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【シロクマ文芸部10月②】出発

シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。

本日は10月2回目のお話となります。

1回目はこちら👇

それでは2回目お題「金色に」から始まる物語の始まり始まり。

金色に輝く毛皮に思わず見とれました。

「あーオホンオホン。私の話を聞いていますか?」

ヤマネコが不満そうに咳ばらいをします。

「ごめんなさい。あまりに毛皮が美しいので見惚れてしまいました」

そう正直に話すとヤマネコはヒクヒクと自慢そうに鼻を動かします。褒められたことが嬉しそうです。しかし、よほどプライドが高いのでしょう。気持ちを隠そうと、しかめっ面を強めて話を続けます。

「夕焼けはたまに幻を見せるものです」
「そういえば、陽が沈んだら金色でもないような」

ヤマネコの言葉を肯定したつもりで同意をしたのですが、今度は少し泣きそうな顔になります。やはり褒められたままの方が嬉しいようです。

私は慌てて、

「でも金色でなくても美しい毛並みですよ。広大な砂漠を思わせます。目の横の縞模様なんてとても美しいです」

と早口で誉め言葉を並べました。ショボンとしかかったヤマネコはその言葉を聞くと、

「ふふふ。美しいでしょう?クレオパトララインと言うんですよ」

と自慢そうに大きな耳をピクピクさせます。

「手足も長いですね。あなたは普通のヤマネコとは違うのでしょう?」

ヤマネコがいい気になる様が面白く可愛らしく感じたので更に持ち上げてみると、

「わかります?リビアヤマネコなんですよ!」

と嬉しそうに叫びました。

「日本の方ではないのですか?」
「ええ、イエネコの祖先ということで日本ラブヌコ連盟の会合で講演を頼まれ来日したんです。ところが、話が素晴らしすぎると引き止められて、そのまま活動の拠点がこちらになって」
「どおりでお話が上手だと」

ここまで話したところでヤマネコがハッとしました。私のところに来た理由を忘れそうになっていたからです。シッポをブルンブルンとさせ、

「私のことはどうでもいいのです。あなたにぜひ来ていただきたい場所があるのです」

と一気に喋り終えます。キリリとした眼光はイエネコにはない野性味を感じさせました。

「なぜ私を?」
「私と一緒にある問題を解決してもらいたいのです」
「問題?」
「さあ、どうぞこちらへ」

長い手足で指した方向にクラシカルな自動車が用意されています。リビアヤマネコがお辞儀をしながらドアを開けるしぐさがあまりに優雅なものだったので、私はフラフラと自動車に乗り込みました。

ある物語をオマージュしております。勘の良い方は気づかれたかもしれませんね。

小牧幸助部長、今週もありがとうございました。

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