【＃毎週ショートショートnote裏お題：チョコニート】最後の言葉

彼女と初めて会ったのは病院の中庭。怪我で入院した僕は、自由な時間が沢山あった。その日も中庭でゲームをしながらチョコを食べていたら。

「それなあに？」

小さな女の子だった。その存在に気づいていたけれど、なんとなく恥ずかしくてゲームに夢中なふりをしていたのだ。

「ニィニ、それなあに？」
「え？」
「その黒いの」

女の子が指さしたのはチョコだった。

「黒くて苦そう」
「苦くなんてないさ。甘いよ。1つあげようか？」

ポキンと折って渡そうとした時。

「ダメ！」

看護師さんに怒られてしまった。女の子は病気のせいで自由にお菓子を食べられなかったのだ。チョコも食べられないお菓子の1つだった。

それから僕は退院するまでの間、女の子の前でチョコも他のお菓子も食べなかった。女の子も僕の後を楽しそうについて来る。ひとりっ子の僕は妹が出来たみたいで楽しかった。

もうすぐ退院という時、女の子が急変した。

チョコ、ニートイッショニタベタイは女の子の最後の言葉だった。

（410字）

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たらはかにさん、今週もありがとうございました。