【#シロクマ文芸部】骨皮筋衛門と「私の日」
「私の日ぃ~をタンスに~」
断捨離を無計画に行ったために、不要品と共に大切な思い出まで捨ててしまった。
自分の無計画さを悔やみながら、寂しさを噛みしめていると、
「私の日をタンスに~」
との声が外から聞こえてきたのだ。外を見ると、玄米パンや焼き芋を売るかのような車が、ゆっくりと路地を移動していた。
寂しさのあまり、つい声をかけてしまった。
優し気な男女が降りくる。
「私の日がご入り用の方ですね?」
笑顔でそう言われた瞬間、なぜかフラフラと家へ招き入れてしまい、捨ててしまった思い出を語り始めていた。
それなら、タンスの中に「私の日」を再現しませんか、と彼らは言い出した。
空になった引き出しに思い出を再現して、お客様の辛いお気持ちを軽くするのが私達の仕事なのです。うわぁ、綺麗に整理されたタンスですねーと言いながら、2人は引き出しを開け始める。
断捨離をしたばかりで整頓された美しいタンスの内部を、自慢したい気持ちもあったため、こっちの引き出しはちょっと、こっちなら何も入れてないから、ここに再現してください、とつい断捨離の詳細まで伝えてしまった。
彼らは、聞き取った思い出を魔法のように引き出しの中に再現してくれた。引き出しの中には無くしたはずの思い出が見事に再現されている。
不思議な光景に見惚れているうちに2人はいなくなっていた。料金も取らずになんて親切なと、幸せな気持ちで床についたのだが。
次の日、引き出しを開けるとレゴで作られた人形や建物が置かれているだけだった。
「気づいた時には貴重品の入った引き出しも空で……」
と涙ながらに語る老婦人に「大丈夫ですよ」と優しく語りかけるのは、我らがヒーロー骨皮筋衛門。
筋衛門はすぐに立ち上がると、ふくよかな身体を闇へと同化させた。
驚く老婦人に、潜入捜査部の皆が、
「筋衛門さんが潜ったが最後、敵は必ず仕留めます。安心してください」
とほほ笑みかけた。
🚚🚚🚚
「私の日ぃ~をタンスに~」
「あのうぅ」と小さな老人が「私の日屋」に声をかけた。
カモだ!とニヤリとする男女。
実はこの2人、化学系の研究者なのだが、ふとした拍子に過去に思いを馳せられるガスを産み出してしまった。
自分達の研究成果を試してみたくなり、この妄想ガスを使った犯罪を思いついたのだ。
その方法が「私の日屋」だった。
「どのような思い出を無くされたのですか?」
と話しかけながら、そっとガスを撒こうとした瞬間。
「お前達の悪だくみは今日で最後だ!」
ボム!ボボムッ!!
老人は変装した骨皮筋衛門だった。
小さな体を一瞬のうちにふくよかな体型へと変化させ、驚く悪党2人に、必殺ヒップを食らわせた。
悪党2人は、骨皮筋衛門と気づく前に失神。
筋衛門の素早い潜入捜査のおかげで、盗み取られた貴重品は全て老婦人のもとへと戻った。
「人の心のスキマにつけこむ悪を私は許さない」
本当は、オリジナルキャラを使わない話を考えていたのですが。なぜか骨皮筋衛門が出てきました。鎮痛剤がいい感じに効いているのかもしれません。
小牧幸助部長、しっとり系を目指しましたがダメでした。
来週もシロクマ文芸部の活動、頑張ります。
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