【＃毎週ショートショートnote表お題：忘年怪異】変化を受け入れない①

怪異に心惹かれました。

表お題「忘年怪異」です。

👻👻👻

「なにもかも忘れたい」

涙で頬を濡らす女。泣く姿まで美しい。横の男は黙ってグラスを傾ける。

「本当かい？」
「本当よ！今年は本当に嫌な年だったわ！」
「気晴らしに飲みに行けばいいじゃないか」
「忘年会？会社の連中となんて行ってられますか！」

女はその美しさで部内ではチヤホヤされていた。自分の魅力をわかっていたのでそれが当然だと思っていた。女が右を向けば右、そんな異様な状況が2～3年続いていたのだが。今年に入り変化が起きる。可憐な新入社員が入って来たのだである。

皆の目は新入社員に向けられた。もう女が右を向いてもだれもそれに倣わない。

「ただ若いってだけで！」

キリキリと歯を立てた唇からは血が一スジ。

「こんなに美しいのに」

愚痴を黙って聞いていた男がそう言ったので、女は喜び顔をあげると男の姿が変化する。

「キャー！」

ここは年を忘れたい者がたどり着く酒場。悪い心根を持つ者がたどり着いた先では怪異が忘年を与えてくれるらしい。

（410字）

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