2022-2023シーズンのチーム戦略
Mリーグ2022-2023のレギュラーシーズンは先月で終了し、赤坂ドリブンズとセガサミーフェニックスの敗退が決定しました。セミファイナルを目前にした今、改めて、今シーズンのチーム戦略を振り返ってみたいと思います。
1.今年のチーム戦略はどうだったか?
チーム戦略まとめ
今シーズンの傾向としては、各選手の出場試合数を均等に近づけるチームが大幅に増えています。Piratesのように、チームメンバーを一新してエース頼みをやめたチームもありますが、昨シーズンは起用が少なかった風林火山の二階堂瑠美プロ、ABEMASの日向藍子プロ、フェニックスの東城りおプロのような選手が自らの活躍で出場試合数を伸ばしたため、結果的に均等に近づいたチームが多かったです。
その一方で、雷電は、従来の平等な起用から、稼ぎ頭となった本田朋広プロを多用し、萩原聖人プロの起用を減らすDF戦略に切り替えています。
例年と同じ戦略を取ったチーム
■麻雀格闘倶楽部(1位)【雷電戦略】
麻雀格闘倶楽部は、チームメンバーを一新した昨シーズンから、エースの佐々木寿人プロ頼みのファイトクラブ戦略を過去のものとし、選手を平等に起用する雷電戦略を取っています。今シーズンは、特に、ほぼ完全に均等になっています。
■サクラナイツ(4位)【ドリブンズ戦略】
サクラナイツは、終盤に、8戦5トップの好成績を上げた内川幸太郎プロの起用が目立ちました。しかし、堀慎吾プロ・渋川難波プロの協会コンビの起用が元々多かったため、全体的には、内川プロの出場試合数は二番手にとどまりました。例年どおり、岡田紗佳プロの起用が少ないドリブンズ戦略を継続しています。
戦略を変えたチーム
■風林火山(2位)【DF戦略 → ファイトクラブ戦略】
風林火山は、昨シーズンは大きくマイナスした瑠美プロの起用を抑え、松ヶ瀬隆弥プロを多く起用するDF戦略を取っていました。しかし、今シーズンは、3桁プラスと好調の瑠美プロを二階堂亜樹プロ・勝又健志プロと同じくらい起用する一方、昨シーズンに引き続き、MVP狙いもあって松ヶ瀬プロを多用したため、ファイトクラブ戦略の形になりました。
なお、勝又プロも好成績でしたが、MVPよりも4着回避率のタイトルを重視したのか、終盤、そこまで連投はされませんでした。その結果、タイトル獲得に至っています。
■ABEMAS(3位)【ドリブンズ戦略 → 雷電戦略】
ABEMASは、例年は起用が少なかった日向プロが稼ぎ頭となったことで、各選手の出場試合数が均等に近づきました。日向プロは20戦を超えて出場し、4着回避率のタイトル獲得条件を満たしましたが、終盤にラスがかさみタイトル獲得とはなりませんでした。
■雷電(5位)【雷電戦略 → DF戦略】
雷電は、従来の平等な起用から、稼ぎ頭となった本田プロを多用し、萩原プロの起用を減らすDF戦略に切り替えています。思いがけず、「DF戦略を取った場合、最も恩恵が大きいチームは雷電」「20戦を超えると、カモは悪カモになりやすい」という本noteの指摘と合致する結果となりました。
■Pirates(6位)【ファイトクラブ戦略 → 雷電戦略】
Piratesは、今シーズンからチームメンバーを一新し、エースの小林剛プロ頼みのファイトクラブ戦略から、雷電戦略に切り替えています。
■ドリブンズ(7位)【ドリブンズ戦略 → DF戦略】
ドリブンズは、従来のドリブンズ戦略から、唯一プラスだった園田賢プロの起用を突出させるDF戦略に移行しました。特に、最終20戦では、園田プロは半数の10試合に出場しています。なお、丸山奏子プロの12試合目は、昨シーズンと同様に、セミファイナル進出が不可能になってからのファンサービス的な起用でした。
■フェニックス(8位)【ドリブンズ戦略 → 雷電戦略】
フェニックスは、例年は、オリジナルメンバー3人(魚谷侑未プロ・近藤誠一プロ・茅森早香プロ)を多く起用するドリブンズ戦略を取っていました。しかし、今シーズンは、昨シーズンから参加の東城プロが唯一のプラスとなり、終盤は完全にエースになっていました。ですが、最終盤になってからは、頼みの綱の東城プロも5戦3ラスと振るわず、連投がストップしたため、結果的には全選手の起用がほぼ均等となる雷電戦略の形になりました。
2.分散と集中
各チームの出場試合数の分散
各チームの出場試合数の分散を下の表にまとめました。各選手の出場試合数が均等に近づくほど、分散は小さくなります。
この表を見ると、ほとんどのチームで、年を追うごとに分散が小さくなっていることがわかります。たとえば、初年度の2018年には、寿人プロを極端に多用し、最も分散が大きかった麻雀格闘倶楽部は、2022年には、Piratesと並んで各選手をほぼ完全に等しく起用するようになっています。
なお、「分散が小さいほど、レギュラーシーズンの成績がいい」ということはまったくなく、2019〜2022年の4年間では、最も分散の大きいドリブンズと最も分散の小さい雷電の平均順位は同じ6.0位になっています。
ただ、個人的には、選手の成長や実力の高い選手の獲得によって、各選手の起用が均等に近づくのはよい傾向だと思っています。
終盤にエースは投入されたか?
