
【#創作大賞感想】「嘘つきたちの幸福」で楽しむバレエ鑑賞
脳内で主人公たちが動き出す、小説を楽しんだことのある方ならば誰もが経験しているのではないでしょうか。実際に見ているかのように脳内で小説の世界が繰り広げられるのは読書の醍醐味だと思っています。
自分の肌に合った文章だと、音や匂いまで再現されます。それを体験した時の嬉しさといったら……。創作大賞の期間中、そんな作品が多く投稿されています。私は至福の時を現在過ごしており幸せにトロトロと溶けてしまいそうです。
ありがとう、創作大賞。
そんな中で度肝を抜かれたのが青野昌さんの「嘘つきたちの幸福」です。こちら、最初に宣言している通り、バレエ×小説という斬新なスタイルを取られています。
第1話、ではなく第1幕としていることから、読んでいると踊り手達の息吹や汗が感じられる作風となっています。小説からはテレビ中継でよくある落ち着いた女性の品のあるナレーションが聞こえてくるかのようです。所々で、
おちゃめな王子のヴァリアシオン
オアシスのパ・ド・ドゥ
アビー王子によるソロの踊り
兵士のコール・ド・バレエ
のようにバレエの説明が入り、これは小説でありバレエなのだと青野さんは囁き続けます。幕間の様子まで描かれているため、テレビ中継を見ていたはずの私は、noteの街が誇る劇場にいつのまにかいて友人とどの踊り手が良かったか、あのシーンはゾクゾクっとしたわ!と感想を言い合い楽しんでいるような気分になりました。
noteでは様々な小説を読んできており、その世界にどっぷりつかり楽しんだことはありましたが、まさか劇場に連れて行かれるとは思っていなかったです。
読んでいる間、踊り手達はスラリとした手足を自由に優雅に動かし、遠い異国の物語を表情豊かに踊り切ってくれました。ここ最近、劇場に足を運んでいなかった私に贅沢な時間をくださった青野晶さん、本当にありがとうございました。
バレエを小説にする試み、とても楽しかったです!