
【#シロクマ文芸部②】猫をそんなに頼らないで!
シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。第1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。
上記プラス、おばあさんが読み聞かせをするというスタイルを今年は取ることにしました。そのため、シロクマ文芸部のお題から始まる部分が読み聞かせとなり、その後に会話が続く形で物語が展開します。2025年、12個のお話を上手く完成させられるか、お付き合いいただければ幸いです。
2月の物語一回目はこちら👇
「甘いものを欲しいの」
妻にそう言われた男は猫を抱き上げ話かけます。
「ねえ、どうしたらいい?」
猫はうんざりしました。男は猫の飼い主で元は粉屋の三男坊。上の兄2人に父親の遺産を奪われオロオロしているのを見かねて猫が助けたのです。え?どうして猫が人を助けられるのかって?そりゃあもちろん、この猫が特別な猫だからです。猫はオロオロする男にむかってこう言いました。
「私のために長靴をそろえていただけませんか?」
そう!この猫はあの有名な長靴をはいた猫だったのです。長靴をはいた猫は人間顔負けの大活躍で男を美しい姫君と結婚させました。その後、猫は長靴を脱ぎ捨て姫君が飼われていた美しい白猫と恋猫となり、普通の猫として第二の猫生を楽しんでいたのです。普段は猫言葉しか話しません。男も国王となってから自信も付き、猫に話しかけずとも堂々とした国王ぶりを発揮していました。
ですから、男が妻が甘いものを欲しがるくらいで猫に相談するとは思ってもみなかったのです。男をまじまじと見つめながら猫はため息をつきました。
「ねえどうしたらいいって、あのさ……」
久しぶりに話した人間の言葉がこんな内容だなんて。
「家来に持ってこさせればいいじゃないですか」
なさけなさを隠そうともせず投げやりな返答をしました。
「あ、今、僕のことを情けないと思ったな」
「思いましたよ」
猫はヒゲを整えながら答えます。これから白猫と城の奥にある庭へデートに行くところだったのです。くだらない質問に気分を害した猫は不機嫌丸出しで答えます。
「甘いものは家来に頼んですぐに妻に持って行かせたよ。でもそれじゃないって言うんだ」
国王の威厳を微塵も感じさせない表情で男は猫に訴え続けます。眉を八の字にし口もへの字にしたその顔は、粉屋の三男坊としてオロオロしていた頃にそっくりです。
「最愛の奥さんが欲しいって言うんですから自分でなんとかしなさいよ!」
もう知恵など使いたくないとばかりに猫は男の腕からするりと抜け出し走り出しました。
「待ってよぉ!」
国王とは思えない声を出しながら男は猫を追いかけます。
🐈⬛🐈🐈⬛
「王様、面白いね」
男の子がクククと笑います。
「お姫様はなにが食べたいのかしら?」
女の子は自分の食べたいものを思い浮かべたのでしょう。お口を少しモゴモゴとさせました。
「さあ、なにが食べたいのかしらね」
「猫ちゃん頭いいんだね」
「白猫ちゃんに早く会いに行きたいのにかわいそう」
人よりもお利口な猫の話を気に入ったのでしょう。しばらく男の子と女の子は色々と話をしていましたが、だんだんとまぶたが重くなってきたようです。
「そろそろおねむみたいね。続きは来週にしましょう」
おばあさんは優しく声をかけ部屋の電気を消しました。
(つづく)
📚📚📚
実は以前、シロクマ文芸部に「長靴をはいた猫」のオマージュ作品を投稿しています。
その時のお題は「恋は猫」でした。この作品で猫は長靴を脱ぎ捨て普通の猫として生きることを選択しました。先週のお題「恋猫」を知った瞬間、この話の続きを書こうと閃きました😊
猫と恋は相性がよろしいようです♪
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。