レギュラーシーズンの帰趨がほぼ決した終盤、負けているチームはエースをどのくらい投入したのか? 最終20戦の各選手の出場試合数と獲得ポイントを調べてみました。
91試合目(3/17)に7位に浮上するまで長く最下位だったドリブンズは、エースであり唯一プラスの園田プロをこれでもかと連投しています。当初はセミファイナル進出に望みをかけていましたが、最終盤は、チームは予選落ちするにしてもせめて園田プロにMVPを取ってもらいたいという意味での連投でした。園田プロは10戦4トップと健闘しますが、MVP獲得はかなわず、個人4位で今シーズンを終えています。
終盤のフェニックスは、完全に東城プロがエースになっていました。しかし、東城プロは最終盤の成績が5戦3ラスと振るわず、MVP戦線からも後退したため、ドリブンズほどには連投されませんでした。
終盤は、ほぼドリブンズとフェニックスの敗退が決定したため、その他のチームで特定の選手が多用されたのは、MVP狙いのためでした。その一方、72試合目(2/9)からポイントトップに立った伊達朱里紗プロは、終盤も通常のペースで出場していました。しかし、最終戦(3/20)では、本田プロ・瑞原明奈プロと華々しいMVP争いを繰り広げ、見事、MVPに輝きました。
3.DF戦略の世界線
今シーズンは、例年好調だった各チームのエースが何人も大きくマイナスする年になりました。特に、4年連続200ポイント超の不沈艦・多井がまさかの轟沈、深海棲艦となったのは驚きでした。
麻雀にエースとかカモとかなかった……。ということで、順当にエースが勝ち、カモが負けることを想定しているDF戦略が通用しないシーズンとなりました。
世界のHONDAの世界線
今シーズンで、エースが勝ち、カモが負けているチームは、雷電とドリブンズだけです。周知のとおり、ドリブンズはすでにドリブンズ戦略を取っているので、今シーズン、「もしDF戦略を取っていたら」という想定が意味を持つのは、雷電だけになります。
雷電はすでに、本田プロを多用し(28戦)、萩原プロの起用を減らしています(19戦)。しかし、これをさらに徹底し、本田プロ:37戦・萩原プロ:10戦としてみます。その場合、雷電は、現在よりも243.5ptを上積みし、201.1ptのプラスとなり3位に浮上していました。
続・エース東城の世界線
今シーズンは、3チーム(ABEMAS・サクラナイツ・フェニックス)で、エースとカモの逆転現象が起きています。それが特に顕著なのは、エースの魚谷プロが大負けし(-355.2pt)、カモの東城プロが大勝ち(163pt)したフェニックスです。
では、現実の魚谷プロ:24戦・東城プロ:24戦の試合数を付け替え、魚谷プロ:10戦・東城プロ:38戦としたら、どうなるか?
その場合、フェニックスは、現在よりも302.3ptを上積みし、-272.1ptで7位にはなりますが、6位のPiratesとはまだまだ200pt超の差があり、やはり予選落ちに終わりました。
エースとカモのランキング
4.セミファイナル以降の展望
セミファイナル以降では、例年、多くのチームがDF戦略に近い選手起用を行っています。
※下の表では、3人チームと4人チームでは、出場試合数による色分けを変えています。
例年のセミファイナルの傾向
セミファイナルでは、当落線上のチームほどDF傾向が強くなります。今シーズンのセミファイナルは、トップの2チームが抜け出し、3〜6位はポイントにほとんど差のない団子状態です。そのため、これらの4チーム(ABEMAS、サクラナイツ、雷電、Pirates)のうち、序盤にポイントを稼げなかったチームはDF戦略を取る可能性があります。例年のセミファイナル以降の戦いぶりからは、サクラナイツと雷電のDF傾向が強いですね。
なお、今シーズンから、セミファイナルの試合数は、これまでの各チーム16試合から20試合に増えています。
■セミファイナルの出場試合数
■セミファイナルの出場試合数の分散
例年のファイナルの傾向
ファイナルでは、ここ2年、DF戦略を徹底したチームが優勝しています。2020年は、風林火山の勝又プロが12戦中7戦出場し驚異の5トップ、2021年は、サクラナイツの堀プロが12戦中7戦出場し2トップで優勝しています。
現在、大量のポイントを有しファイナル進出が濃厚な2チーム、風林火山と麻雀格闘倶楽部は、それぞれ最もDF傾向が強いチームと(チームリニューアル以降は)最もDF傾向が弱いチームと対照的です。各チームがどういった選手起用をしていくのか楽しみですね。
今シーズンからは、ファイナルの試合数も、これまでの12試合から16試合に増えています。
■ファイナルの出場試合数
■ファイナルの出場試合数の分散