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ドラマ『ドクターY』の闘牌は全然ガチじゃなかった
ドラマ『ドクターY』は、『ドクターX』ではコメディリリーフとして登場する「腹腔鏡の魔術師」こと加地秀樹医師(勝村政信)を主人公とするスピンオフシリーズです。
『ドクターX』の主人公であり、一匹狼の天才外科医である大門未知子(米倉涼子)は、「群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い」と紹介されます。それとは対照的に、「群れを好み、金を愛し、腹腔鏡のスキルと要領のよさだけが彼の武器だ」とナレーションでも散々な言われようの加地先生ですが、医者としてはそう悪くはないというか、むしろ未知子よりまともなのでは、と思わせるシリーズになっています。
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1.ストーリー
『ドクターY』は、第1弾から第3弾までは配信ドラマとして十数分ずつ細切れに配信されましたが、第4弾から第7弾までは2時間ドラマとして放送されました。
第1弾(2016)
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第1弾は、ガルパンで有名になった茨城県・大洗の分院で、政治家の娘を手術する話でした。何ということもない話でしたが、難易度の高い手術にはやる若手医師への説教シーンで、加地の今までにない一面を見ることができました。
「手術はチャレンジじゃないんだ」
「そうやって何でも一生懸命やれば、世の中すべての命が救えると思ってんのか。そんなのは医者の傲慢だ」
「デーモン、聞いてっか?」というか、スーパードクターがすべてをかっさらう本編を補完するかのように、この『ドクターY』はもう少し地に足のついたシリーズにしたいという制作者の意図が伝わってきます。……と思ったのですが、第2弾以降は、やっぱり地面から足が離れてしまった感じですね。
ちなみに、麻雀シーンはありませんでした。
第2弾(2017)
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山梨のわけあり病院での当直の一夜を描いた第2弾は、横溝正史風ホラーから始まって、意外な真相が明らかになって終わります。
一応、第1話の冒頭で、未知子と神原(岸部一徳)と加地が麻雀を打つシーンがありました。
第3弾(2018)
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第3弾は、静岡の分院で、加地が教授選に出馬する話でした。教授選がネタになるのは、『ドクターX』の第2期以来ですね。何やかんやあって落選するわけですが、ドラマ自体よりも、加地がチアガールと踊る次回予告の方が面白かった気がします。
第3弾は、最終回(第6話)のエンディングで、未知子と神原と加地がブラック牌を使って三人麻雀を打つシーンがあり、ここで加地は役満のダブロンをくらっていました。
第4弾(2019)
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第4弾は、7年前に加地が行った手術の真相をめぐるミステリー仕立てになっていました。それに加地の隠し子騒動がからみますが、そんなに感動しないかな……。しかし、政治権力があれば何でもできるってのはどうなの?
第4弾も、エンディングで未知子と神原と加地が三人麻雀を打ち、加地は未知子に国士無双を振り込んでいました。
第5弾(2020)
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『ドクターX』は2020年には放送されなかったので、2020年10月に放送されたこの第5弾が、新型コロナウイルスが流行してから初めてのシリーズ作品になります。しかし、誰もマスクをしておらず、「コロナ」という言葉も出なかったので、コロナ前の撮影なのかと思っていたら、Zoom飲み会や拳を合わせないグータッチは出てきました。コロナをガッツリ描くと、撮影もストーリー作りも大変だからかな🤔
この第5弾には未知子もけっこう出てきましたが、それ以上に第三の医者「ドクターZ」――麻酔科医の城之内(内田有紀)に焦点が当てられていました。城之内は、『ドクターX』本編では、未知子をそつなく補佐する相棒ポジションですが、麻酔科医がどんな仕事なのかはあまり描かれてきませんでした。しかし、第5弾では、以下のようなセリフもあり、麻酔科医の重要性についてふれられていました。
「麻酔って、みんな簡単に言うけど、患者を意図的に眠らせるって、実はすっごく危険な行為なのよ。私たちはそれを担ってるんだから、しっかりしてちょうだい」
患者に合わせて麻酔を適切に投与することは簡単ではなく、高難度の手術を行うためには優秀な麻酔科医が欠かせないことは、医療マンガ『医龍』でも語られていました。
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第5弾の加地は、出世のために道を誤った同僚医師を一喝するなど、エラくまともに描かれていました。麻雀シーンがやはりエンディングにあり、今回は城之内も入っての四人麻雀でした。
第6弾(2021)
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第6弾は、加齢で手術の腕が鈍り、若手医師からも「老害」とバカにされた加治が、復活を賭けて危険な手術に挑む話でした。第1弾で言っていた「手術はチャレンジじゃないんだ」というセリフはどこへやら、全然、地に足のついたシリーズじゃなかった……😣 未知子はまったく出てこず、城之内・海老名(遠藤憲一)の協力の下に、加地は手術をやり遂げます。ところで、現役にこだわるキングカズの紙芝居を長々とやったのは、「カズ」と「カジ」をかけてるからなの?
