ケンヒキ太郎

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『雲の上の旅館を観ようと露の宿より出向いたものの 雨漏りの為に建て替え中だった』 とケンヒキ太郎からの封書に書き流してあった。 天の川銀河の攪拌に順い、 星雲の滴りがガイアの地膚に巡ったのだろう。 儂は銀の匙を持ち、甘露珈琲の宇宙を悠悠と攪てる。 露路の鎖樋に耳を立てつつ。

黒南風に圧され、雨合羽の頭巾が往往に捲れてしまう。 重しを置けば好いと閃いた。 亀甲紋の背囊から取り出した皿を頭に載せた。 信号を待つ間にキッコーマンのごま肉味噌に 胡瓜を軽く和えた物を装い、道すがら齧る。 儂は白狐の『もうじむ太朗』だ。 河童の『ケンヒキ太郎』では無い。