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【豆島さんの新企画参加#夜行バスに乗って】ファブる男(1789字)

柄本佑さんにキュン死したり毎熊さん退場に涙しているうちに多くの方が参加していらっしゃる!

で、出遅れたぁ😨
ということで、はそやmも以下のルールで作成し投稿します🙌

【お客さまへお願い】

「帳面町からバスタ新宿まで」の夜行バスがテーマの物語をつくっていただけませんか。
お一人で乗車? お友達と? どんな目的で? それとも、見送りに来た人?
あなたの考える、あなたの好きな物語を紡いでください。
《頭の片隅に入れておいて欲しい事》
① 「4B」の席には座れません。そこは10代後半~20代くらい?男性?(フードを被ってマスクをしているのでよく分かりません)が出発直前に乗り込みます。そして夜中の2時過ぎ、サービスエリアの休憩中に座席に座ったまま、ある物を床に落とし慌てて拾い上げます。それは「拳銃」に見えました。
② 行き先はバスタ新宿。現実には、バスの中で特に問題や混乱は起きず、時刻ピッタリに無事到着します。

(おまけ)

運転手は業務上必要なセリフ以外は喋りません。話しかけられたら、あいづちくらいは返します。主要人物として使用しないでください。

↑↑上記の①②、座席や時刻などは小説の中に「書かなくてOK」です。
必要であれば使ってください、という設定です。
これ以外の設定は好きにしてください。帳面町が日本の何処だか決めていません。車窓に何が見えるか分かりません。SAの詳細も。

★投稿期間は3月3日(日)~3月20日(春分の日)まで。
★20字以上、字数制限なし の「小説」に限ります。
★一人何作でもOKです。
★恋愛、ミステリー、ホラー、ファンタジー…ジャンル不問です。
先に投稿された方の作品に絡めてもOK。

ただし、その作家さんと作品に敬意を払い、著作権侵害の無いように気をつけてください。文章を引用するのではなく、あくまで「乗り合わせた目線」で自分の物語を書いてください。話し合いの上で共作される分には問題ありません。

★「 #夜行バスに乗って 」のタグをつけてくれればマガジン収録します。なかなか収録されない!という方はご一報ください。

この記事のURL、無理に貼らなくてもいいです。貼ってくれたほうが間違いないですが。

タイトル自由です

「【新企画】夜行バスに乗って~20字以上の小説募集」より

夜行バス内は以下のようになっています。


「【新企画】夜行バスに乗って~20字以上の小説募集」より

ヘッダーはスズムラさんよりお借りしました♪

「あいつが落としたの拳銃じゃね?」

と6Bに座る颯太がサービスエリアで買ってきたペットボトルを渡しながら真剣な顔で俺に囁く。礼を言い受け取りながらもなに馬鹿なことをと呟きスマホに目を落とす。

「おい!なにスマホ見てるんだよ!今見たの!」

さらに小声で颯太が必死に語り掛けてくる。そういえば颯太がバスに戻ってきた時、前の座席の4Bの奴が物を落としたな。確かに重く鈍い音だったけれど。

「お前「ファブル」読みすぎ!バスに乗る前にマガポケ開けてたよな?」
「ちげーよ。ホントに拳銃が落ちるの見たんだよ!」

6Cに座る颯太から4Bはよく見える。真後ろの俺からは全く見えないので、どんな奴が座っているのかわからない。発車直前に乗り込んできたのは覚えているが、男というくらいしか記憶に残っていない。その時はバスのWi-Fiへの接続やら充電やらで周囲に気を配る暇もなかった。

「あいつ顔が見えないようにフードをかぶってるんだよ」
「かぶってた?」
「お前、危険人物の真後ろにいてそんな呑気でいいのかよ!」
「知らねーよ。よく見てないし」
「ファブルは気配を消すの上手いからな」
「ほら、やっぱり「ファブル」に影響されてんじゃん」
「ぐっ」

と話した辺りで6Aの人に軽く咳払いをされ「すみません」と颯太と2人頭を下げた。咳払いの男性は50代くらいだろうか、目が笑っていたので本気で怒ってはいないようだ。颯太の突拍子もない話をおかしく思いつつ時間は夜中の2時過ぎだから静かにという咳払いなのだと感じ、再び会釈をした。ゆとりのある大人で助かった。

そんなことより新宿についた時の朝飯でも検索してろよ、と颯太を小突き再びスマホを見始める。

「だってよう」と颯太は文句を言いつつも、スマホをスクロールし始めた。しかし、すぐに颯太の寝息が聞こえてきた。危険人物だと言いながらもう寝てるとおかしくなったが、だんだん瞼が重くなり意識が遠のいていった。

🚌🚌🚌

「ご乗車ありがとうございました。まもなくバスタ新宿、終点でございます。このたびは「春と風林火山号」にご乗車いただき誠にありがとうございました。またのご乗車お待ちしております」

ふぁあーと伸びをする。レストフットつきリクライニングでも、やはり夜行バスでの移動はきつい。トランクルームから荷物を降ろしながら朝食の相談をし始めた時、4Bの男がバスから降りてきた。

「あ!」

颯太が小さく叫ぶ。

4Bの男に向かって手を振る女性がいたので「女が迎えにくる殺し屋なんているのかよー」と颯太を小突くが、

「馬鹿!あれを見ろ!」

と両手で俺の顔を男の方にぐいと向ける。なんだよーといいながら男に目をやると手に黒い物を持っていた。バッグ?小さいからポーチ?でも金属っぽい……?

ダッシュする颯太。1足遅れてスタートする俺。それと同時に銃を女に向ける男。凍り付く女。間に合え!間に合え俺ら!

パアアアン

奇妙なほど軽い音がやけにリアルだった。普通では起こりえない音にバスタにいた乗客・乗務員の視線が集中する。音がした瞬間、俺は思わず目をつぶってしまった。拳銃なんて現実には遭遇しないと思っていたけれど実際にはこんな身近に存在するんだ。怖い……都会怖い……次は俺らの番?

「アッくん!」
「ミーたん!」

あ……れ?そっと目を開けると颯太が呆けた顔で口を開け男を見ている。男が女に向けた銃口からは紙テープが垂れ、紙吹雪がそこら中に散らばっていた。紙テープ以外に文字の書かれた紙もぶら下がっている。

「ミーたん結婚してください♡」だとぉぉ!

「もぉう、アッくんたらぁビックリしたぁ」
「ごめんねミーたん、サプライズしたかったんだよぉ」

そう言いながら男はそっと小箱を差し出す。

「ミーたん。結婚してください」
「もう……やだっなに言って……はいっ」

熱くハグする男女に困惑していた人々がパラパラと拍手をし始める。そのうち拍手はだんだんと大きくなり一瞬にしてバスタはアッくんとミーたんを祝う場となった。

アッくんとミーたんがその場を綺麗に掃除をして寄り添って帰る姿までを呆然と見ていたが「ぐぅぅ」と腹が鳴ったところで現実に引き戻された。

「颯太、飯食いにいくか」
「うん」
「颯太」
「なんだよ」
「アッくんとミーたんってとこだけ「ファブル」と同じだったな」

俺がそう言うと「だろ?」と颯太が笑った。
さあ春休み初日、新宿を満喫して帳面町ノートちょうに帰るぜ!

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