麻雀の市場規模データを更新しました(2024年版) その1
先月末に『レジャー白書2024』が出版されたので、麻雀をはじめとする各種レジャーの2023年のデータをまとめました。
麻雀とは直接関係のない部分が長くなってしまったので、そちらは「その2」としてパートを分けました。
0.ファストまとめ
コロナ以降は復調傾向にあった麻雀の参加人口・市場規模は、ここにきて減少。特に麻雀ゲーム料はコロナ期並みの危険水域
参加人口の内訳は、20代が最多年代となりシニア層の麻雀離れは継続。最も増えたのは10代女性
2023年の上位レジャーは、男女とも「1位 国内観光旅行、2位 外食」とほぼコロナ前と同じに
AIの導入によって、Mリーグ放送では実況・解説の地位が危うくなるかも
1.麻雀の参加人口・市場規模はともに減少
『レジャー白書』に見る麻雀の現在(2023)
『レジャー白書2024』によれば、2023年の麻雀関連のデータは以下でした(調査時期は2024年1〜2月)。
雀荘数については、警察庁の以下のページから「令和5年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」を参照していますが、現在は非公開になっていますね。再公開時に数値が変わっていれば、そのときは修正します。
麻雀の参加人口・市場規模は、2020年にコロナ禍でドーンと落ちた後、2021年からは復調傾向にありました。このままコロナ前の水準まで戻せるかと思われましたが、2023年は参加人口・市場規模ともに減少しています。
参加人口は、一般人へのアンケート調査からの推計なので、年によってブレがあります。しかし、市場規模は、『レジャー白書』が「各種資料や独自調査に基づいて算出した推計値」(81ページ)です。つまり、アンケート結果より信頼度の高い数字だと考えると、「麻雀ゲーム料」がコロナ直後の2021年と同じ「350億円」というのは、かなりヤバいのではないかと。
警察庁発表の雀荘数は、近年は毎年300軒ほど減り続けています。しかし、この数字には廃業届を出していないため営業扱いになっている店舗も多く含まれているということなので、実際の雀荘数についてはよくわかりません。
2024年11月19日現在、「麻雀王国」のカウンターでは掲載雀荘数は2,826軒でした。近年、この掲載雀荘数はずっと4千軒弱だったので、一気に千軒も減ったことになります。わずか1年でそれだけの雀荘が閉店したとは考えにくいので、以前から閉店していたが放置していた雀荘のデータを整理したということでしょう。実際に稼働している雀荘は、思っていたよりも少ないのかもしれません。
コロナ禍によって「麻雀にハマる人はよりハマる」状況となり、近年は、麻雀の年間平均活動回数や年間平均費用は相当上がっていました。しかし、2023年にはどちらも落ち着きつつあります。それでも、麻雀は、「2019〜2023年に年間平均活動回数が増加したレジャー」で8位でした(1位は動画鑑賞、2位はテニス、3位は家庭用ゲーム)。
2.上位のレジャーはほぼコロナ前に戻る
2023年のレジャー市場の規模は前年比13.4%増加の71兆円であり、コロナ前の2019年は72兆円だったので、おおむね回復したと言っていいでしょう。市場規模から見れば、2020〜2022年が、コロナ禍によって「失われた3年」だったということになります。
『レジャー白書』が分類する4部門では、観光・行楽(前年比32.1%増)が、コロナでの縮小が大きかった分、2022年に引き続き大きく伸びました。娯楽(12.6%増)は全般的に回復し、パチンコさえ長期低迷を脱しています。スポーツ(3.6%増)では球技スポーツ用品・スポーツ観戦が伸び、趣味・創作(1.7%増)では鑑賞レジャーが回復しました。コロナ前とくらべて、レジャー市場における各部門の比率が変わったということもなく、ほぼ元通りになっています。
旅行! メシ! 動画鑑賞!
