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GIRL TALK
”What doesn’t kill you makes you stronger.”
これはネイティブなら誰もが知る、有名な格言らしい。私は少し前に小沢健二のツイートで知った。ニーチェも好んで書いた言葉で、直訳すると「君を殺さなかったものは、君を強くする」という意味だそうだ。小沢健二はツイートで、この言葉に「大丈夫。何かあっても、生き延びれば、その『何か』は君を強くする」と続けた。
私にとって「何か」とは、なんだろう。
これは恋愛における定番ネタかもしれないが、恋の始まりを予感した時、恋人と喧嘩や失恋した時に邦楽を聴く。普段は洋楽しか聴かないにも関わらず、突然、Apple Musicで邦楽を選ぶようになる。どこにでもある失恋ソング。うんざりするほどベタな歌詞。いや、ベタな表現のベタな歌詞だからこそ、恥ずかしげもなくストレートに感情を反映させることができる。正直な私の気持ちを代弁してくれているから。
もう少し若い頃は、恋愛においてネガティブなことがあると知りうるほぼすべての友人に連絡をした。「恋人と喧嘩した!慰めて!」と友人か知人か判断のつかない人にも愚痴LINEを送りまくった。頭の中が整理できなくて、感情をコントロールできなくて、携帯からパソコンからありったけの友人に連絡した。いちいち書くと腱鞘炎になりそうなので、途中からは友人の名前だけ変えてコピペして使い回す次第。それでもみんな優しくて、ちゃんと返信をくれたり慰めてくれたり、自分を大切にしなよとアドバイスをしてくれたり。真剣に怒ってくれる人もいた。誰かが傷つくことはやめたほうがいい、と言ってくれた。でも当時の私は自分が止められず、その子とは徐々に疎遠になってしまったけれど。
他にも、数人の異性の友人に「そういう人だと分かっていたでしょ」と言われたこともあった。ぐうの音も出ない。分かっていたけれど、当時の私は信じたくなかった。彼は私に誠実で、私だけを愛していると思いたかったから。今思うと、ネガティブなことから目をそらし自分を誤魔化していただけなのに。
しかしそれらのネガティブな経験は私を強くした。失恋という場数を踏んで、私は強くなった。愚痴LINEをコピペして送信することもくなった。むやみやたらと人にこぼすこともなくなった。それでも今回の出来事はあまりにも衝撃的で消化できない。彼を呪う方法を考えてしまうくらいには冷静ではない。
ゆえに、ごく一部、近しい友達に長さにして合計20cmはあるであろうLINEを送ってしまった。こんなくだらない話。話したところで解決はしないし聞いてもらってもスッキリしない。なのに昇格試験前で忙しい友人にLINEしてしまった。心の奥底にしまってもう二度と考えないようにすることもできたのに。
まるで安室ちゃんのGIRL TALK。
かなりショッキングな告白に
思わず顔見合わせて
Honey are you serious?
今すぐに
Say good bye to him
サヨナラが必要なことはわかっていた。何度も彼のことを疑い、その度に自分に嫌気がさしていた。嫌な気持ちになってまで一緒にいる必要があるのか?と立ち止まり何度も考えた。それなのに彼を問いただしたり責めたりすることも出来ず、いつしか彼への「ごめんね」の言葉が増えていったのは心の底から好きだったから。大好きでいて欲しかったから。
正体を知っていたはずなのに彼を悪者にすることができなかった。その代わり、自分を責めることでバランスを取っていた。
不思議なのは、どんなに喧嘩をして嫌な気持ちを抱いていても彼に会うとそれらの気持ちは吹っ飛んでしまうことだ。それが彼の魅力なのか、彼のずるいところなのか。恋の盲目さなのか。だから私は文句も言えず、涙を隠し、自分の感情に気づかないようにしていた。笑顔で会いたいし、面倒くさい女だと思われたくないし、共に過ごす短い時間をお互いに集中して愛し合いたいと思っていたから。
けれどこの恋愛ごっこは一方通行だったようだ。
今はコロナ禍で友人にも会いにくい。鼻歌まじりで飲み明かすこともできない。zoom飲み?LINEでGIRL TALK?これが令和2年のnewスタイルなのか。
もう彼らと関わり合いたくない。彼とくだんの女性に言いたいことはたくさんある。とはいえ、言ったところで過去も事実も変わらない。すべて今更、なのだ。何よりエネルギーの無駄でしかない。そんなエネルギーを使うくらいなら、今の私にはもっとやるべきことがある。集中すべきことがある。
一人になっても
Always be there for you
女同士も捨てたもんじゃないの
Yeah... ... that's true
彼がいなくとも、私には友達がいる。生きる希望を失っている暇はない。
まぁ、Janeが魅力的ってのはわたしは分かってるのでそいつにとらわれてほしくない
何があっても味方でいてくれる。慰めてくれる。私の魅力を認めてくれている。そして「髪抜けろハゲろインポ」という私と一緒に呪ってくれる。
呪うのはわたしもやっとく。家の中で毎回小指の爪ぶつけろ!こちら側のどこからでも開きますのやつ変になれ!コートのスリットのしつけ糸外すの一生忘れろ!体臭キツくなって自分だけわからなくなれ!とか
笑った。涙出るほどに笑った。ストレスさえどこか遠くへ吹き飛ぶほどに。
一昔前、私は「ピュアで繊細で素直」が売りだった。失恋するたびに「出会わなければよかった」とか「忘れたい」とか「もっといい女になって見返してやる」と言っていた。失恋した当日は仕事を休んだし、悲しみに暮れ食が細くなったこともある。
横須賀のアーティストに振られた時は、彼のインスタをネトストしてそれだけでは足らず、彼の友人のアカウントでタグ付けされている彼の写真を探してスクショしていた(冷静に考えて自分にドン引き)。7こ上のコピーライターに振られた時は、二人が出会ったゴールデン街のとあるバーに夜な夜な通い彼を待っていた。我ながらクレイジー。
黒歴史を抱えながら、それでも私は生きている。友人からの励ましや過ぎ行く時間とともに、私は冷静さを取り戻し私は生き延びた。そう、その「何か」は私を強くしたのだ。
もし今、新たなキャッチコピーをつけるなら「ピュアで繊細で素直、しかもタフでわがままなちょーいい女」。持って生まれたピュアさは失わず、修行を積んで強化されたのだ。パダワンからマスターに!
自分の価値観やスタイルを崩してまで一緒にいる理由はない。スタイルが違うのだからしょうがない。
私には友人がいる。Sex And The City みたいに。
誰にも割り込めない girl talk
エスカレートするレイディース達と
かまわずハメ外しておかないと
そういつでも girls just wanna have fun
もう何にも怖くない。私は強くなった。