◆この世界という書物の記号を読み解きながら生きる「記号人間」(佐藤信夫)たる私たちは、作り示すモノの意図に逆らって「逆なでに読む」(C・ギンズブルグ)方法を身につける必要がある。押し付けられた諸項の接続秩序(分節体系)を自身のそれで切り結び返すことに、自由と創造の鍵が潜んでいる。
◆「《あらゆる発言ないし批評はその正面に被批評対象の像を描き出すと同時に、背面には当の批評者の姿勢をありありと描き出す・・・》という言語の必然の作用…」(佐藤信夫「消滅したレトリックの意味」『レトリックの消息』47頁,白水社,1987)。逆なでに読む、つまり読むときの基本。