュン500社の企業を顧客に持っていました。
また、ニューヨークで25年の歴史を持つスケートボードとライフスタイル・アパレルの小売店、「Blades」も所有しており、2014年に「Groupon」に売却された「Swarm Mobile」のパートナー兼投資家でもありました。
「Stadium Goods」は、2015年にニューヨークの実店舗とオンラインサイトとしてスタートし、その後「eBay」、「Amazon」、「Alibaba」などでの流通を拡大していきました。
また、2018年には「LVMH Luxury Ventures」の支援を受け、独自の技術提供、実店舗の拡大、マーケティング活動、人員配置を成長させました。
同年、ジョン・マクフィーターズとジェド・スティラーは「Business of Fashion 500リスト」、「WWD 40 of Tomorrow」、「Footwear News Power 150」にも選出されました。
2019年1月にはロンドンを拠点とするオンライン小売企業「Farfetch」に2億5千万ドルで買収され、「Farfetch」と流通契約を結び、「Farfetch」の顧客にスニーカーのセレクションを販売するようになりました。
「Stadium Goods」は2015年にニューヨークに出店して以来、ポップアップストアでオフラインのタッチポイントを強化しており、新店舗の出店はありませんでしたが、2020年に新店舗をシカゴに出店しました。
2020年10月にオープンしたゴールドコーストの高級ショッピング街マグニフィセントマイルにある「STADIUM GOODS CHICAGO」は、6,000平方フィートの敷地に日常使いの定番スニーカーから希少な逸品までが揃うのが特徴となっています。
1階には、800足以上のシューズを展示した長さ60フィート、高さ16フィートの「ペリメーター・システム・スニーカー・ウォール」を設置しています。さらに、ガラスケース越しに、最も人気のあるスニーカーを見ることができます。
2階は、シカゴ店独自のフロアで、限定商品を中心とした多彩なディスプレイやインスタレーションを展開しています。
その後シカゴでは、その後2店舗目も出店しました。
また、当初からロゴTシャツやパーカー、ソックスなどのブランド商品を販売していましたが、2021年5月に2つ目の自社アパレルライン「STADIUM」を追加しました。
当初はバーシティジャケットやラグビーセーターなどのハイエンドなベーシックアイテム11点を集めたプレミアムカプセルコレクションとなった「STADIUM」はオーチャードストリート服の創設者、グリーグ・ベネットがデザインし、定期的にドロップやコラボレーションを通じて鮮度を保っています。
2.Stadium Goodsの強み
(出典:QdaFLU youtubeより)
「Stadium Goods」はニューヨークに2店舗を出店しています。
その内の1つ、ハワードストリート沿いに面した、マンハッタンのソーホー店は、本物のコレクター向けスニーカーやストリートウェアを求める男性にウケそうな、Appleストア風販売店という雰囲気を持っています。
ここでは、45ドルの「Nike Dunk Low プレミアム SB QS」から2万3000ドルの「Eminem Air Jordan 4レトロ」までさまざまなスニーカーを購入することができます。
また、スニーカーの購入ができるだけでなく、販売したい人がスニーカーを持ち込む窓口にもなっており、マーケットプレイスとしての役割も果たしています。
奥行きのある店内は、両サイドにはラップされたレアなスニーカーが一面に並び、その迫力に圧巻されます。その中でもプレミアム価値が高い物はショーケースに飾られ、美術品のような扱いとなっており、ここでしか実物を見れない商品もあるため、スニーカーが好きという人にとっては、ミュージアム感覚で楽しめる場所にもなっています。
米国でもスニーカーを取り扱うフリーマーケットやマーケットプレイスが多くある中で、「Stadium Goods」が顧客から支持されている理由の一つは“偽物が売られておらず、本物だけを売っているという信頼性の高さ”があります。
技術の進化、発展により類似品や模造品が全世界で販売されている昨今、個人からの購入は偽物を購入してしまう可能性もゼロではありません。
特にスニーカーは多くの偽物が世の中に出回っているという現実があるため、本物が保証されているプラットフォームという事実は、それだけでもサービスとして強いと言えます。
それに加え、「Stadium Goods」の強みは“時代の流れを読み取る能力”に長けている点と思われます。
2019年に、「Faze Clan(フェイズ・クラン)」とタッグを組み、ニューヨーク店でポップアップイベントを開催しました。
「Faze Clan」は「フォートナイト」などのeSportで活躍するプロチームを抱える企業です。
イベントは単にウェアやグッズなどを販売するだけでなく、「Faze Clan」のプレイヤーとファンが交流できるプログラムもあり、顧客からも非常に好評でした。
また、イベントの開催中はニューヨークで「フォートナイト・ワールドカップ2019」が開催されていたのも重なり、「フォートナイト」及び「Stadium Goods」のファンにとって、一大イベントとなりました。
