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【落選供養】落選作を編集の方に講評してもらって嬉しかったことと安定の落選のご報告

今月1日も「小説でもどうぞ」の落選作投稿となるのですが、その前に第34回「名人」の作品を公募ガイドの編集の方に講評していただけた話をさせてください。

公募ガイドの中にはつくログという呟きのコーナーがあり、第35回の特別企画として15名ほど編集の方に講評していただけるとメールが来ました。

プロの方に講評なんてそうそうありません。すぐ応募し講評の権利をゲット。

<最初に良い点を指摘>
・皮肉が利いていますね。発想がいい
<次に問題点を指摘>
・最後の最後で、ここまで登場していない人物が登場
・これはいわば掟破り
・冒頭に出して本編を挟む形式にするとよかった
<最後に教訓>
終盤で初出の人物を登場させてはならない。
健闘を祈ります!

第35回テーマ「名人」つくログ内での講評より抜粋

すごいですよね。ものすごく勉強になりました。落選した段階でダメダメだと思うんですよ。多分書きたいことを詰め過ぎでレベルも低くなっていたり、訴えるべき焦点もぼやけているはずです。

でも、適度に褒めて確実に学びを教えてくれる、プロの視点を少しだけ垣間見たように感じ幸せでした。落選してしまいましたが、この経験は大切に血肉としたいと思います。

さて、今月のメインである落選供養です。
素晴らしい入選作品はこちら👇

さて、私の「落選供養作品」ですが、講評を受ける前なので、思い切り禁じ手を行っています。これは確かに落選です。それがわかっただけでも講評の効果もあったと思ってください。

「平和のために」(8/31〆切)

すごいと思うのは努力を知らず結果だけを見ているからだ、思わず出た本音に周囲は目を丸くした。
「あーそうかもねー」
目が泳いでいる。いっそ怒り出された方が気持ちは軽くなるのに、下手に気のいい人達ばかりなので肯定できる部分を一生懸命に探している。
「安易にほめ過ぎたかも」
「そうだよね、努力の過程も大事だよね」
「でもさ、それって人知れず努力してるってことでしょ?」
「誰も見ていないのにだよ?」
「え?それってやっぱすご……」
ここまで言いかけて一斉に私を見る。今のはアウトかセーフかを探っているのだ。あーこの気遣いが嫌なのに!もっと罵倒してよ!八つ当たりしてもいいくらい責めたててよ!私は今、誰にぶつけていいかわからない怒りをあなた達にぶつけたいのよ!傷つけて傷つけて、
「なにあの女?」
「馬鹿じゃん?プークスクス」
と思われたいの。お願いだから私から理不尽な怒りを引き出してよ!
そのうちひとりが手に持っていたスマホをポチポチし始めた。はっとした仲間も打ち始める。あ!面と向かってはいえない暴言をSNSで拡散しようってわけね!上等じゃない。私、あなた達の裏垢を知っているのよ。いますぐ覗いてやるから。私はすぐに彼女達の裏垢を開く。えっ……。
「すごいという表現は禁止です」
「彼女は傷ついてます」
「今はそっと見守りましょう」
「プラスもマイナスも発言はダメです」
「今は沈黙だけが彼女を癒す術です」
お前ら全員聖女か?
あまりに優しい世界に発狂しかかる。それなら私が今から過激発言を書き込んで自ら炎上してやると打ち込もうとした瞬間、スッとスマホの画面が手でふさがれた。
「もうやめましょう」
「あなたは十分頑張ったわ」
「これまでの尊い努力もみんな知っている」
「今は休むべき時なのよ」
優しい笑顔に取り囲まれ流れるような動作でスマホを取り上げられる。怒鳴られもしない叱られもしない説教もない、それなのに私は彼女達に逆らうことができなかった。
「さあ、こちらで休みましょう」
「はい」
 
誹謗中傷を許さない世界が当たり前となり、恫喝や罵詈雑言が消え平和な世の中になった。人々は心安らかに生活できると優しい世界を喜んで受け入れたはずなのに「炎上したい人々」がなぜか一定数出現する。
荒れ狂う人々の心を落ち着かせるため、
さすがです
知らなかったです
すごいです
センスいいですね
そうなんですか
から連想される誉め言葉を駆使する「さしすせそレンジャー」を育成し、炎上希望者の心の火を消し続けた。それらは一定の効果を表したのだがなぜか「すごい」の時だけ異様に反応するケースが出てきた。すごいと言われると
「なにがすごいのか」
「どこを見てすごいと言っているのか」
とレンジャー達に噛みつくらしい。
そこで「すごい」に過敏な反応をする場合の対策が練られたのが、冒頭のパターンだ。癒すべき対象者をとことん優しさで包む。SNSで取り返しのつかない発言をする前に優しさに包んで本人にはわからない状態で隔離する。隔離中は徹底的に優しく徹し、自分がなぜ荒ぶっていたのかをわからなくさせれば矯正は終了。さあ、今日も荒ぶる魂を撲滅する平和活動を行わなければ。
「意味がわからない」
「だから怒りはよくないということを」
「そうね、怒りはよくないかもね」
「でしょ、だから」
「怒りはないけど約束は守るべき」
ここはとある高校の職員室。二学期が始まり一週間が過ぎようとしている。各教科の夏休みの課題の提出期限は全て過ぎ去ったが、数名の未提出者が呼び出されているのだ。たいていは最初不貞腐れた態度を取るが根負けをして提出の約束をして下校となる。しかし、約一名だけがなぜか演説を始めてしまった。
 
「なんのはなしですか?」
「世界平和についての話です」
「ちょっと先生には意味がわからない」
「だから、私の宿題に取り組むまでの努力を見て欲しいと」
「でもできていないんですよね」
「世界平和について研究していたので」
「宿題忘れでここまで語るあなたを心の底からすごいと思います」
 
そう言われ喜びの表情となる生徒に、でもそれと宿題未提出は関係ありませんと教師は言う。
「世界平和の前に私個人の平和を守るため宿題は提出してください」
もう言い逃れはできないと思ったのだろう。とうとう生徒は宿題提出を約束し、職員室を去った。
 
「いやあ、あの生徒の屁理屈すごかったですね」
と声をかけれた担当教諭は、長時間に渡り生徒の妄想を聞き宿題提出を取り付けた自分が一番すごいのに、と思ったが職員室の平和のため、
「そうですね」
と笑顔で答えた。


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