タケノコに関するひとつの疑問
「新鮮なタケノコは刺身が旨い」。
「掘りたてのタケノコは生で食べれる」。
「掘りたてのタケノコは灰汁抜きが要らない」。
割とよく聞くお話なのですが、本当なんでしょうか?
子供の頃から毎年タケノコを掘っては食べていますが、よく考えれば自分が掘ったタケノコ以外ほとんど口にしたことがないので、真偽の程が判りません。私の経験から言えるのは「土中にあってまだ芽の出ていないタケノコであっても、掘って5分も経っていないタケノコであっても、灰汁抜きしていないタケノコはえぐ味が強い」と言う事です。
「タケノコは日光に当たるとえぐみ成分が生成される」とも聞き及びましたが、掘って半日ほど炎天下においておいても、普通に米ぬかと一緒に煮込んで冷めるまで放置すればえぐみを感じる事はありませんでした。また、土中にあって芽が黄白色のタケノコを掘り出してすぐ縦に四つ割にして生で齧ってみても、10分空けずホイル焼きにしても強いえぐみを感じました。
ひょっとしたら、タケノコ農家さんが育てるタケノコはもともとえぐみ成分が少ないのかも知れません。
出来る事なら、タケノコ料理のお店でタケノコの刺身なるものを頂いてみたいものですが、売るほど採れるタケノコを抱えて他所に食べに行くのはどうしても優先度が低くなってしまいます。
結局、今年も私の疑問は解決されないままタケノコの旬は過ぎて行くのでしょう。
ここからは推測ですが、タケノコのえぐみ成分はシュウ酸とホモゲンチジン酸と言われています。いづれも水溶性成分ですので、理屈の上では大量の水で湯掻けば組織中の含有量を減らすことができるはずです。米ぬかや重曹を使うのは水のアルカリ化と聞きます。アルカリ化された水がどういう作用をもたらすのかは知らないのですが、効率よくえぐみ成分を組織から流出させるのか、えぐみ成分を変化させるかするのでしょう。
「灰汁抜きはできるだけ掘ってすぐに、糠の量に気を遣うよりできるだけ大きな鍋で沢山のお湯を使う事。落し蓋をしてタケノコが浮き上がってこないようにする事と、完全に冷えるまでタケノコを取り出さない事」と母親にくどい程言われましたが、的を射た教えじゃないかな思っています。ちなみに「タケノコは皮つきで灰汁抜きをしないといけないの?」と尋ねたら、「1本2本やったら先に剥いてもいいけど、一杯やったら剥くのに時間がかかるやろ。灰汁抜いてから剥いたらゆっくりできるやん。それに、生のタケノコの皮はチクチクするやろ。あれ嫌いやねん。」と、全くごもっともな返事を頂きました。
ここ数年、イノシシがタケノコを掘り返し、鹿が齧ってしまうので収穫できる量は減っていますが、今年はどれだけ採れるか楽しみです。