バブルに踊った寿司屋の大将の話
僕が就職した直後はバブル絶頂期。
いわゆる「にわか億万長者」がごろごろいました。
きょうはそれにまつわるエピソードを。
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僕が当時勤めていた会社の近くにビルが建つという話が銀行経由で伝わってきました。
メーカー系の設備機器の工事&販売会社だったので、そのビル開発に喰いこもうと。
オーナーは寿司屋の大将です。
聞くところによると、先代まで家族経営だったのが、好景気の波に乗り商売を拡大。
実際寿司屋も拡張し、バブル期には何人も職人さんを雇っていました。それが銀行と「タッグ」を組んでビル経営に乗り出そうとしてたんです。
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大将の懐に入り込もうとする会社の上役に連れられ、何度かお寿司を食べに行くとですね、
『なんだこのマグロの切りつけはぁよー!』
『てめえー何回シャリの切り方教えりゃー覚えるんだ!』
こんな感じで、その大将、お客の目の前で見習を怒鳴りつける。
江戸弁もわざとらしく聞こえ、気風の良さを勘違いしているかのよう。
大将が握る寿司も、ネタは水っぽいし、シャリもベチャとして、いまふたつ。そりゃ「イライラ💢」すれば「魚の切りつけ」や「シャリの握り」に影響が出るよね。
それでもビルは完成し1階がお寿司屋さんに入った。めでたしめでたし。
しかし、僕がいた会社は設計事務所とゼネコンの意向でビルの開発には入り込めなかったようでした。
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その後も商売は順調だったようで、そのうちビルの前には高級外国車が停まっている。先輩からは「坊主頭(※)に<ヅラ>かぶってさぁ〜、豪遊してる大将を銀座で見かけたぜ!」と変な噂も聞こえきたw。
(※)多分大将はハゲだったのではないかとw
「ビルも新しく建ったし、寿司屋も連日大盛況だからねー」と思うほど調子が良かった。あの「いまふたつ」のお寿司でも高いモノが飛ぶように売れた時代ですから。
けど僕はバブル崩壊前にその会社を辞めたので、その後の大将の様子は知りません。
先日都内を訪れたとき、約30年ぶりに「全く寿司屋の跡形」もない、そのビルの前を通ったのでこの話を思い出しました。
今から振り返ると、お金がバブルのように浮かんできた時代。あの寿司屋の大将も融資先を探す銀行にチヤホヤされ、踊らされたひとりだったのかな〜と。
そしてこの平家物語 冒頭文の一部も頭に思い浮んだんです。
「驕れる者は久しからず」
バブルに踊り勘違いしちゃった「あの大将」今どうなったのかなぁ?
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というエピソードでした。いかがだったでしょうか?
バブル期はこんな話が日本国中そこいらにあったことでしょう。
ここから得られる「教え」とは?
何事にも倦まず弛まず、地道に勘違いせず、人を羨まず、人と比べず、暮らしは質素にすること。そして毎日修行と思って励んでいくことではないですかね。
商売でも他のことでも自分を磨く「修行」と思ってね。
僕はこうやって「書くこと」が修行だと思っています。
それではまた。