【＃毎週ショートショートnote表お題：月夜の寝ぐせ】義賊登場

「昼間っから寝てばかり！」

大声が聞こえた途端に、体がフゥワリと浮きあがり目の前に畳が近づく。

「ぎゃっ！」

鼻と頬には畳による擦り傷が出現。

「乱暴なんですよう、起こし方が」
「あたしは亡くなった妹からお前さんのことを……」

母親の姉である伯母さんの家に俺は居候中。母親代わりとして甥っ子を可愛がってくれるのはうれしいが、毎日こう乱暴に起こされちゃ身がもちゃしねえ。

「おっと伯母さん、小言はそこまで！」
「あたしはあんたを立派な大人に……」

最後まで聞くことなく家を飛び出す。伯母さんの声が聞こえなくなったところで走るのをやめ、店を冷やかしながら夕暮れを待つ。

「おや、今日も昼まで寝てたのかい？」
「なんでわかるんだい？」
「そんな見事な寝ぐせしてたら誰だってわからぁい！」

ああそうかと反応をするとゲラゲラと笑われる。

「あそこだ！」

警吏が指さすその先には最近評判の義賊の姿。その頭からひょこんと飛び出した寝ぐせを月夜がくっきりうつし出す。

（410字）

設定は明治か大正。
義賊の名前は決まっていません。

裏お題「武器の餌付け」はこちら👇

今週は登場シリーズにしてみました♪