【#シロクマ文芸部5月】④尊いもの
1カ月の全お題を使って一つの物語を作るチャレンジをしています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。今日はその4回目。
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「金魚鉢をね、金魚でいっぱいにするの!」
ルウは大張り切りです。今日は近所の神社でお祭りがあるのでパパとママと一緒に来ていたのでした。
「夜店で焼きそば食べようか、それともたこ焼き?」
ママは食べ物ばかりを言います。
「ルウはポリキアのお面が欲しいんだよね?」
パパはルウの好きなアニメのお面を買いたがります。
どちらもいいな、とは思います。でもね、でもルウは納戸で見つけた金魚鉢に夢中なんです。雨戸を開けた時に太陽の光に照らされた金魚鉢を見てしまったのですから。
太陽の光を受けてキラキラ光る金魚鉢はすごく素敵でした。
「ルウちゃん、金魚ちゃんを入れて」
金魚鉢がルウに向かってそう話しかけたような気がしました。
「わかった!ルウ、夜店で金魚ちゃんを沢山すくってくる!」
そう意気込んで挑戦した金魚すくいでしたが。1匹もすくえませんでした。破れたポイを握りしめ目に涙をためたルウを可哀想に思ったのでしょうか?おじさんが、
「おまけだよ」
と小さな金魚を2匹袋に入れてくれました。
「ありがとう!おじさん!」
キャーと喜ぶルウに、
「今泣いたカラス、歯生えて笑っただな」
とおじさんが笑います。パパとママがありがとうございますと苦笑いしながらお礼を言っている横でピョンピョン跳びはねるルウ。
神社からの帰り道、金魚の袋を見ると金魚が袋のはじをチョンチョンとつついています。かわいいなと思ってそっとふくろの指でつまむと金魚がつつく振動が指に伝わります。思わず何度もつまんでいると、
「金魚さんが辛いよ」
とママにたしなめられました。
「だって、可愛いんだもん」
ママに注意されてもどうしてもつまむのをやめられないルウでした。
家に帰ってすぐに金魚鉢に入れると金魚はグルグルと元気に泳ぎます。広い金魚鉢で2匹はとても嬉しそうです。
「かわいいなぁ」
「お世話するのよ」
はあいと答えるルウ。でも、次の日、1匹がプカリと浮かんでいました。
残りの1匹も1週間もすると浮かんでしまい、金魚鉢の中にはなにもいなくなってしまいました。
ルウは大声で泣きました。きっとルウが神社から帰る途中、ずっと袋をつまんじゃったせいだ。だからしんじゃったんだ。ルウがいけないんだ。
大声で泣くルウの頭をなでながら違うよとママが言います。
「ママ達も悪かったのよ。勉強が足りなかったの」
大人なのに勉強が足りない?
ルウは驚いて顔をあげました。
「金魚すいの金魚ってすぐに水槽に放しちゃいけないんですって」
金魚鉢に入れた水はカルキ抜きが必要なこと、袋に入ったまま水槽に金魚をつけて水の温度を同じにしなくちゃいけないこと、金魚を飼うには色々ときをつけなくてはいけない学ぶべきものが沢山あるそうなのです。
「金魚の命を粗末にしちゃった」
ママの目が少しうるんでいるような気がして、ルウは泣くのをやめてママの頭をイイコイイコしました。
それからルウとママは金魚のことを一生懸命勉強しました。
金魚には和金と丸物があり、金魚鉢に合うのはゆったり泳ぐ金魚がいいこと、小さい金魚を1~2匹しか飼えないこと、大きくなったら金魚鉢を大きなものにしなくてはいけないこと。
「小さな金魚に色々な決まりがあるのね」
とママが溜息をつくとルウは
「だって大切な命だもの」
とニッコリとしました。
次回最終回です!
一瞬、来週は6月じゃんと今日が最終回と慌てましたが、5月30日が最後のお題発表でしたね。
あービックリした💦
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。