我が家の猪鍋
一般に猪肉を用いた鍋物は、薄切りにしたイノシシ肉が盛られた皿の景色を牡丹の花に見立て、ボタン鍋と呼んでいると聞き及んでいます。
我が家の猪鍋は薄切り肉ではなく、拍子木切りにした肉を用いています。部位もバラではなく主にロースを使っているので、ちょっと変わった猪鍋の部類に入るのではないかと思っています。
鰹と昆布の合わせ出汁に味醂を少々加え、味噌で味を調えたところに猪肉を入れて煮立ったら野菜などを加えて再び煮立てれば出来上がりです。メインの野菜は白菜ではなく水菜を使えば、肉・野菜共に歯ごたえの良い鍋物になります。
この猪鍋はかれこれ30年余り我が家の冬の行事に集まる方々に供していたのですが、お客さんの平均年齢が70歳を超えて「美味しいけど肉が固いなあ」との声もちらほら聞こえてきたので、今年は初めて猪肉の半分をつみれにして出してみました。
1㎏前後のブロック肉をつみれにするのはちょっと勿体ないかなと思いながら、細切れにして生姜と砂糖を少し加え、フードプロセッサーに入れてスイッチをオンにすると機械が壊れるんじゃないかと思うほどの振動を伴いながら、つなぎの必要性を全く感じさせない、練り上げたような挽肉が出来上がりました。煮立った出汁の中にひと口大に匙ですくって次々に放り込んでいっても、思ったほどアクが出なかったのは意外でした。
心配していたお客さんの反応も「これは食べやすいな」と好評で、胸を撫で下ろしました。
できるだけ味を変えないように食べやすい形で提供する。プロなら技術と知識の抽斗が多いのでそんなに難し事ではないのかも知れませんが、私にとってはなかなか難しい挑戦でした。