この第6弾の直後に放送された『ドクターX』第7期は、まさにコロナ禍の話でしたが、このドラマでは、コロナにはまったくふれられませんでした。また、麻雀シーンもありませんでした。
第7弾(2024)
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成功率や生存率が低く術式が確立されていない危険なオペにも、臆することなく挑戦する医師たちがいる。彼らは、敬意と皮肉を込めてこう呼ばれている。「命を天秤にかける悪魔の外科医」――またの名を「ドクターX」と。
しかし、彼らは無謀なだけではなく、ズバ抜けた技術で医学界が二の足を踏む術法を展開させ、救えない命を救ってきたのも事実である。
映画公開の直前にプロモーションとして放送された第7弾は、加地が、東帝大の医学生を指導するという話でした。その中の一人・東村(西畑大吾)は、フィクションにありがちな「優秀だが血の通わない若者」として描かれていました。
たとえば、加地に「患者を練習台に使うつもりか」と叱責されても、東村は以下のように反抗します。
「実践ほど身につく練習はありませんから」
「医者は、失敗の数だけ上達するんじゃないんですか?」
あるいは、先輩医師に、患者の意思に反しても珍しい症例の手術をやるよう勧めます。
「(その患者が死んだとしても)貴重なデータが手に入るんです。未来の患者が何千人も助かるかもしれないのに」
このようにまったく好感の持てない東村ですが、横紙破りな医療行為といい、珍しい症例に飛びつく姿勢といい、実はやっていることは『ドクターX』の主人公・大門未知子とそんなに変わりはないんですね。未知子は「絶対に失敗しない」という主人公特権を与えられているので、何をやっても「すべて患者のため」と言い張ることができるだけです。そもそも、ドクターXとは、「命を天秤にかける悪魔の外科医」と呼ばれる無謀な医師集団のことなので。
つまり、この話は、言ってみれば「ドクターY VS ドクターX」だったわけです。
ドラマ中盤で、東村は、学生の身でありながら勝手に医療行為をしたことが問題となり、東帝大を退学になりかけます。こうなると、メフィストフェレス役の神原さんが暗躍して、東村をドクターX一派に引き込むのではないかという期待が高まります。しかし、残念ながら、長年疎遠だった父親(及川光博)と加地に説得されて、東村はあっさり光堕ちし、退学の件もなかったことになります。
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やや期待外れの展開ではありましたが、終盤で、以前たずさわった手術について、加地は東村に次のように話します。
「どんなに完璧なオペをしても、不幸な合併症は起こりうる。それは誰にも予見できない」
『ドクターX』では、手術は常に完璧に行われ、術後不良が起きることもありません。しかし、それはあくまでドラマの中だけの話であって、現実はそうじゃないよと。何やかんやあったけど、『ドクターY』は最後はつま先だけでも地に足をつけており、本編を補完する意味のあるスピンオフだったと思います。
あと、テレ朝さん、一番の見せ場だったエンディングのダンスシーンは、切り取って動画に上げないのん?🥺
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2.麻雀シーンまとめ
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ガチとかガチじゃないとか言う以前に、『ドクターY』には、麻雀シーン自体ほとんどありませんでした。今回は加地が主役ということで、『ドクターX』本編の未知子に代わって、振り込み役を一手に引き受けています。
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『ドクターY』の麻雀シーンは、役満が出まくるだけで特に見どころはないので、後はひたすらミッチー(及川光博)の話をしますね。
ミッチーは、第7弾に、加地のかつての親友であり、東村(西畑大吾)の父親でもある楠田という役で登場しました。
マグロ漁船に乗れば強くなる(第7弾)
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ミッチーは、わけあって18年前に医者をやめ、それからはずっとマグロ漁船に乗っていたという人物でした。
捕鯨船やマグロ漁船に乗れば麻雀が強くなるというのは、麻雀の世界では常識です。
『哲也』では、主人公の相棒であるダンチが自ら捕鯨船に乗り込み、乗組員相手の麻雀で荒稼ぎしていました。
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『天牌』では、ヤクザの代打ち・山田が、組の若頭の無茶ぶりでマグロ漁船に乗せられ、不動の強さを身につけていました。
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そうなると、18年もマグロ漁船に乗っていたミッチーの実力も知れようというもの。麻雀シーンに一瞬だけ顔を出し、あわただしく場を去った未知子の代打ちをつとめたミッチーは、あっさり加地から純正九蓮宝燈をアガります。
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このアガリを見た神原や城之内が「こんなキレイな手、初めて見た!」などと言うのですが、何言ってんだ、こいつら? 純正九蓮は今まで死ぬほど出とるやんけ。
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このアガリの直後、ミッチーは派手に吐血してぶっ倒れるので、今回の純正九蓮宝燈は、久々に死亡フラグとしての役割を果たしたことになります。
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はあ、終わった、終わった。麻雀シーンは味気なかったけど、第7弾のダンスシーンは、最後にいいもん観たなあという感じでした。
後は、ドラマ全体の麻雀シーンをまとめた記事を書いて、いよいよ映画を観に行こうと思っております😌