その家はとても大きくて建材も吟味して作られたことがひと目でわかる立派な家だ。残念なことに家の周りは積み上げられた段ボール箱で埋め尽くされている。同様に物で溢れた軽ワゴンが停められた駐車場から大音量のラジオが流れていた。目をやると住人と思われる男性が運転席の僅かな隙間で休んでいた。
脳梗塞で倒れ入院から介護ホームの生活になり10ヶ月。イト子さんはまだ一度も自宅の惨状を見ていない。ホームの生活が退屈で自宅に帰りたい思いがあるのは理解できる。満足に立つ事もできないイト子さんが1人で生活するにはそれなりの手当が不可欠だ。でもね片付けても片付けても先が見えないのよ💧
可愛いおばあちゃんになりたい。いつも笑っていたい。何を考えるでもなく柔らかに微笑んでいたい。何が起きても慌てることなくどっしりと構えていたい。どんな時でも笑っていたい。そばにいるだけで安心すると言われたい。全てを悟って頼りにされるおばあちゃんになりたい。その姿は可愛いのだろうか。