【#シロクマ文芸部】かまくらでおしるこ
振り返ると先ほどより更に雪が積もっていました。お地蔵様は今にも埋もれてしまいそう。おじいさんは可哀想になってお地蔵様に降り積もる雪をどかし始めましたが、雪の勢いは増すばかり。
「お地蔵様ぁ。本当なら笠でもかぶせたいんじゃが」
今日、町まで笠を売りに出かけたのですが、おじいさんの作る笠は非常に評判が良く全て売り切れ。そのため、お地蔵様にかぶせてあげる笠がなかったのです。雪の勢いは増すばかりで、笠があってもお地蔵様は雪に埋もれて春まで出られないでしょう。おじいさんが途方に暮れていると、
「かまくらを作ろうよ」
と可愛らしい声がしました。振り向くとかわいいコギツネが立っています。
「かまくらか。いいアイデアだ」
お地蔵様が中に入る大きなかまくらをコギツネとおじいさんは作り始めたのですが、雪がズンズン降り積もるので、足がとられ、思うように動けません。
「北風さあん」
コギツネが空に向かて叫ぶとビュゥビュゥビュゥゥ~と北風が吹きました。おじいさんは寒さで凍りそうになりましたが、気が付くと足元のやわらかな雪がなくなり、かまくらを作りやすくなっていました。
「これは作業しやすいな」
「ね、北風さんって親切なんだよ」
1人と1匹はまたかまくらを作り始めます。もう少しで出来上がるというところで、真っ白な雪が足りなくなりました。最初の頃より雪の降り方が弱くなっていたのです。まわりを見ると土の混じった黒い雪しかありません。
「困ったな」
とおじいさんが言うとコギツネが、
「雪の女王様さまぁ」
と空に叫びました。
「仕方ないねぇ」
と声が聞こえたような気がして、おじいさんはキョロキョロしましたが誰もいません。不思議がっているうちにまた雪が降り始めたので、かまくら作りの続きを再開しました。
ねぇ、入ろうとコギツネが暖かそうな手袋をつけた前足をおじいさんに差し出しました。おじいさんはコギツネと手をつなぎかまくらの中へ入ってみると、お地蔵様がせっせと餅を焼いています。
「おじいさぁぁん」
声がして振り向くと大きな鍋をぶら下げたおばあさんが、かまくらの入り口にストンと舞い降りました。
「小豆を甘〜く煮ていたら北風さんと雪の女王様が、鍋を持って玄関に立てって言うの。そうしないと家ごと吹き飛ばすって」
といい、フフっと笑いました。おばあさんは北風さんと雪の女王様にふわりとここまで運ばれてきたようです。
かまくらの中ではお地蔵様とコギツネ、おじいさんおばあさんが温かなお汁粉を楽しく食べています。
北風さんと雪の女王様には、おばあさんが氷入りのおしるこを振る舞いました。
先週のコギツネさんに活躍してもらいました。
スキーに行くと山に祀られている神社はほとんど雪に埋もれて鳥居の上しか見えなかったりします。お地蔵様は笠をかぶっても埋もれて動けないのではと心配になったので、おじいさんとおばあさんを北風と雪の女王に頼んで、お地蔵様の元へ連れてきてもらいました。
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。