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【うたすと2】ブーケ・ドゥ・ミュゲ

でもぉと下を向きいじける私の話を黙って聞いていた祖母は、

「なにをさっきからごちゃごちゃと!」

と言いいながらグイっと腕を突き出した。優しい香りが鼻先に広がる。祖母の手には咲いたばかりのスズランの花束。自然とそれを私は受け取った。小さい頃から悲しいことがあると畑でスズランの世話をする祖母に話を聞いてもらっていたのだ。

祖母の背中を見ながらスズランの香りに包まれれば、悲しみもどこかに消えてしまう。祖母とスズランは魔法の組合せ、今まではそれでどんな悲しみも乗り越えられた。でも、今回は……。祖母から渡されたスズランの花束は彼からもらったそれを思い出させ涙が再びあふれる。

「スズランってお前の雰囲気にピッタリだよな」

と渡されたあの時は天にも昇る気持ちだった。光り輝くメリーゴーランドの前で濡れた石畳を見ながらどちらが雨男か雨女かを言い合っていたその時に渡されたスズランは、私に希望を与えた。この人とこれからの人生を一緒に歩む、照れくさそうな彼の横顔を見ながらそう思った一週間後、彼が華やかな女性と楽しそうに歩く姿を目撃し、私はそのまま列車に飛び乗り祖母の元へ逃げ込んだ。

「どんなに華やかな子といたって、それが彼女とは決まってないだろ?」
「でも、青が似合う綺麗な子だったの……私と違って大人の雰囲気で」

そこまで言うと新たな涙があふれ出してくる。

「私はこれからずっと、あの人のことを考えながら悲しい夜明けを一生迎え続けるのよぉ~うぉ~ん」

馬鹿だねぇ、この子はと耳をふさぐ祖母にお構いなしに大声で泣き叫んだ。真実も確かめないで悲劇のヒロインぶってさぁと呆れ顔の祖母は立ち上がりながら作業用の帽子を取り私にかぶせる。日焼け防止にかぶるその帽子は青色でそれが私をさらに悲しい気持ちにさせた。

華やかで大人な彼女。
私が着こなせない青を幸せそうに纏う彼女。

首を隠すための布に私は顔をうずめ、わんわんと泣き叫んだ。励まし続けてくれた祖母とスズランでさえ私に幸せを運んでこない。おばあちゃんったらなによ、こんな青の帽子なんかかぶせて!青なんて私に一番似合わないって言ってるのに。頭にこんな布を……かぶせてこれじゃまるで……まるでヴェールみたいじゃ。

「ぎゃー!おばあちゃんのバカァ!」
「うるさい子だね!帽子を鼻水でグチャグチャにしないでおくれよ!」
「うるさぁあい!」

祖母がかぶせた帽子を乱暴に脱ぎ捨て顔をあげると。

「え……あれ?」
「泣き方激しいな」

彼が祖母の横で笑っていた。

「う……そ、なんで?」
「お前がすごい顔で駅に向かって走っていくから追いかけたんだけどさ。足、速いよなーお前」
「やだ!恥ずかしい!」

混乱する私を彼が抱きしめる。祖母とスズランはやはり魔法を使うようだ。

「お二人さん、感動の再会はそれくらいにして、お茶でもどうかね?」

曲のイメージと違いすぎてごめんなさい💦

曲から物語をイメージ、難しくて参加を悩んでおりました。しかし、もうすぐ祭りのゴールが見えてきます。みなさん、楽しそうに参加しています。祭は参加してなんぼ、と私の中で誰かが囁くので青豆さんの課題曲にとうとうチャレンジしちゃいました💦

青豆さんのしっとりとした世界を再現はできませんが、これが私なりのリスペクトでございます。

募集要項はこちら👇


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