2022年に引き続き、レジャーの首位だったのは、国内観光旅行(4,740万人)でした。2位に外食(3,820万人)、3位に動画鑑賞(3,600万人)と続きます。
2019年の動画鑑賞(3,510万人)は8位だったので、主要レジャーとして定着したのかと思いましたが、参加人口自体はそれほど変わっていないので、他のレジャー(読書・ドライブ・映画等)が回復すれば、再び順位を落とすかもしれません。
男女別に見ると、男性は「1位 国内観光旅行、2位 外食、3位 動画鑑賞」、女性は「1位 国内観光旅行、2位 外食、3位 読書」とほとんど同じですね。
年代別に見ると、国内観光旅行は、10代を除いてどの年代でも人気でした。「SNS、ツイッターなどのデジタルコミュニケーション」(2,540万人)は、10代・20代男性ではそれぞれ2位、10代・20代女性ではそれぞれ1位でした。若者のSNS人気はコロナ前から続く一方、男女とも40代以上では、SNSはトップ10にも入っていませんでした。
モノよりサービス
2023年には、余暇時間も余暇支出もコロナ前の水準に戻りつつありますが、余暇時間はコロナ前とそうは変わらないのに対して、余暇支出にはかなりゆとりが出ています。
コロナ以降、増え続けている教養娯楽費の内訳を見ると、モノとしての教養娯楽用品や書籍よりも、サブスクやスポーツ・文化施設の入場料といった教養娯楽サービスに多く支出する「モノよりサービス」という流れが続いています。
個々のレジャー
上記は「2023年の余暇活動」の引用ですが、麻雀の動向がこういうのに載ることはないんですよね🥺
それはともかく、将棋では、2023年10月に藤井聡太竜王が八冠を達成しましたが、将棋人口は横ばいでした。しかし、年代別データを見ると、シニア層は減る一方、若年層は微増していました。八冠達成がどのような影響を及ぼすのか、『レジャー白書』の調査対象外である14歳以下の子供人口や、今後の展開は気になるところです。
また、囲碁は、若年層が増えていないのに加えて、メインのシニア層もコロナ以降は減少の一途をたどっています。ヤバいです。
家庭用ゲームでは、SwitchやPS5等のハード市場が特に好調でした。また、ゲーミングPC市場の規模が拡大しています。そのほか、『パルワールド』や『スイカゲーム』のヒットが、近年のインディーゲーム市場の成長を強く印象づけています。
コロナで一旦は激減したゲームセンターも、コロナ前の水準まで回復し、特にクレーンゲームが人気です。これには、2022年に、プライズゲームの景品上限価格が800円から千円に引き上げられたことも影響しています。その一方、コロナ禍で注目を集めたオンラインクレーンゲームは、役割を終えたとばかりに縮小しています。
パチンコ・パチスロは、参加人口は110万人減ったものの、市場規模は3年連続の横ばいを脱却し7.5%増加しました。これはギャンブル化が進んでいるということであり、1人当たりの年間平均費用は、2022年の8万8400円から、2023年は10万9千円にまで上がっています。
「パチンコの売上げは減少したが、パチスロがそれをカバーする大きな伸びを示した。パチスロ機は「スマスロ」が若年層を中心に好評を博し、大きく市場をけん引した」(111ページ)とのことですが、スマスロは導入コストが大きいため、資金力の乏しい企業には撤退をうながす諸刃の剣となっています。ファン層のマニア化が進んでいることから、業界は、広告によるイメージアップで若年層の取込みをはかるということでした。
公営ギャンブルはあいかわらず好調で、ボートレースがやや減少した以外は、中央競馬・地方競馬・競輪・オートレースはすべて増益しています。
宝くじでは、公式サイトの会員(=ネット購入者)の数が700万人を超えました。スポーツ振興くじでは、サッカーはアジアカップ(2024年1〜2月)、バスケはワールドカップ(2023年8〜9月)と大規模な国際大会によって、2022年発売のWINNERの売上げが上がっています。
3.麻雀の最多年代は20代、最も増えたのは10代女性
20代のMリーガーがいなくなる
2022年には、麻雀人口の年代別比率に大きな変動がありました。中高年は減る一方で若年層は増えたため、全体的にかなり若返ったんですよね。2023年もこの流れは変わっておらず、若年層の占める割合がさらに増えています。
その一方、Mリーグからは20代のMリーガーがいなくなりました。新Mリーガーが2人誕生しましたが、抜けた2人も含めて全員30代だったので、加入による変動はありませんでした。Mリーガーの平均年齢は、昨年の40.4歳(2023年11月29日)から、メンツがほとんど変わっていないので、今年は41.5歳(2024年11月19日)に上がっています。
シニア層の麻雀離れがさらに進む
2023年の麻雀人口を年代別に見ていくと、前年と変わらず、最多年代は20代でした。男女とも10代(15〜19歳)が最も増えている一方、60代以上のシニア層は、コロナ以降、減り続けており、ここ数年で60代以上の高齢化率は急激に下がっています。
次回記事の「その2」で書いていますが、コロナ以降、シニア層の参加人口が減り続けているレジャーは麻雀以外にもいくつかあります。ただ、麻雀は、若年層の増加がシニア層の減少をカバーしているため、全体としてはそこまで減っていない例外的なレジャーとなっています。
4.AIの侵略はどこまで進んだか?
