【#シロクマ文芸部】天使かよ⑤
誕生日だよ!今日はママの誕生日だよ!
だから内緒で保育園で習った折り鶴をプレゼントしたいの、と美月が目をキラキラさせて言う。僕は天使かよ、とつぶやきデレデレとなる。
「パパ!天使じゃなくて美月ちゃんだよ!」
と叱られた。ママのお腹が大きくなるにつれ、美月のお姉ちゃんぶりが加速している。女の子って、あっという間に成長しちゃうのかなと内心焦る。美月ぃ!もう少しゆっくりの成長でいいんだからね!と心の中で叫ぶ。
「パパ!聞いてる?」
美月に軽く睨まれた。
「ごめんごめん。美月ちゃん、鶴折れるの?すごいね」
「うふふ」
といいながら恥ずかしそうに保育園バッグから折り鶴を出す。
「これ美月ちゃんが折ったの?」
あまりの完璧さに僕は驚いた。
「……。先生のお手本……」
美月が泣きそうな顔で、クシャクシャの折り紙を出す。
「……」
先生が作った折り鶴に感動してママに作ったのだが、できないから手伝ってと言うのが美月の内緒のお願いか。
「よーし!一緒に折ろう!」
「うん!」
パッと美月の顔が輝く。
この切り替えの早さがマジ可愛い……。
「折り紙?いいなぁ。ママもやろうかな?」
「ママはダメ!美月、今プレゼント折ってるから!」
ネタバラし発言に気づかない美月が可愛すぎる。天使かよ……と言いそうになり、妻からものすごい勢いで睨まれる。
こういう時、妻は全く感情を見せないので美月は母親にバレているのに気づかない。すごいなぁ、母親って。
それに比べて僕は……。
さっきから折り紙の本のとおりに、折っているのだが完成しない。折り紙未経験者には、鶴は至難の技だった。何回折っても首が出ない。
しばらくして、鶴らしきものができあがった。
「で、できた!」
と喜び美月に差し出したが美月の目から涙があふれ出した。
「クシャクシャ~。折り紙クシャクシャ~」
何度も折り直したため首の曲がった折り鶴になってしまった。
「ごめん……」
「あれえー。これなんだろう?」
突然妻の大きな声が聞こえた。台所の方だ。
「どうしたの?」
あっという間に涙をひっこめた美月が妻にかけ寄る。
「ママの知らないお手紙があるぞぉ」
妻がそっと僕に目配せをした。冷蔵に貼られている近所のパティスリーの予約票は、少し前に美月と2人で妻の誕生日ケーキを予約していたものだった。
ゆっくりと妻が予約票を取るふりをする。
「あーそれだめぇ!」
美月がペリっとはがし僕に渡す。
「美月ちゃん!行くよ!」
「うん!」
🎂🎂🎂
「素敵なケーキ!美月が用意してくれたの?」
「うん!メッセージは美月が考えた!」
「美月、素敵な誕生日プレゼントありがとう」
と妻がほほ笑む。
美月は、妻に誕生日ケーキをプレゼントできたとご機嫌だ。
折り鶴の失敗はうやむやになり、楽しく妻の誕生祝いを行うことができた。毎夜の読み聞かせもつつがなく終えた。
君は優しいお姉さんとママがいるおうちに生まれてくるんだよ、よかったね。そっと妻のお腹へテレパシーを送った。
久々の天使かよシリーズです😊
9月2日に投稿したピリコグランプリの連載つぶやき小説で美月ちゃんのおうちに新しい家族が生まれる話を書きましたが、今回はその後のお話です。
連載つぶやき小説の続きをいつか投稿したいと思うのに、なぜか降りてくるのは骨皮筋衛門で💦
小牧幸助部長のおかげで天使かよシリーズの続きを書くことができました。
小牧幸助部長、ありがとうございます🙌
小牧幸助文学賞の方も今月末まで毎日投稿します!
これまでの天使かよシリーズはこちら👇
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