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「わんだふるぷりきゅあ!ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険!」感想! こむぎが寿命差の問題を自覚した時、わんぷりのテーマの本質が描かれる!

 こんにちは。プリキュア評論家のようです。今回は 「わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー! ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険!」についての感想を話していきたい。正直いうと、あまり期待していなかったのだが、想像していたより断然楽しめた。その理由として、今作は「わんぷり」のシリーズとしてのテーマや、2Dや3Dの特性を制作者側が理解し、出来る事と出来ない事をしっかり割り切った構成になっていたからだ。それでは始めていこう。

 まず今作は、前半のゲームの中に入るパートと後半の現実世界のパートに分かれている。ゲームの中ではこむぎ達のキャラデザが3DCGになり、頭身の低いマスコットのような姿になる。そして現実世界では手書きの2D作画の戻る。プリキュアの3DCGといえば、エンディングのダンスなどはクオリティが高く、国内屈指の完成度であることは有名だ。その3DCGの技術を映画本編に活かそうとしたプリキュア映画は何本かあるが、今作もその一つである。

 そして、今作の特徴として、3DCGの利点と弱点を踏まえたうえで、割り切った演出がなされている事だ。3Dのマスコット的キャラデザは当然戦闘シーンには向かない。だからこそ、3Dになるゲーム内のパートでは、こむぎ達に玉入れなどゲームの種目をこなさせたり、巨大化した狸から逃げる逃走アクションなど別の要素で絵を持たせている。さらにラスボス戦の風船割り対決も、モフルンの魔法で解決させるなど、一貫して合わないバトル描写はいれなかった。

 この辺の割り切りは思い切りが良い。バトルアクションはそれに向いている現実パートの2Dに任せ、3Dの時は、バトル以外のアクション表現に徹底する姿勢はよかったと思う。一番最悪なのは、中途半端な表現になる事だが、今回は役割の分担が明確だった。あとは、こむぎとユキがゲーム課題をこなすシーンも、スピーディーに短い間隔で新たな展開を差し込んでいき、飽きさせないための工夫がなされていた。

 さらに、こむぎがゲームのバグの中に落ちてしまい、暗闇の中でひとりぼっちになってしまうが、いろはのいる方に向かって暗闇の中階段を駆け上がっていく感動的なシーンがある。この時、敵の狸に「このままゲームの世界の中にいれば大好きな飼い主(いろは)と一緒にいられる」と囁かれる。これは、明らかに犬と人間の寿命差の問題により、いつかいろはとこむぎの関係に終わりがくることを示唆している。さらにいえば、こむぎがゲームのバグの暗闇にとりのこされるのは、「死」の比喩だ。いろはよりも早くこむぎが暗闇(死)にのまれる運命を暗示しているのだと読みとる事が出来る。

 しかし、こむぎは「いろはと一緒におばあちゃんになるワン〜」と叫び、バグの暗闇から脱出する。例えそれが叶わないにしても、こむぎは本気でおばあちゃんになるまでいろはと一緒にいたいと思っている。そうなることを信じて生きている。いつかくる未来より、今を本気で生きているのだ。その気持ちと観客の子供たちの応援(ライト振り)により、こむぎは仮想の暗闇(死)から脱出する。こむぎはいつか死によっていろはと別れる時がくる。それは動かせない。だがそれは今日じゃない。いつかくる「その時」まではこむぎはいろはと一緒に全力で「今」を生きるのだ。その意志により、暗闇(いつかくる死による別れへの潜在的な恐怖)に、こむぎは打ち勝つ。

 このシーン自体は、こむぎのいろはを思う気持ちに素直に感動した。だが、まだこれだけでは犬と人間の生きる時間の流れの違い、寿命差のテーマを描いたことにはならない。なぜなら、こむぎはこの寿命差の事を自覚していないからだ。極端な話、もしこむぎが、自分がいろはと同じほど生きられず、いつかお別れがくることを知ったら、いろはと別れたくない気持ちから、年をとらないゲーム(仮想)の世界に残ることを望んだかもしれない。こむぎが寿命差の問題を自覚したうえで、どういう答えを出す所まで描かなければ、わんぷりのテーマの本質を描いたことにはならないのだ。まあこちらはシリーズ本編の方に期待である。

 そして、今作では、ひろプリとまほプリのメンバーが参戦する。去年のひろプリが出るのはわかるが、まほプリがでるのは、今度深夜枠でシーズン2をやるからその番宣を兼ねてだろうか?プリキュアは今や20年以上続いているコンテンツであり、もはや巨大なデータベースである。だからこそ、今作のように現行シリーズと他のシリーズを選択して接続させることが出来る。ここ数年、ヒープリとファイブだったり、トロプリとハートキャッチなど、シリーズの時系列に関係なく、様々なシリーズ同士を絡ませて作品を盛り上げている。こういった事が出来るのも、20年の歴史があるプリキュアシリーズならではの強みだ。

 あと大福と悟くんが映画限定で変身したが、本編で変身しないキャラを変身させるのは、キュアモフルンと同じようなパターンであるが、本編の方では難しいから映画限定で使ったアイデアというような感じもした。商業的な理由からも、本編のレギュラーキャラとして男の子プリキュアを出すのはなかなか難易度が高いのだろう。去年のひろプリのツバサくんは、一応初の男の子プリキュアという事になっているが、厳密には鳥であり人間ではないし、見た目は女の子寄りだし、完全な男の子プリキュアではない気もする。悟くんがプリキュアになれば、ちゃんとした人間の男の子が初めてプリキュアになったとい事になるが、そういった展開はまだまだ難しいのかもしれない。

 あとは、動物と人間の絆は、言葉とは別の所での繋がりであるという、わんぷりというシリーズだからこそのメッセージが入っていたのはよかった。こむぎもユキも今でこそ人と話せるが、こむぎといろはの関係は、プリキュアになって話せるようになる前から2人の間で絆は成立していた。動物と人間の絆の形は、言葉よりも前の、気持ちの部分で通じ合う事ができる。わんぷりらしいメッセージだ。

 とまあこんな感じで、今作はかなり楽しめたし、細かい部分まで気が利いているかなりいい作品だと思う。わんぷり本編の方も終わったら徹底総括する予定なのでそちらもよかったら読んでください。ではまた。

 

 

 

 

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