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歯にまつわるモヤモヤ


matsuonさん
ご尊父様のご逝去を悼み、心よりお悔やみ申し上げます。



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前略

歯はとても大切ですよね。だって、歯を使って食べ物を食べ、生きるために必要な栄養を摂取しているのですから。それに、歯は見た目の印象も左右します。なぜ、そう言い切るかというと、私自身、20年ほど前に歯列矯正をしたからです。

八重歯があって、ところどころ下の歯が上の歯よりも前へ出ていたのです。歯並びがガチャガチャしていましたし、なによりも受け口に見えるのがイヤでした。中学生の頃、いつも一緒にお弁当を食べていた女子グループの中のひとりから、黒板に顎と下唇が前に突き出た横顔の絵を描かれ、からかわれたことは一生忘れないでしょう。

「どうして、うちのお母さんは矯正してくれなかったんだろう」と、小学生の頃に「舌で上の前歯を常に押していれば、前へ出てくる」と私に指導した母をうらめしく思ったことも。ですが、大人になった今なら理解できます。今から40年ほど前、私が小学生のころは、歯列矯正にかかる費用はざっくり100万円以上といわれていたからです。

自分で稼げるようになって、自分の歯のために100万円を使うか否か真面目に考えました。「そんなに気にするほどのことないよ。全然違和感ないし、今さら矯正なんかしなくても……」と言ってくれた友達もいましたが、考えていても始まらないので、数軒の矯正歯科医に相談してみることに。

すると、私の歯並びは、見た目の印象から想像していたよりも、もっと悪い状態ということが分かりました。外に飛び出している八重歯だけでなく、上顎の内側からも1本の歯が飛び出していたのです。実は、自分でもずっと舌を噛み続けている気はしていたのですが、長年のことなのでその感覚に慣れていたというかなんというか。

数人の医師から虫歯はもちろん、舌ガンのリスクが高いと言われましたし、このままでは80歳で20本は難しいとまでいう医師も。結果、それが矯正を始める決め手となりました。美容面より、健康面に背中を押されたワケです。

そして、自分で費用を払うことになり、歯列矯正は美容カテゴリーに入るため、保険適用外で自費だから高額になるのだと知りました。もちろん、治療費は歯の状態によって異なります。私の場合は、歯列矯正専門の病院を数軒回り、だいたい90万〜110万といわれていました。結局、どういう巡り合わせか、私が虫歯で通っていた一般の歯科医院に歯列矯正歯科医がきてくれることになり、60万円を月々分割払いで良いといわれて手を打ったのですが。

その矯正歯科医に決めた理由はもうひとつ。矯正装置のワイヤーを歯の表側ではなく、歯の裏側に付けられると言ってくださったからです。歯並びはキレイにしたいけど、アメリカの映画に出てくる子供にように銀色のワイヤーを付けてニッと笑うのにも抵抗があり、それも二の足を踏んでいた原因でした。ところがその頃、矯正は人に見えないように歯の裏側でできるといわれ始めたのです。それで私は、歯の裏側につけることを条件に専門医院を探したていたのですが、やはり私の歯並びでは「裏側につけられない」とはっきりおっしゃった医師もいました。

上下合わせて4本抜歯して、約3年がかりで動かしました。一本どうしても動いてくれなくてできた隙間は諦めたものの、なんとか上の歯が全部前に出揃い、「やって良かった」と満足しています。それから20年、新しい歯並びが普通になって、すっかり歯列矯正のことなど忘れていたのですが……。

最近、SNSで30代の美意識の高いインフルエンサーさんたちが数人、矯正を始めた、これから始めると宣言しておられるのを見かけました。私が子供の頃は、大人になると歯が動かなくなるので小学生でやっておかないと……と言われていましたが、大人になってからでもちゃんとできます。見た目を気にするなら、食べ物のお掃除が大変でも歯の裏側に付けてもらうか、それが無理ならワイヤーを表側に付けるほかなかったのに、今では透明のマウスピースをはめるだけで動かせるようになったようです。

つまり昔よりも、美意識の高い大人の女性が、歯列矯正中も見た目を気にせずに、理想の歯並びを得られやすくなったということ。でも、あるインフルエンサーさんへのフォロワーからの質問にギョッとしました。<Q:治療費はいくらですか? A:私の場合は、だいたい100万円くらいです>

え〜!? 技術の美容感度は良くなったのに、値段は20年前から据え置きですか?? いや、美容感度が良くなったから、美容カテゴリー度が上がったとか!? いやいや、80歳で20本以上の歯を保とうという「8020運動」が推進されて結構経ってるし、私の歯だって、美容面より健康面の方が重視されていましたよ。どうして、いつまで経っても保険適用にならないのかしら!?

思い出しました。15年ほど前に、某大学の小児歯科医から伺った話。「生まれたての子供に虫歯菌はないんですよ。だいたい、お母さんからもらうんです。それで、フィンランドでは国をあげてお母さんの虫歯を治療したのです。今では虫歯のフィンランド人はいないはずですよ。私たちも国にお願いしてるんですが、全然動いてくれなくて……」。

疑り深い私は、フィンランド人である友達に「虫歯になったことがありますか?」と尋ねました。答えは「ない」。私は驚いて、「それならフィンランドに歯科医院はないの?」と重ねて尋ねると「ある」というので、「なんのためにあるの?」と質問攻めに。友達の答えは、「ん〜、みんな定期検診に行くし、歯列矯正をしてる人は調整にも行くからねぇ」。そして、そのすべてが保険適用だと言いました。あぁ、そういえば、カナダ人の英会話の先生も、カナダでは歯列矯正は保険適用で安いと言っていたなぁ。

日本では、歯並びは美容カテゴリー、虫歯などは健康カテゴリー。これは世界との価値観の違いというものでしょうか?  そうそう。歯列矯正することを決心したというのに、私が価格についてブツブツ言っていたら医師からこんなお話がありました。「otemoyan55さんは顎関節症ですね。顎の骨を手術して入院してもらわないといけませんが、顎関節症治療に伴う歯列矯正なら保険適用になりますよ」。あくまでも「歯並び」だけは美容カテゴリーということなんですね。あー、今でもモヤモヤする。

                                   草々
            
                                    otemoyan55
                        


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