【#シロクマ文芸部9月】②こびとのお誘い
シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。今日はその2回目。
①はこちら👇
懐かしいな。レモンからひょこりと顔を出し笑うこびとを見て初めて会った時を思い出す。あの時は心が疲れ麻痺していた。それを癒してくれたのがこびと。こびとと暮らし始めたことで穏やかな日々を過ごしている。
「もう、1年近くなるのね」
「そうだね」
ところで、どうしてレモンの後ろに隠れていたのかしら?またぺたりの月めくりをしろと言うのかしら?
じっとこびとを見ていると、こびとがまたニッコリとする。うんしょうんしょとレモンを私の方に転がしてくる。こびととレモンの大きさはさほど変わらない。最初は軽快に転がしていたが段々と重くなってきたのだろう。小さな顔が赤くなってきた。
「いったいどうしたの?」
ヒョイとレモンを持ち上げると、あーもう、とこびとが頬を膨らます。
「とっておきのレモンティーのお誘いをしようと思ったのに」
「レモンを転がしながら?」
ちょっとよくわからないけれど真剣な顔のこびとを見ていたら、とてもじゃないが否定はできない。
「さてさてとっておきの……」
「カレルチャペックだね!」
レモンを転がしていたときとは違う赤みを頬に浮かべ、こびとが叫ぶ。その姿に愛おしさが募る。
せっかくのお休みだしね。
まだ暑さが残っている中、微かに近づく秋を感じながらこびとと共にレモンティーを楽しむ。
昨年、私の元に突然こびとが舞い降りてきました👆今年は去年より1ヶ月早い登場です。秋から春にかけてが、こびとの活動期なのかもしれません。
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。