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リスボンの熱。その2

「リスボンの熱。その1」からのつづき。

ルイスそしてパートナーのマヤが住む家の2階の一室が私の部屋だった。家の外面は石造りの中世の佇まいのままだが内装はしっかり現代的にリフォームされている。石や煉瓦で作られた建物が多く地震が少なく崩れにくい土地柄だからこそ成り立つ考え方や歴史のアップデートだと思う。「古都」として売ってる地域以外は古い建物をリフォームしたら使えるのにすぐに壊してしまい安っぽく使いづらいものを作ってしまいがちな日本からやってくるとそこはやはり羨ましく思う。

身長183センチの私が思いっきり伸びても充分広いベッド。ありがたい。ベッドの大きさも私が海外に来て、いいなぁ楽だなぁと思える理由の1つ。昨夜はロンドンからの飛行機移動、深夜に到着してからタクシーを並んで待ってから乗り家に到着してからルイスとリスボンの「まちぐゎー」でビールを飲んだこともあり疲れが一気に吹き出たんだろう。爆睡できて自然に目が覚めた時には閉めきっていた見開きドアのような木でできたカバーの周りから光の輪郭が綺麗に浮かび上がっていた。明らかにその日差しはお昼をゆうに過ぎているものに感じた。

でもスマホの時計を見るとまだ午前10時過ぎだった。海外にいるときの癖だがすぐに日本時間を考えてしまう。8時間差だから日本は午後6時かぁと思いながら夏のポルトガルは日差しも紫外線も強いというのをどこかで見たことも思い出した。ルイスから「自分のカフェに良かったら来ないか?」というメッセージが入ってた。まだベッドが恋しかったけど新しい場所への憧れが少し上回った。

シャワーを浴びてさっぱりしてから昼間の街に出かけた。そこは坂道がやたら多く小道ばかり。しかも全部石畳。Google mapsで今いる場所を確認したらルイスとマヤが住んでいる地域がアルファマという名前でポルトガルを代表する歌の総称「ファド」の聖地だった。それを知らずに2人の家を何の気なしに奄美で出会ったアメリカ人チャックに紹介してもらってたことがなんだかとてもおかしくうれしくもあった。ファドの聖地。そこに泊まってるということだけでテンションが上がった。

歩いているとアジア系の男性が街並みをスケッチしてるのが見えた。近づいて「もしかしたら日本の方ですか?」と訊いてみた。その男性は「やっぱり日本人ってわかりますかね〜」と優しい口調で微笑んだ。その方は細身で、芯がめちゃくちゃ強そうな印象を受けた。奄美に美術館があり見るたびに新たな感銘を受ける画家・田中一村がもし生きていたらこんな感じだったのかなぁとも思いながらその方と少し立ち話をした。訊くと定期的にスペインやポルトガルに来てはスケッチをしているらしい。今まさに描いているものを見せていただいた。さっさっと描いてるようだが街の空気をよく捉えてるなぁと感じた。お互いの名刺を交換してどこかでの再会を願ってそこを離れた。日差しが暑くたまに吹く風が心地よかった。


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