【#シロクマ文芸部】急な結婚
書く時間が重要なのです、と結婚宣誓書を前に神父が厳かに言う。
俺は今日、最愛の女と式を挙げる。知り合ったのは半月ほど前だが、お互いに惹かれ合い離れられなくなってしまった。
勢いに乗って教会に飛び込み、その場にいた神父に即金で結婚式を行いたい!と願い出た。
俺ら2人を見ると今はやめておいた方がいい、と神父が妙なことを言う。
「私達はぁ、今すぐぅ結婚したいんですぅ!」
うわぁ、喋り方まで可愛いかよ、と彼女にデレっとしてから、「いいから!」と神父に詰め寄った。
俺たち2人の気持ちが変わらないことがわかると渋々、式を始めてくれたが、結婚宣誓書に名前を書く段階になって急に「書く時間が大切」とか意味不明なことを言い、邪魔をし出したのだ。
「私のこと愛しているのなら書いて!」
さすがに彼女もイラついた。心なしか目が逆三角形になっている。
可愛い彼女のお願いに応えるべく、俺は神父からペンを奪い取り、宣誓書に記入をしようとした……が。
「ギャーアアアア!」
突然、彼女が顔を抑え転げまわる。
慌てて抱き起そうとした俺を神父が、
「やめなさいっ!」と制止する。
のたうち回る彼女には教会の窓から差し込む光が当たっていた。光の当たった部分から彼女の体は赤黒く変化し、人間とは思えない姿になった。
「こいつは夏のある時期になると現れる色魔だ。考えの浅い人間を騙して宣誓書で契約を取り付け、地獄へと連れていくのだ」
「え?」
すっかり悪魔へと戻った女は、
神父をギロリと睨み、
「もう少しだったのに!」
と吠えて教会を飛び出した。
ドアに触る瞬間もギャっと叫んでいた。光の差し込む教会の全てが悪魔には苦痛に感じるようだ。
「さっきは平気で教会に入れたのに」
「光の入らない時間だけ大丈夫なんだ。宣誓書が地獄に連れていくサインとなるらしい」
「だから、書く時間にこだわったのですか」
「正体を現す瞬間を待っていたのだ」
「なぜ悪魔とわかったのですか」
「私は悪魔払い担当の神父なのだ」
「マジもんのエクソシストっすかっ」
「まあ、そうなるかな」
夏は女性が魅力的になる季節。
男性の皆様、お気を付けください。
オリジナルキャラに頼ってばかりも、と考え創作しましたが、ちょっとインパクトが足りなかった気もします。
でも楽しかったです😊
小牧幸助部長、今週もありがとうございました🙌
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