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【#シロクマ文芸部1月④】泣き虫の王子
シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。第1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。
第1回目はこちら👇
第2回目はこちら👇
第3回目はこちら👇
星が降る夜に出会ったのは王子でした。この王子も姫と同じく見た夢でみんなに希望を与える役目をはたしていたのです。先ほどまで降っていた雪はすっかり止み、空には星がきらめいています。きらめきを終えると星はスーと流れ落ちるので、王子のまわりにも輝き終えた星がいくつかありました。
「ぼ……僕がいけない子だから追い出された」
静かに涙を流す王子。ポロリと王子が涙を落とすたびにスーっと星が空から降ってきます。ポトン。小さな星が王子のそばに落ちました。空での輝きを終えたといってもまだ光をほんのりと残しており、うずくまる王子をぼんやりと照らしています。
降ってきた星に囲まれポチンと涙を頬に残す王子は、なんだかとても綺麗でした。姫は思わず王子に見惚れてしまいます。
「きれい……」
ずっと1人で寂しかったのでしょう。姫の声を聞いた途端、王子はボロボロ涙をこぼし始めます。すると星がいくつもいくつも空から降ってきました。
ポトン、ポトンポトンポトン。ポトポトポト……
「え?」
戸惑う姫。
「うわーん!」
王子が大声を上げて泣いた瞬間、
「危ない!」
姫が王子を突き飛ばします。
ゴチン。突き飛ばされた王子は近くの樹に頭をぶつけてしまいました。
「痛い!」
悲しいだけでなく痛みまで感じた王子は更に大粒の涙を……
「泣いちゃダメ!」
姫が大声を出しながら指差しをしました。王子が姫の指す方を見ると、大きな大きな星が。ちょうど王子がうずくまっていたところにデンと落ちていました。
「あなたが泣くと星が降って来るみたいなの」
「知らなかった……」
驚きのあまりポロリと涙をこぼす王子。
チン!
小さな音と共に小さな星が落ちてきました。
「空から星が無くなったら嫌でしょ?だから泣いてはダメ」
姫はレースのハンカチで王子の涙を優しく拭き取ります。姫の優しい笑顔に見惚れながら王子は黙って頷くのでした。
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「おうじ様弱~い!」
「ママが読むお話となんか違う」
「でも面白いでしょ?」
「うん!」
元気よく返事をする子ども。
それをニコニコ笑顔で見守るおばあさん。
「さあて、今日はこの辺で」
本を閉じて子ども達の方を見ると。
スヤスヤ可愛い寝息を立てています。
「あらあら」
布団をそっと首までかけながら、おばあさんはニッコリしました。
(つづく)
来週最終回です!
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。