題詠blog2010
001:春(蓮野 唯)
「貴方だけ」言葉の楔打ち込んで甘く縛ろう彼の青春
002:暇(蓮野 唯)
よかよかと余暇を楽しむのたのたとコタツでみかんコタツで短歌
003:公園(蓮野 唯)
小さい手つないで走った公園で寄り添い続け暮れる晩年
004:疑(蓮野 唯)
擬態って書いたつもりが字が違い漢字自慢を疑われた日
005:乗(蓮野 唯)
会いたいと気持ちが風に乗って飛ぶ車窓彩る野辺の黄と白
006:サイン(蓮野 唯)
サインして見上げた先にある笑みを死ぬまでずっと見ようと誓う
007:決(蓮野 唯)
無理だよと友ら笑った我が決意凍り付いていく如月の朝
008:南北(蓮野 唯)
分かたれたわけではないが南北の隙間に心かじかんでいく
009:菜(蓮野 唯)
太陽が染め上げた黄の菜の花の束を贈った日の懐かしさ
010:かけら(蓮野 唯)
指先を傷つけぬよう拾ってく死に行く恋の冷たいかけら
011:青(蓮野 唯)
青春の一言だけで片付けて積み上げられた恋の屍
012:穏(蓮野 唯)
穏やかなわけではなくて臆病で気持ち告げずに過ぎた六年
013:元気(蓮野 唯)
微笑をくれる元気の源をベダルをこいで追い抜いて行く
014:接(蓮野 唯)
接点が欲しくて買った本だけど異国を一人旅するような
015:ガール(蓮野 唯)
放課後にガールフレンドとつぶやいて一人でニヤけ一人で照れる
016:館(蓮野 唯)
あなたの名貸し出しカードに見付けたら花園になる午後の図書館
017:最近(蓮野 唯)
最近の若者達はと繰り言を投げあいながら手をつなぎいく
018:京(蓮野 唯)
京都には良い思い出がありません振られた・振った・離婚した、街
019:押(蓮野 唯)
つきあって2年経つのにボタン押す手が震えるし声も震える
020:まぐれ(蓮野 唯)
まぐれでは射止められないその心鏡見る度笑顔の特訓
021:狐(蓮野 唯)
恋愛は狐と狸の騙し合いそう切り捨てて目を背けてた
022:カレンダー(蓮野 唯)
カレンダーばかり気になり上の空デート前から舞い飛ぶ心
023:魂(蓮野 唯)
膝抱え踏み出せずにいる魂を卒業式の風が押し出す
024:相撲(蓮野 唯)
好きでないはずの相撲を録画して話題作りに力士覚える
025:環(蓮野 唯)
環境が離婚を悪と思わせてチャンス逃して過ぎた七年
026:丸(蓮野 唯)
今回の恋は花丸だったわと声を震わせ泣いたトモダチ
027:そわそわ(蓮野 唯)
初恋が世界の全てをそわそわとピンクの風で揺らめかせてる
028:陰(蓮野 唯)
好きという気持ちを陰に潜ませてそ知らぬ顔で話しかけてる
029:利用
好きだから利用されてもいいのだと友は夕日と共に堕ち行く
030:秤(蓮野 唯)
秤では計れない量れないだけど図れる恋の駆け引き
031:SF(蓮野 唯)
SFで説明できたら楽だろう恋すると飛ぶ異次元空間
032:苦(蓮野 唯)
恋だけが苦しいわけではないけれど世界がそれに染まる日がある
033:みかん(蓮野 唯)
寄り添って詰まるみかんの房に似て晦日を走る満員電車
034:孫(蓮野 唯)
孫という歌が流行った思い出をお茶請けにする縁側デート
035:金(蓮野 唯)
赤い糸なんていらない欲しいのは金蔓になる阿呆な男
036:正義(蓮野 唯)
殺人を正義と呼んで憚らぬ嫉妬という名の鬼の道理は
037:奥(蓮野 唯)
引き出しの奥で今でも眠ってる出せないままの恋文ひとつ
038:空耳(蓮野 唯)
妄想が膨らみ過ぎて空耳で告白されてうろたえている
039:怠(蓮野 唯)
連絡を怠けていたと言い切られ貯めたお金は一人で使った
040:レンズ(蓮野 唯)
コンタクトレンズはずして告白をしたらはっきり好きだと言えた
041:鉛(蓮野 唯)
月並みな慰め達がずっしりと鉛のように圧し掛かる夜
042:学者(蓮野 唯)
学者ぶり上から目線な物言いを腹に据えかね往復ビンタ
043:剥(蓮野 唯)
タマネギの皮剥くようにいつまでも本音出て来ずイライラとする
044:ペット(蓮野 唯)
愛玩もペットもたいして変らない餌の名前は「お前だけだよ」
045:群(蓮野 唯)
群れている若者達はそれぞれに恋の孤独に脅え身を寄せ
046:じゃんけん(蓮野 唯)
コンビニに行ってきてよとじゃんけんの勝ちで天下を取ったみたいな
047:蒸(蓮野 唯)
むしむしと蒸してる夜に虫が出て叫ぶ私を無視してる彼
048:来世(蓮野 唯)
来世はいっしょになるとテレビでは言っていたけど怪しいもんだ
049:袋(蓮野 唯)
策を練り罠を仕掛けて追い込んで恋の獲物は袋のネズミ
050:虹(蓮野 唯)
大小の虹をその身にまとわせたシャボンのように煌めいた夏
