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【#創作大賞2024】骨皮筋衛門「第十二章:蚊なしき野望⑤」最終章(2737字)
第十二章「蚊なしき野望⑤」最終話
「え?蚊ーニバル結成の理由……それ?」
今までモテたことのないカーターには全く理解できない。そういえば、この3人は見た目がいい。男性的な魅力あふれるデーモン蚊っ蚊・白い肌に赤い唇の中性的な魅力を放つ蚊山ゆうぞう・サラサラストレートが魅力の永遠の少年風な蚊取しんご。どれもカーターが望んでも手に入らない容姿だ。
こいつら、悪の道へ進む必要ある?いやすご~くム蚊つく、
とマグマのようにどす黒い気持ちにカーターは支配されかけた。しかし!彼らの美しさを利用すれば、イービル・フラワーの力は強大になる!帳面町を支配するためには蚊―ニバルを利用するのが得策だ。俺は見た目がちょっと残念だが、こいつらを牛耳って……見た目なんてどうでもいい!俺は頭脳明晰なんだからっ。
マイナス思考に引っ張られがちなカーターは無理に自分を励まし、蚊っ蚊達に話しかけた。
「大変な思い、よくわ蚊ります」
「わかってくれるの蚊?」
「女なんて浅は蚊な生き物なんです!蚊っ蚊、蚊山さん、蚊取さん、心ゆた蚊に生きられるせ蚊いのために私も協力します!」
心無い言葉であるにも関わらず純真無垢なデーモン蚊っ蚊は
「蚊ん動!」
とむせび泣いた。
「くだらないと言わな蚊った人はあなただけだ!」
と喜ぶ蚊山。
「見蚊けによらずいい奴だな」
とサラリと髪を蚊き上げる蚊取。
「しかし、イヤー蚊フが警察にバレてしまっては」
と暗い蚊おをするデーモン蚊っ蚊に
「いい考え、いやいい蚊んがえがありますよ」
とカーターがニヤリとしながら告げる。
「SNSを駆使して炎上作戦を実行するのです」
「炎上作戦?蚊の要素はどこに」
と不思議がる3人に、カーターは蚊ん誘員としてビジネス街に立つことを命令した。そして彼らの美貌で集めた男女をカーターが蚊い発した機器で教育し直し、骨皮筋衛門の攻撃要員とすると説明をしたのだが。3人は疑問を口にしだした。
「それはお蚊しい」
と蚊山。
「蚊なり妙だ」
と蚊取。
「蚊の成分が全くないではない蚊」
とデーモン蚊っ蚊。
思わずシドロモドロになるカーター、とその時。
「君達は騙されている!」
と声が響いた。
「そ、その声は!」
慌てたカーターがキョロキョロと周囲を見回す。声の主はそう!骨皮筋衛門!暗闇にふくよかなボディラインが浮かび上がる。
「騙されているだと!蚊っ蚊を愚弄する気蚊!」
襲いかかる蚊山をヒラリとかわし、
攻撃してきた蚊取の方向をクルリと変え、
プルンと腹でその背中を押し、
ボスンと蚊山と共にカーターに向かわせる。
「おわっ!あっぶねー!」
「ほ、骨蚊わ筋衛門……我々が騙されているだと?」
と疑り深くつぶやくデーモン蚊っ蚊に筋衛門は優しく声をかける。
「奴はイービル・フラワーの手先として君達を利用しているのだ」
「違う!ちゃんと蚊……んがえている!SNSで炎上を起こし」
「そこのどこに蚊成分が含まれているんだ?」
「蚊成分は……」
と口ごもるカーター。
「「蚊」成分はどこだ?」
と蚊っ蚊がたずねた。
「お前らは俺が言うように動けばいいんだよ!」
小者らしくブチ切れるカーターに呆然とする3人。
「君達の気持ちはわかる。しかし襲われた人達の気持ちを考えたことはあるか?」
メロンの上で潰された蚊のように恐怖を感じるとは思わないか?と筋衛門が語り掛ける。
