【#第一回サイゼ文学賞(非公式)】スイーツ探偵、サイゼリヤで事件解決🍮
スイーツ探偵と呼ばれるうちの先生は、ご近所の相談事や失せ物探しを引き受ける何でも屋だ。甘いものを食べながら相談者の話を聞き、いつの間にか問題を解決。喜んだ相談者が相談料と共になにかしらスイーツを持ってくるのでいつの間にか「スイーツ探偵」と呼ばれるようになった。
本来なら、
「うちは探偵業は行っておりません」
と訂正すべきところなのだが。
「言わせておけばいいじゃない♪」
と平気な顔。それもそのはず、先生は大の甘いもの好き。
「甘いものを口にすると相手の緊張もとけるの」
なんて言っているけれど、実際は自分が食べたいから出しているようなものだ。この前、甘いものが苦手な相談者が来た時は、
「あら。苦手なんですか?それならこれは私が。助手C!お客様にコーヒーを!」
なんてちゃっかり2人分のスイーツを食べていた。まあ、そんな先生の姿を見て、相談者は思わず吹き出し緊張の糸がほどけるから、あながちスイーツが問題解決の糸口となるのは間違いではない……と思う。
「イタリアンプリン食べ終わるの悲しすぎて嫌!」
「先生、イタリアンプリンの前にランチもティラミスクラシコも食べてるじゃないですか」
思わずあきれ顔になる。助手Cとして先生の体重を管理しなければならないのに。サイゼリヤの衝撃価格に気がゆるみ、デザートまで頼まれてしまった。
「せめてイタリアンプリン単品で抑えておけば」
「イタリアンプリンだけだったらフリードリンクを何回もお代わりして甘味欲を満たさなきゃならいじゃない」
「満たされている今だってもう何杯目なんですかあ!」
フフフっと笑う先生は私の小言などどこ吹く風でイタリアンプリンを美味しそうに食べている。先生本当に美味しそうに食べるなあと見惚れていると、
「ない!ないわ!」
後ろのテーブルから大きな声がした。14時になろうとする平日のサイゼリヤは老人が多い。大きな声がしたテーブルも老婦人が楽しそうに食事をしている席だったのだが。会計に行こうとしていたのだろう。みなさん上着を着ている。
「私の指輪がないの!」
「さっきまでつけていたじゃない」
「トイレに置いてきたんじゃない?」
友人の1人がトイレを見に行ったがない。もちろんドリンクバーのコーナーにもなかった。
「そういえばイタリアンプリンが来るまではあったわ」
騒ぎを聞きつけた店員が来た時、老婦人がつぶやく。
「まさか……」
「私はなにも!」
慌てる店員、とその時。
「イタリアンプリンのカラメルソースってベタついちゃいますよね」
先生が突然会話に加わった。
「あら、あなたは」
老婦人の1人が先生に気づく。
「スイーツ探偵じゃない!」
喜びの声をあげる友人に指輪をなくした老婦人が怪訝な顔を向けた。まあ、スイーツ探偵なんて間抜けな響き、怪しい以外ないしね。そんな視線にお構いなく先生は話しを続ける。
「話に夢中になっていたあなたはカフェオレを飲もうとした時、イタリアンプリンのスプーンを皿の中へ落としてしまったのに、あなたは気づかなかった。そのままスプーンを持つと指輪にカラメルソースがついて」
そこまで聞くと、老婦人は慌てて丸まったウェットティッシュを手に取る。すると中から指輪が。
「そうだわ。カラメルソースがついたからウェットティッシュで拭いていたら、話が盛り上がってそのまま……」
恥ずかしそうに周囲に謝る老婦人。店員もホッとした様子で仕事に戻る。これもまた話のタネになるわと笑いながら、老婦人たちは先生のために謝罪のトリフアイスクリームを残し帰って行った。
事件を解決し、テーブルに座り直す先生は天使のような微笑みを浮かべトリフアイスクリームを食べようとしている。
「先生の笑顔が天使に見えます」
「?」
私は先生の腕をむんずとつかんだ。
「食べ過ぎて天使のようにまん丸な笑顔になってます」
これは私が、とアイスをもらう。
「私へのご褒美なのにぃぃ」
(1572字)
🍮🍨🍰
福島さんが素敵な企画をしてくださったので、サイゼリヤに行ってまいりました。
8個しか見つからなかったです😢どうしても10個見つからないです。どなたかパーフェクトを経験した方はいらっしゃいますか?もし、いらしたらコツを教えてくださいませ。一度でいいから間違い探しをコンプリートしたいのです。
火曜・水曜と投稿内容が決まっていたため、「31投稿目を確認したら」と冗談を言っていましたが、あっという間に30投稿を超えましたね!流石福島さんです👏競わずサイゼリヤへの愛を語り合うという内容も福島さんならではの企画です😊
お陰で久しぶりにスイーツ探偵を書くことができました。
福島さん、ありがとうございました!
スイーツ探偵を知らない方のために一応ちょっとだけ作品紹介。
この他にも細かいのがありますが、代表作だけということで。