金曜日に開催されたこのイベントは水曜日から徹夜組が列を作り、当日は予想を大きく上回る数のファンが集まったため、警察が出動する騒ぎにもなりました。
「Stadium Goods」は、このように業種問わず、“今”流行しているもの、顧客に支持されているものを見極めて、ビジネスとして成り立たせる能力が高いと思われます。
3.スニーカー・リセール市場
(出典:Sneaker News youtubeより)
「Stadium Goods」のユニークな点は、世界中でスニーカーの売り主・買い主とのコネクションをもっており、フットウェアのエコシステムで何が起きているかを知り尽くしているということと言われています。
2019年7月、「Stadium Goods」はサザビーズと提携して100足の靴を販売し、そのうち99足は一人のコレクターが85万ドルで購入するという試みが行われました。
また、クリスティーズは、熱狂的な投資家の増加と供給源の増加の両方に注目しており、「スニーカーは、コレクターにとって活気のある代替資産クラスである」と、同社副社長兼販売責任者のケイトリン・ドノバンは述べています。
「オールドマスターの絵画、あるいは時計、車、ワインが収集の対象であるという考え方は、もはや変わりつつあり、ストリートウェアやスニーカーのような収集資産の二次市場には大きなブームが起きている。」とも述べています。
その後、「Stadium Goods」とクリスティーズのパートナーシップにより、約90足のナイキエアジョーダンが登場し、さまざまな顧客から幅広い関心が寄せられ、オークションで落札された最も高価なスニーカーは、出品されるたびに新記録を更新しました。
尚、この取引によって、「Stadium Goods」は評判が上がり信用が高まりました。
アメリカのコーエン・エクイティ・リサーチ社のアナリストによると、世界のスニーカー・リセール市場は2030年までに300億ドル($30B/約3兆円)に到達すると予想されています。
二次流通はここ数年間で若者を中心に流行した印象がありましたが、アメリカではすでに世代を問わず、買い物をする手段として根付いています。
ブランド側も一部では、二次流通企業と積極的にタッグを組み、新しいお客様へのアプローチや既存のお客様とのつながりを強化するため、マーケティングを促進し、サステナブルな取り組みとして、社会にアピールしています。
再販市場の継続的な成長は、Nike、Adidas、Louis Vuitton、Gucciなどのビッグブランドによる先進的なマーケティング戦略にかかっており、再販サイトはブランドとの距離を縮めたいと考えています。
彼らは、消費者間の販売にとどまらず、ブランドからの出店やカプセルコレクションを歓迎し、その範囲を広げています。
4.最後に
(出典:Highsnobiety youtubeより)
現在、小売業界は大きな変化のときを迎えており、市場に新たなリーダーが生まれたり、既存のブランドが生まれ変わったりしています。
アメリカ発の転売プラットフォーム「StockX」の創業者は、「一次流通と二次流通の区別がなくなり、ひとつの大きな市場に統合されるはず」と、スニーカー市場の未来を予測しています。
また、StockXのアンケート調査によると、利用者の約37%は限定版スニーカーの購入動機として「投資目的」を挙げていました。
日本でも2010年代後半より、スニーカーの株式化が加速し、激戦の様相を呈しています。
2018年には国内でフリマアプリの「スニダン(旧モノカブ)」がスタートし、1日数千足もの新品スニーカーが倉庫に届き、鑑定プロセスを挟むことで、安心できる売買サービスをユーザーに提供しています。
このようにスニーカーのリセールプラットフォームは株式市場と良く似ており、モデル・サイズ別に売りと買いの情報が株式の板のように表示され、値決めされます。
また、利用者は過去の取引推移や取引数などのデータから、買い時・売り時を見極めます。
リセール市場では、NikeやAdidasといったスポーツブランドのスニーカーが取引されていますが、人気ブランドやアーティストとコラボレーションした希少性の高いスニーカーは定価の数倍〜数十倍で取引されることもよく見られます。
最近では、スニーカーの細部を撮った写真データをアップロードすることでAIが鑑定してくれるサービスも始まっており、今後データの蓄積によって精度は高まり、専門家の鑑定精度を超える可能性も高いと言われています。
また、市場リサーチレポートでは、「スニーカーは『新興のオルタナティブ投資*商品』であることに何の疑問もない」と書かれています。
*オルタナティブ投資:伝統的投資”と呼ばれる株式や債券に代わる、
たとえば不動産や穀物、仮想通貨など、新たな
投資先のことを言う。
また、Nike、Adidas、UNDER ARMOURなどは、NFT市場にも参入を進めており、より投機的な印象を受けます。
欧米、アジアでも多くのリセールプラットフォームが出来ており、投機的な目的が多いスニーカーリセール市場は、今後、不景気になったときにも続いていくのでしょうか。
それとも普通の小売り業態として、実店舗が増加し、根付いていくのでしょうか、今後の状況に注目していきたいと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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