「君らは純粋過ぎるのだ」
このままだと、イービル・フラワーが用意したメロンにのせられ潰されてしまう運命となる、と優しく諭す筋衛門。
「オスは血を吸わないかもしれない。メスも産卵時の栄養を摂るために必死なのだろう。一度血を吸った人には近づかないとの研究もある。だが」
筋衛門が蚊……いやカっと目を見開いた。
「蚊を媒介する病気もあるのだ。刺されたことによるアレルギー反応で痒みだけでなく痛みや腫れに苦しむ者もいる!その全てに責任を持って君達は活動をしているのか!」
あまりの正論に愕然とする3人。
蚊を研究することで未来へつながる発見はあるだろう、しかし蚊を増やすことで起こる危険性は……
「そ、そこまで蚊んがえな蚊った……」
うなだれるデーモン蚊っ蚊の元にそっと近寄る影。
カフェに置き去りにした元蚊ノ蚊オリ、いや元カノ香だった。
「かぁくん、あの時はごめんね」
とほほ笑む彼女は清楚な美しい女性だった。
「かぁくんが去ってから、あなたのことを探しながら研究は続けていたの。でもかぁくんがいないと蚊の研究は進まないわ。だから……もう変なことは止めて研究室に戻って」
「蚊……香ぃ……」
デーモン蚊っ蚊いや、かぁくんは泣きながら香にすがりついた。蚊山いや加山、蚊取いや香取ももらい泣きをしている。
「お前ら!俺のこと無視して感動の再会にひたってんじゃねーよ!」
怒り狂ったカーターが壁にある自爆装置のボタンを押そうと駆け寄った瞬間、骨皮筋衛門のふくよかボディが宙を舞った。
ヒラリ・クルリ・プルン・ボスン
白目を剥くカーター。
その音を合図に、俺こと太山デイブを先頭に警察がカーターのアジトになだれ込んだ。
🦟🦟🦟
「で、蚊ーニバルの3人はどうなったんですか?」
とカウンターから幸田さんが俺にたずねる。
「彼らの蚊への意欲や研究は素晴らしい。ただ蚊と言わせるだけで市民は誰も怪我をしていない。そこで」
「そこで?」
と砂沼さんが話に食いついてきたので俺は嬉しくなる。
「厳重注意とし、今後は骨皮筋衛門の潜入捜査に研究を活かすという約束で大学の研究室に戻った」
と説明をしウインクをしたが、砂沼さんはもういない。幸田さんのところへ出来立てのコーヒーを取りに行ってしまったのだ。ボン・ラジが笑いを隠そうとして肩を震わせているのは見なかったことに、する!
「で、大活躍の骨皮筋衛門さんは?」
とボン・ラジが聞くと
「インタビューは俺に任せた、と言って地下に潜った」
その時、カランカランという音と共に江藤さんと越前さんが入ってくる。今日は「カサブランカ」で「笑顔デスカ♪」の公開収録があるのだ。
「江藤さん♪」
「デイブさんよろしくお願いします」
とにこやかかつドライに挨拶をする江藤さん。越前さんはさっさと収録の準備をしている。今日はボン・ラジと俺の対談が「カサブランカ」で行われるのだ。
スラリと長い手足に10頭身の俺だが、女性に軽くあしらわれるとたまに感じる。なぜだ?
「さあデイブさん、始めますよ!」
カラっとした笑いを江藤さんが俺に向ける。砂沼さんもニコニコしながらこちらを見ている。帳面町が平和ならそれでいいか。
「はい!始めましょう!」
その様子を微笑まし気にカウンターで見守るふくよかなボディラインの男がいた。しかし気配を消しているため、幸田さん以外に気づく者はいない。
「いいんですか?」
「まだイービル・フラワーとの闘いが残っているからな」
幸田さんにそう告げた骨皮筋衛門は再び地下に潜っていった。
(完)