本noteでは、麻雀界へのAIの侵略に対して、警鐘を鳴らし続けてきました。しかし、Mリーグ放送でもAIへの依存は年々強くなるばかりです。
Mリーグ放送の新機能
Mリーグの放送画面では、毎年、新しい機能が追加されています。今年も、実況の日吉辰哉プロによれば、「メチャクチャすごい機能」が追加されました。
Mリーグも7年目を迎えて、いろいろと様変わりしているなと思ったので、新機能に関して、Mリーグ初年度の2018年10月1日の開幕戦と、今シーズンの2024年9月16日の開幕戦の放送画面を比較のために載せました。なお、初年度の方は、パブリックビューイング会場で観戦する関係者の姿がワイプに映っています。
■待ち牌の枚数カウント
■鳴き牌表示
もうダメだ。さよなら、日吉さん、ツッチー……😢
手牌チューブはもう役割を終えたのか?
話は変わって、以前紹介した、Mリーグの全員の手牌をAIで読み取って一覧表示する「手牌チューブ」を見ていきます。手牌チューブは、2021年4月13日にサービスを開始し、2023年10月27日のライブ配信を最後に現在は休止しています。初めて見たときは「これが未来か!」と色めき立ったものでしたが、手牌チューブの機能は、現在のMリーグ放送にどの程度実装されているのでしょうか。
上に貼った開発者さんのnoteとXに書かれていた手牌チューブの機能をまとめると、以下になります。
■ドラ・当たり牌のハイライト表示
ドラ・当たり牌のハイライト表示は、「それは切っちゃダメぇ!」というのがわかりやすくなるので、Mリーグでもあったらいいなと思いました。現在の技術ならリアルタイムで投影可能な気もしますが、手牌の位置を入れ替えたりするから難しいかな。
■シャンテン数表示
シャンテン数表示は、手牌進行の度合いをわかりやすく示せるので、特に麻雀初心者にとっては助かるんじゃないでしょうか。
■チーム順位変動表示
画面下部の「この試合が現在のスコアで終わったら、チーム順位はどうなるのか?」の表示は、特にシーズン終盤はすげえ見たい気がしますね。しかし、そうなると、試合終了後の順位発表のドキドキタイムの意味がなくなるので、採用できないかな。
このように、手牌チューブの機能は、現在のMリーグ放送である程度は実装されています。しかし、このサービスのキモは、全員の手牌・状況が一画面で把握できることにあるので、やっぱり本放送とは別の切り口として貴重だと思うんですよね。
手牌チューブさんの配信休止は、負担が大きいことや視聴数がそれほど伸びないことが理由のようです。Mリーグ成績速報(非公式)さんをはじめ、Mリーグ人気はこういった熱狂的なファンに支えられていると思うので、ABEMAのサブ画面にでも有償で採用してもらえないかなあ……。
次回に続きます。