051:番号(蓮野 唯)
一言を言うためだけに指先に恋を灯して番号を押す
052:婆(蓮野 唯)
爺でも婆でもいい一緒ならどこでもいつでもどこまでも
053:ぽかん(蓮野 唯)
音なんてしないんだけど「ぽかん」とは心が抜けた音に似ている
054:戯(蓮野 唯)
戯言を睦言にして腕枕夜を紡いで朝を紡いで
055:アメリカ(蓮野 唯)
アメリカはサイズの大きい国だけど愛のサイズは小さい気がする
056:枯(蓮野 唯)
若くても枯れていくのよ情熱は恋に破れた戦士呟く
057:台所(蓮野 唯)
台所食器が見事チョモランマ咎めずにいる夫を拝む
058:脳(蓮野 唯)
脳内で咲き乱れては散っていく妄想と言う甘美なる夢
059:病(蓮野 唯)
体力の有ると無いとにかかわらず恋の病は人を蝕む
060:漫画(蓮野 唯)
大好きな漫画の話するたびに互いに思う「ヲタクで良かった」
061:奴(蓮野 唯)
嫌な奴バカな奴ほど目について気づけばいつも目で追っている
062:ネクタイ(蓮野 唯)
ネクタイの歪みを直すその度に自分の心の歪みも直す
063:仏(蓮野 唯)
三度までケチじゃないんだ愛なんだ仏でなければ鬼で刺してる
064:ふたご(蓮野 唯)
ふたご座が1位と聞いて喜んで振られて知った人生の味
065:骨(蓮野 唯)
骨までは愛せないのよなぜならば温くもないし稼ぎも無いし
066:雛(蓮野 唯)
そらした目その先にある雛菊は無くした恋の刻印の花
067:匿名(蓮野 唯)
拒否される恐怖のために恋心自分に対して匿名にする
068:怒(蓮野 唯)
怒りなど何の役にも立たないと知ってはいても責め立てていく
069:島(蓮野 唯)
もし仮に無人島で過ごすならもって行くのは手紙と写真
070:白衣(蓮野 唯)
気が弱くなると白衣はときめきの対象となる恋の幻想
071:褪(蓮野 唯)
色褪せようだと思うその心その心こそ時が褪せさす
072:コップ(j蓮野 唯)
洗面所緑のコップ鎮座した忘れられない夏の一日
073:弁(蓮野 唯)
平日は四時半に起き作ってるお弁当には心を詰める
074:あとがき(蓮野 唯)
短めにしておきましょうあとがきはセピア色した初恋話
075:微(蓮野 唯)
いつまでも一緒に笑顔でいるために微妙なままの関係でいる
076:スーパー(蓮野 唯)
ねえもしもスーパーマンになれたなら電話しないで会いにきてよね
077:対(蓮野 唯)
一対の夫婦という名の完成形蓋を開ければ二羽のひな鳥
078:指紋(蓮野 唯)
ガラス窓指紋の向こう遠ざかる青い雨傘青い初恋
079:第(蓮野 唯)
第一も第二もあるかバカ亭主子供が大事に決まってんだろ
080:夜(蓮野 唯)
夜だけが生きているって思えるのあなたの声を聞くときだけが
081:シェフ(蓮野 唯)
シェフ気取りあなたは料理作るけど私はあなたに食べられたいの
082:弾(蓮野 唯)
脳内は文字の弾幕萌え上がるあの人が好きあの人が好き
083:孤独(蓮野 唯)
最初から一人じゃ孤独はありえない二人でいたから孤独がわかる
084:千(蓮野 唯)
一枚のハガキに込める幾千の想い隠して「お元気ですか?」
085:訛(蓮野 唯)
恋愛に訛りはないが失恋は涙鼻声みんな訛るの
086:水たまり(蓮野 唯)
水たまり避けて歩いて行く様なオドオドとした十代の恋
087:麗(蓮野 唯)
美辞麗句並べて空しい冬の夜ドラマ終われば恋も幕引き
088:マニキュア(蓮野 唯)
マニキュアは気持ち悪くてキライですそう言う人と一緒にいたい
089:泡(蓮野 唯)
濡れ手に泡違う濡れ手に粟だよとやいのやいのと過ぎいく時間
090:恐怖(蓮野 唯)
一番の恐怖は別れることじゃない私が彼を嫌いになる事
091:旅(蓮野 唯)
結婚は長い鈍行揺られ旅ダメと思えば途中下車する
092:烈(蓮野 唯)
猛烈に好きなんですと言いたくてでも言えなくて走り出してく
093:全部(蓮野 唯)
恋心全部取り出し見せたとてあなたは彼の好みでは無い
094:底(蓮野 唯)
缶ビール底に残った一滴を丁寧に飲む仕草に和む
095:黒(蓮野 唯)
黒という色を艶良くまとえたら大人の女になれた気がする
096:交差(蓮野 唯)
待ってると告げられ走る交差点顔に秋風目に舞う紅葉(もみじ)
097:換(蓮野 唯)
お茶っ葉を交換するとその後に「お茶は?」の声が飛んでくる日々
098:腕(蓮野 唯)
つかまえたこの腕はもう放さない私が毎晩帰る両腕
099:イコール(蓮野 唯)
男女とはイコールではないそれ故に高め合えていける存在
100:福(蓮野 唯)
ときめきを紡いだ百首ここに終え幸福至福感謝感激